เข้าสู่ระบบ「ふぅ……」 温かなお湯に入ると、ジワァと熱が染みて体が冷えていた事に初めて気が付いた。ずっと横になっていたせいか少し体が固い気もする。手でゆっくりマッサージをしながらそれらをほぐし、一息つく。 ——すると考えるのは、やはりイレイラの事だ。「……イレイラは大丈夫かな、悪い事したかな……」 神殿内を案内した時。 何かに刺激されて、イレイラが前世の記憶を取り戻しはしないだろうかという期待を少ししていた。記憶があろうがなかろうが、もう既に今の彼女をも愛している事に変わりはないのだが、もし過去世を思い出してくれるなら、嬉しいというのが本音だった。 初めて逢った時から、一緒に過ごした九年という歳月。それらを共に思い出し、語らう事が出来たら幸せだなと思ったのだ。 この神殿内には多くの思い出に溢れている。一緒に行った事の無い場所の方が少ない。特に結婚式を挙げた“祈りの部屋”では、此処なら何か思い出すんじゃないかと期待したのだが、『綺麗な場所ですね』と感嘆の息を洩らすだけで少しガッカリした。 それなのにまさか、昔一度だけ、一悶着があった玄関ホールの方でそれらしい反応を見せ、その場で倒れたうえに、昏睡状態になってしまうとは思いもしなかった。 幸せな思い出よりも、辛い思い出に反応された事に対して複雑な気分にもなった。語り合いたいのは幸せな記憶の方なのに……。 ズルズルと体が滑り、湯船の中に沈む。口元まで隠れた辺りで流石に力を入れて止まり、そのまま薬草の溶けたお湯の表面を見つめた。周囲をうっすらと、鏡のように周囲を写す様を見ているとどうしたって色々考えてしまう。 ……早く、イレイラに逢いたい。 無事をこの目で確かめたい。 触れたい。 撫で回したい。 んで、あわよくばキスとか……もっとその先の事も、早くしたい。 もう大人だって知った晩に見た夢みたいな事を、すぐにでもしたい。もう我慢出来ない。そうだ、僕はもう十分我慢した! ——そう思った瞬間、体に違和感を感じた。 その事に慌て、ガバッとお湯から顔を上げて下を見る。案の定、下腹部の剛直が激しく存在を誇示していた。「いや、あの……起きてすぐコレは……」 今までの長過ぎる歳月を処女神のように清くすごしてきたのに、イレイラに逢ってからのコレの自己主張には、自身の事なのに呆れてしまう。彼女を“伴侶”として娶っ
「……イレイラ!」 意識が戻った瞬間、僕は飛び起きて周囲を見渡して叫んだ。僕の傍にイレイラが居ない。 ——どこに行った?彼女は目を覚ました筈だ。何故此処に居ない? 不安になる。 僕はどのくらい意識が無かった? まさか……。 あれからまた何かがあったのか? 眠っていた時間が長過ぎたのかも……。 様々な不安と疑問が心にわいてきて、考えを支配する。 怖い、怖い、怖い! こんなに早く、また愛しい人を失ってたまるか。い、いないなら早く再度召喚ないと、すぐ準備しなきゃ、あぁぁぁぁぁ、どうでしようどうしよう、どうしたら……。 クラッと目の前が揺れ、僕は頭を抱えた。「……おい。落ち着け、|主人《あるじ》。イレイラは今、庭に居る。気分転換をしろと皆で庭に行けと薦めたらしいぞ」 音もなく、声の主が僕の元へ飛んで来て肩に留まった。今は此処に居ないはずの存在に驚きが隠せない。「……サビィル?帰っていたのか?」「主人が倒れたと聞いて、慌ててな。仕事どころではないだろう」 僕の伝達役を務める白梟のサビィルが、『褒めろ』といいたげな瞳で言った。「……イレイラに、逢いに行かないと」 そう言って、僕は布団の上を這う様に移動し、ベッドから脚を下ろした。「気持ちはわかるが、私を無視するな。イレイラに会いたいなら、まずはさっさと体を洗って来たらどうだ?体を拭いてはいたが、一週間ぶりに逢うのにそのままは流石になぁ」 肩の上で頭を揺らしながらサビィルが諭してくる。「イレイラは、無事なんだな?」 眉間に皺を寄せ、僕は再確認した。早く安心したい。無事だと聞いても、まだ少し怖い……。「あぁ、無事だ。もっとも私もまだ会ってはいないがな。だが、セナとエレーナが『無事だ』と言っているから間違いないだろう」「……エレーナが、帰っているのか?」 懐かしい神官の名前に、少し嬉しくなる。彼女が亡くなってからまださほど経過していない。なのに、もう戻ったのか。「“前世持ち”で生まれる事が出来た神官は、他の者も皆戻っている。お前の話を聞き、焦ったらしいな。主人の危機だ、皆、私並みの忠誠心で素晴らしいじゃないか。これも全て、主人の人徳というところか」 誇らしげな雰囲気のままサビィルが説明してくれる。ホント、よく話す梟だ。まぁ、だから伝達役にしたのだが。 そんなやりとりの音を聞きつ
一息つき、口を開く。「……何で、今回は倒れたのかなって不思議に思って。倒れたのは、『初めてだ』って皆さん騒いでいましたよね?じゃあ、私が死んだ時はどうして平気だったのかなって。あ、すみません、『私』……じゃないや……えっと、猫の方です」「いいんですよ訂正しなくても。イレイラ様はイレイラ様です。生まれ変わり、姿が変わっても」 一呼吸おき、セナさんが言葉を続ける。「それは多分。思い出の量の問題ではないかと思います」「思い出の、量?それって……」「猫だった時のイレイラ様とは、振り返る事が出来る記憶が多くありますし、死期を覚悟する時間も沢山ありました。でも今回は、思い出があまりにも足りなくて怖くなったのではないかと。今の貴女様の姿にも、カイル様は一目惚れされていますから。これから多くの経験を二人でしていこうと思っていた矢先の事で、すぐに『次の貴女様を呼べばいい』などと割り切る余裕は無かったのでしょうね」「カイルが……『私』にも一目惚れ、していたんですか?」「はい。疑いようのない程わかりやすく」「でも、彼は『猫』だった時の私が好きなんですよね?今の私の事も好きって……裏切りなんじゃ?」「何故ですか?“魂の結婚式”をなさったお二人が、死に引き裂かれても何度も惹かれ合うのは当然です。生まれ変わった貴女へ好意を抱けない方が、むしろ裏切り行為だと私は思います。先程もお伝えした通り、生まれ変わろうともイレイラ様は、イレイラ様なのですから」 セナはそう言うと、私の左胸をスッと指差してきた。「ここにその証がありますよね?薔薇の花の様な、小さな約束の印が」「あります。でも、何で知って?……あ、そうか、セナさんは証人として『あの場』に居たからか」「おや?思い出したのですか?」「あ、いえ。思い出した訳では無いんですが……その、色々ちょっと」 言葉を濁して口を閉じる。話せば長くなるし、話して信じてもらえるかどうかわからない。『魔法なんてモノまであるこんな世界で、何を迷う?』とも思うが、カイルにすらまだ話していない件だし、そもそも話が脱線してしまう事も懸念材料になった。「いいんですよ、無理に説明は求めません。ただ、難しく考えるな事はないと思いますよ?お二人は魂の伴侶なのですから、惹かれ始める事に時間は必要ないかと」「でも、私は猫だった時の事を何も覚えていないし
玄関ホールで残留思念を読み取った後、私はその場で倒れたらしい。夜には熱が上がりだし、その後三日間昏睡状態が続いたそうだ。私が目を覚ました時に見たカイルは、三日間片時も離れず傍に居てくれていたらしく、顔は酷くやつれていて青白くなり、このまま後一日でも私が目覚めるのが遅かったら、彼は本当に死んでしまったんじゃないかと思うくらい弱っていた。 そのせいで今度は彼が寝込んでしまった。 彼が永劫にも等しい時を生きてきて初めての事だったらしく、神殿中が大騒ぎに。王族の方々が見舞いに訪れたり、まだ来訪していなかった“前世持ち”の神官達まで慌てて戻って、その中にはまだ幼年期なのも構わずに帰って来た者もいた。 別の神子達も『何か手伝える事はないか』と駆けつけて来てくれたりまでした。その中にあの“ライサ”も混じっていて複雑な気分になったが、彼女はとても私に優しく接してくれて気味が悪い程だった。彼女の兄だと言う双子の“ライジャ”だけは私達にもの言いたげにしていたが、彼女に窘められて黙っていてくれた。 ◇ 私に出来る事は何も無いまま、あれから一週間がすぎた。その間、傍に付きっきりだった私は『このままでは、また貴女様が倒れてしまう』と周囲からとても心配され、気分転換をする様にと庭に追い出され—— 今|此処《庭》に居る。「大丈夫かな……」 気分を変えろと部屋から追い出されても、カイルの事が心配で、綺麗な花も目に入らない。周囲は新緑の木々に溢れ、庭師達が丁寧に手入れした綺麗な花々が咲き誇っているというのに、ただただベンチに膝を抱えて座ったままでいる。景色を楽しむ余裕を持てない事が本当に残念だ。「“前の私”が死んだ時は、カイルはどう乗り切ったんだろう?“今の私”が倒れた位でここまで弱ってたんじゃ、もっと酷かったんじゃないの?……だって、死んじゃったんだよ?」 誰に聞かせるでもなく、呟いた。「……あんなに、愛してくれていたのに」 倒れる前に見た残留思念は、今までの中で一番強烈な記憶だった。その前までは何処か他人事で、VRを使って誰かの物語を楽しんでいるくらいな感覚に近かったのに、玄関ホールでの出来事はハッキリと『私の記憶だ』と思えた。『思い出した』という感覚に近いかもしれない。他の記憶は、相変わらずなのに。 ……怖かった。 ライサに殺されるかもという恐怖より
『——え?何?何それ!』 ライサが悲鳴をあげた。予想外の事にパニックになっているみたいだ。 彼女の仕掛けた魔法陣はその発動をゆっくり中断され、散らばる砂の様に黒いモヤと共に消えていく。『何でそんな事が出来るの?——コレは古代魔法よ⁈』『知るか!お前が知識不足なだけだろ!』 怒気を隠す事なく叫び、カイルがライサに飛びかかった。 愛しい人が胸に飛び込んでくる事でライサは色々勘違いをし、頬を染めて腕を広げている。『やっと私を抱きしめてくれるのね!あぁ、ずっと待っていた、の……——え?…… 』 ライサの言葉が途中で切れた。 カイルの手が光りながら彼女の体にめり込んでいる。少し間を開けてから、スッと、ゆっくりそこから手が抜かれた。でも、彼女の体には何も起きている様には見えない。なのに、ライサの顔色は真っ青だ。『あ……嘘でしょ?待って、やめて……』 ライサの悲痛な声が耳に痛い。床にへたり込み、ライサが懇願するような眼差しでカイルを見上げている。彼女の視線の先にあるカイルの手には、どす黒く光る紅い石が脈打つ姿をして存在していた。『ダメ、やめて?大事なのよ、愛してるの。貴方が好きよ……カイル、カイルカイルゥ——』 ボロボロと、蛇に似た大きな目からボロボロと大粒の涙が零れ落ちる。『お前なんかいらない。愛していないし、好きですらない。イレイラは僕の魂の伴侶だ。彼女を傷付けて、まさか無事でいられると思うのか?』『待って、本当に、心から愛してるのよ。そんな事しないでぇ……』 ブルブルと震え、ライサが何度も何度も哀願する。祈る様な仕草で、彼女はカイルへにじり寄った。『そんなもの、一度でも僕が欲したか?こんなゴミは、捨てるべきだ!』 そう言ったと同時に、虫ケラでも見る様な冷たい眼差しのまま、カイルは手の中の石を力任せに砕いた。『やめてぇぇぇぇぇぇ!……あ、あぁ……ぁぁぁ……』 急に、ガクンっとライサの首が項垂れる。そしてそのまま動かない。同じ体勢のまま、全く微動だにしなくなった。(——まさか、殺しちゃったの?……嘘でしょ?) 痛みの消えた体をゆっくり起こし、私はライサを見つめた。いくらなんでもやり過ぎでは?とは思えども、どうしていいのか、わからない。『……イレイラ。イレイラ!大丈夫?もう痛くない?』 さっきまでとは全くの別人の顔をして、カイルが
『初めまして。私はライサ、見て通り神子の一人よ』 クスクスと笑う声が気持ち悪く聞こえる。彼女の全てに嫌悪感しか持てない。早く逃げたくて、ただひたすらに体を動かすが手の中から出られない。『暴れないでぇ?何も殺そうとかしてるわけじゃないのよ?……たぶん、ね』 うふふ……なんて笑われたが、似合ってない。顔の造形は綺麗なはずなのに、ここまで醜い顔で笑う事が出来る事に驚かされた。 何をしようというのかが分からず怖い。このままじゃマズイ。でも、どうしていいのかわからない。(助けて!怖いよ、カイルッ!) ギュッと目を瞑り心を込めて心中で必死に叫んだ。力の限り、『フニャァァァァァ!』って声にのせて。『——イ、イレイラ⁈何でライサと一緒なんだ?』 さほど時間が経たぬ間に、全速で駆け寄る音と求めていた声が聞こえ、歓喜に涙が出そうになった。 慌てて声のする方へ顔を向ける。玄関ホールの中に彼は居て、既に私を探してくれた後だったのか、髪が乱れて汗を流していた。『常にイレイラの居場所がわかるようにしておけば良かった……クソッ!』 怒りに任せて、カイルが床を蹴った。大理石の床が削れ、その周囲がヒビ割れる。そんなカイルを見て、ライサと名乗る女が破顔した。『あぁ……素敵。カイル、カイル、カイル——何て素敵なの』 私を掴む手に力が入り、息が詰まる。『イレイラを離せ。そしてすぐに帰れ。お前と話すつもりはないってさっきも言った筈だ。そもそもなんだって此処に入れた?』『んー?それはね、愛の力よ!って言いたいけどぉ、答えは違うわ。この子が油断したからよ。魔力の高いこの子の油断が、貴方の結界に隙を作った。ホントバカな子よね。所詮は猫。私達とは違うのよ。すぐ騙されるし、歳をとるし、死ぬし……ねぇ?』 最後の言葉にザワッとする。 この女は私を殺す気だ、そう思った。『邪魔よねぇ、こんなの。消えちゃえばいいのよ。カイルの傍には私が居るもの。いつでも傍に居るわ。ずっと、ずーっと見ていてあげるの。私は死なないのよ?永遠に愛を与えてあげられるの。アンタとは違って、ね』 クッと声が詰まる感じがする。反論出来ない。神子じゃない私は、どうやったっていつか死ぬのだ。永遠に彼の事を癒してはあげられない。 ライサの言葉の一つ一つが、心に刺さる。『カイルはね、本当は私の事が好きなのよ。だって私が







