静雄は芽衣の手を軽く叩き、穏やかにうなずいた。「技術部は今回よくやってくれた。今後もさらに努力して、絶対にお客様を失望させないようにしなければならない。上高月興業は今年度最大のプロジェクトだから、俺が直接交渉に行く。芽衣も一緒に来てもらう」静雄はもちろん芽衣の意図を理解していたので、彼女を同行させることにした。それまで和やかだった空気が一気に冷え込み、皆は信じられないというように静雄を見つめた。相手はこのソフトを作った人と会って、技術面をじっくり話し合いたいと伝えていたのに、行くのがまったく技術を理解していない二人だなんて?これでは本末転倒ではないか。一瞬で全員の視線が深雪へと向けられた。彼らの目には同情が浮かんでいた。明らかなことだ。芽衣の行為は勝利を横取りしようとしているにすぎなかった。深雪は周囲の視線を感じると、微笑んで淡々と言った。「おっしゃる通りだと思います。技術的なことは私たちが得意ですが、交渉となると私は不向きです。ですからお願いするしかありませんね」「では、みんな仕事に戻りましょう」深雪は手を叩き、皆を現実に引き戻すと、立ち上がって真っ先に外へ歩き出した。彼女は当然のように席を立てるが、残された社員たちは困惑していた。「社長、深雪さんはどういうつもりですか?あなたがまだ解散を告げてもいないのに先に出て行くなんて。まさか社長の業務方針に不満でも?」「不満があるなら、直接言うべきです。黙って席を立つなんて、意図的に分裂を招き、派閥を作ろうとしているのでは?」芽衣は立ち上がり、正義感ぶった口調で深雪を非難した。遥斗はその言葉に思わず激昂しかけた。自分の給料が松原商事に結びついていなければ、手にしたカップを彼女の顔へと投げつけていたことだろう。図々しい人間は見たことがあるが、これほどまでに厚顔無恥な人間は初めてだ。表に出せない関係の第三者が、ここで堂々と口を挟むなどあり得ない。「もういい、皆仕事に戻れ!」静雄は表情を引き締め、手を振って社員たちを解散させた。その様子を見て、芽衣は不吉な予感を覚え、小声で言った。「ごめんなさい、私は別に深雪さんを狙ったわけじゃなくて、ただ......」「今は会社が転換期にある大事な時期だ。彼女が必要なんだ。わかるか?」静雄は芽衣を厳しい
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