美琴の手を、いつから握っていたのか覚えていない。 気がつけばそうしていた。細い指は力なく開いたままで、握り返してはこない。ただ温かいだけだ。その温度だけが、彼女がここにいるという証になっている。 控えめなノックが響いた。 「入るよ」 静江の声。襖が開く音に、悠斗は扉の方を見つめた。 「あっ……すみません、いつの間にか時間が」 「美琴ちゃんが心配かい」 静江は部屋の隅に腰を下ろしながら、穏やかにそう言った。問いかけというより、もう答えを知っている人の口調だった。 「……ええ。とても」 「そうだろうねぇ」 静江の目が、悠斗の顔をまっすぐ捉える。 「それに随分浮かない顔してるね。どうしたんだい」 「…………」 答えが出てこなかった。言葉にすれば楽になるのか、それとも余計に重くなるのか。その判断すらつかない。 「別に無理に言わなくてもいいけどさ。抱えてるもんがあるなら、ぶちまけたほうが楽だよ」 ぶちまける。静江らしい言い方だった。その飾り気のなさに、少しだけ喉の力が抜ける。 「……僕の判断は正しかったのか、ずっと考えてるんです」 「あんたの判断?」 「僕が彼女を止めていたら、また別の結末だったのかなって。考えずにいられなくて」 美琴の寝顔に視線を落とす。規則正しい呼吸。穏やかな顔。それを見るたびに、安堵と自責が同じ場所でぶつかる。 「彼女を信じたつもりで、術を使う彼女を止めませんでした。でもそれが——逃げだったんじゃないかって」 「僕は——」 言葉が途切れた。その先が出てこない。 静江はしばらく黙っていた。急かさない。ただ座って、悠斗の言葉が止まるのを見届けてから、口を開いた。 「悠斗。あたしはあんたが正しいとか正しくないとか、踏み込んだことは言えないよ」 静江の声は静かだった。さっきの「何言ってんだい」の勢いはもうない。 「でもね。少なくともあんたは、あの子の言葉を聞いたんだろう」 「美琴の、言葉を……」 「あたしはそれができなかった」 悠斗は顔を上げた。静江は美琴の寝顔を見ている。けれどその目は、もっと遠いところを見ているようだった。 「詩織とぶつかったとき、あたしはあの子の話を聞かなかった。自分が正しいと思い込んで、あの子が何を考えてるかなんて、見よ
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