あれから、数日が過ぎた。 悠斗の日常は、少しずつ穏やかさを取り戻していった。あの夜の出来事は記憶の片隅へと退き、日々の流れの中に静かに溶けていく。 もっとも——心霊スポットに足を踏み入れた奏汰たちは、学校に戻るなり担任教師たちからこっぴどく絞られていたが。 完全に元通りとは言えない。あの出来事の痕跡は、まだ心のどこかにうっすらと残っている。それでも確かに、悠斗の日常は戻ってきていた。 そんなある日の、穏やかな昼下がり。 悠斗は翔太と並んで、他愛もない話に時間を費やしていた。 「ったく……。もう何度同じこと言われたか分かんねぇよ。耳にタコが出来るどころじゃねぇぜ……」 「はは……。まあ、そうだろうね。でも入ったのがあの桜織旧病院だったわけだから」 「……ああ、あそこは確かに誰でも知ってるからな。噂も相当だし」 「そうだよ。だからこそ、先生たちに絞られるのは当然だと思うよ」 少し呆れたような、けれどどこか優しい口調。悠斗らしい諭し方だった。 「うっ……それもそうか……」 「そういえば……あの時のことなんだけど。記憶の方はどうなってる? 少しずつでも戻ってきたりした?」 美琴は、翔太だけが悠斗の気持ちを軽んじなかったことを受け止め、彼の記憶のケアを引き受けてくれていた。記憶が戻る確率は五分五分——美琴はそう言っていたが、悠斗にとっては、その可能性に賭けるしかない。 「ああ、断片的にではあるけど、戻ってきてる気がする」 「そっか……それは良かった」 数秒の沈黙が流れた。重くはないが、どこか言葉の置き場に困るような静けさ。 やがて、翔太が何かを思い出したように声を上げた。 「あっ、そういえばさ。美琴ちゃんのことなんだけど……」 そこまで言って、口を噤む。伝えるべきか迷っているような表情だった。 「美琴がどうかしたの? 何かあった?」 「えっと……その、風鳴トンネルに行ってるって、裏校内掲示板に書き込みがあったらしいんだ」 「え? 風鳴トンネル……? それって一体どういう場所なの?」 「なんだ、悠斗は知らないのか? ここらじゃ桜織旧病院に次いで有名な心霊スポットだぞ。地元の人間なら誰でも一度は耳にしたことがあるような場所なんだ」 「えっと……風鳴トンネル……っと」 悠斗はスマートフォンを取り出し、検索欄に
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