「っはぁ……! っはぁ……!!」 意識が、現実に引き戻された。 冷たい空気。コンクリートの匂い。トンネルの闇。周囲はすでに日が落ち、夜の帳が降りていた。 「……先輩、目覚めましたか?」 すでに覚醒していた美琴が、悠斗のもとへ駆け寄ってくる。 「すごい汗……! 随分、深く潜り込んでしまったようですね……。大丈夫ですか……?」 「はぁ……はぁ……み、美琴……僕は……」 言葉にならなかった。息が荒い。視界が揺れる。身体はここにあるのに、意識の半分がまだあの記憶の中に取り残されているようだった。 美琴がポケットからオレンジ色のハンカチを取り出し、悠斗の額をそっと拭った。汗ばんだ肌に、布の柔らかさが触れる。 「どうされました……?」 荒い呼吸を何度か繰り返し、ようやくリズムを取り戻してから、悠斗はゆっくりと口を開いた。 「……詩織さんの……過去を見た……それも、最初から……最後まで……」 「本当ですか……!? 先輩がそこまで深く詩織さんの記憶に入り込めたなんて……! 私のほうは、残念ながらこれといった収穫はなかったというのに……!」 「……正直……きつい……」 「……なにを見たのですか……?」 美琴の声色が変わった。明らかにおかしい悠斗の様子に気づいたのだろう。心配そうな眼差しが、酷く揺れている。 頬を、何かが伝っていた。 拭っても、拭っても、止まらない。次から次へと溢れ出してくる。恥ずかしいとか、そんな感情が入り込む隙はどこにもなかった。 詩織の過去が——悠斗の心に、あまりにも深い悲しみを刻み込んでいた。 。❀ 𓂃𓈒𓏸 。❀ 𓂃𓈒𓏸 。❀ 𓂃𓈒𓏸 「落ち着かれましたか?」 美琴が、悠斗の顔をそっと覗き込んだ。 「……うん」 「ですが、顔色は優れないですね……」 当然だろう。自分でもわかっていた。あの記憶が、まだ身体の奥に重く沈んでいる。 「……ねぇ美琴」 「はい、ここにいますよ」 美琴の手が、悠斗の手にそっと重ねられた。さっきの霊力の伝達とは違う、ただそこにいるためだけの温もり。 「あの悲しみから詩織さんを解放してあげられる未来が見えない……」 声が、掠れた。見てきたものの重さが、そのまま言葉に滲み出していた。 「……。一体、何を見たのですか?」 「……」 悠斗は
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