それから二日後の朝。 帰り支度をすっかり整えた二人は、帳場で女将と向き合っていた。名残を惜しむような空気が、朝の明るさの中にうっすらと残っている。 「女将さん。二日間、お世話になりました」 悠斗が頭を下げると、女将は大げさなくらいに肩をすくめてみせた。 「おやおや! せっかく慣れてきたってのに!」 からりと笑ったあと、女将はすぐに続ける。 「このまま二人で住んじまえばどうだい?」 「そ、それはダメです!」 美琴が勢いよく声を上げた。 悠斗は思わず苦笑する。 「……あはは」 「おやまぁ。でも、お若いおふたりさん。最初よりずっと距離が近づいたように見えるよ」 「そう……でしょうか?」 悠斗が問い返すと、女将は胸を張った。 「ああ! 私は見る目は確かだからね! 最初はどこか遠慮がちで、お互いに気を使い合ってるように見えたけど、今はばっちりだ」 「あ、ありがとうございます……」 美琴が少し照れたように礼を言う。 「またおいでな。温泉郷はいつでも二人を歓迎するからさっ!特に私がね!」 その言葉に、悠斗の胸がかすかに揺れた。 温泉郷はいつでもまた二人を歓迎する。もちろんアタイもね。 陽菜の声が、ほとんどそのまま重なる。 ああ、と悠斗は思った。この女将は、陽菜と少し似ているのだ。――この場所を大事に思う気持ちのあり方がまでもが、よく似ている。それはきっと──。 「お世話になりました! またいつか!」 悠斗が言うと、女将は気前よく手を振った。 「はいよ! 待ってるからね!」 玄関を出ると、そこには夏の青空が広がっていた。強い日差しの下で、蝉の声があちこちから降ってくる。軒先の風鈴が涼やかに鳴り、その音がふと、悠斗の胸に懐かしさのようなものを運んできた。 宿を出て、温泉郷の出入口まで来たところで、二人はそろって足を止めた。 そして、振り返る。 たった二日の滞在だった。けれど、離れる寂しさは、その短さに見合わないほど大きい。ここで過ごした時間が、それだけかけがえのないものになっていたのだと、胸の奥が静かに教えてくる。 そのとき、ふいに視線を感じた。 悠斗が目を凝らすと、ある程度離れた陽光館の前に、陽菜の姿があった。こちらを見つめ、大きく手を振っている。黄色い浴衣が、夏の光の中でもはっきりと
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