離婚翌日、消えた10億円と双子妊娠を告げぬ妻ーエリート御曹司社長の後悔ー のすべてのチャプター: チャプター 161 - チャプター 170

172 チャプター

162.不安と執着と憎しみと

華side「違う!私は取っていない。あのDNAの関係結果が出た日から、私は一度も連絡していないわ!!!」私が顔を歪めて泣きながら訴える姿を見て、護さんは、我に返ったようにハッとした表情になった。彼の顔から先ほどの冷たい光が消え、いつもの優しい顔に戻っていく。「ごめん、疑っているわけでも非難しているわけでもないんだ。ただ、辛いことがあった相手とは、もう二度と関わらない方がいいと思って」護さんは、私を引き寄せて強く抱きしめた。「私の方こそ、ごめんなさい」「なんだろう。君がいなくなってしまうかもしれないと思うと、どうしようもなく不安になるんだ。怖がらせたいわけではないのに……」髪を撫でる力は優しく、後悔したような震える声も、切なく愛おしそうに見つめる瞳も、いつもの護さんだった。その震えは、幼い頃に事故で父親を亡くしてしまった時の不安を物語っているようで、私は心を揺さぶられた。「護さんが瑛斗のことを憎んでいるから、話を出さない方がいいと思って黙っていたの。隠そうとしたわけじゃないけれど、嫌な思いをさせてしまってごめんなさい……」強く抱きしめていたが、護さんは身体を離すと私の両肩に手を置いて私の瞳を直視した。そして、低く声
last update最終更新日 : 2025-09-04
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164.結婚の進展?婿を希望する護

華side「いずれは華と結婚したいと思っていることさ。それくらい真剣に付き合っているし、大切に思っているってことをお父さんに伝えたいんだ。正直、付き合っていることを僕から言い出しにくかったから、華が言ってくれて助かったよ。付き合いを認めてくれるなら、結婚後は僕が神宮寺家に婿に入ってもいいしね」私は、プロポーズされたとき、受けたら「三上 華」として、これからは生きていくのだと思っていた。だからこそ、子どもたちの苗字が『神宮寺』から『三上』姓に変わることに躊躇をしていた。護さんが、神宮寺家の婿養子になることも考えていたなんて思いもしなかった。「あ、よくよく考えると、僕が婿に入った方がいいんじゃないかな。そうすれば、慶くんと碧ちゃんの苗字も変わらなくて済む。それに、家もこの別荘のままでいいんじゃないかな」名案を思いついたとでも言うように、護さんは嬉しそうに私に話しかけてくる。「……護さん?私は、父の配慮でこの別荘に住ませてもらっているけれど、本来、神宮寺家とはもう縁が切れた人間よ。護さんが婿になるのは難しいと思う」私の言葉に、護さんは微笑んだまま首を横に振った。「そうだとしても、決めるのは華のお父さん次第じゃないかな。華のお父さんが、僕の婿養子を許可してくれればいい話だろう?」「え……父に認められるのは絶対だけ
last update最終更新日 : 2025-09-05
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165.瑛斗との距離、動き出す歯車

華side平穏な午後のリビングで、私は一人、温かいハーブティーを飲みながら、最近の出来事を反芻していた。窓から差し込む陽光が、私の手元のカップをきらきらと輝かせている。「護さんは瑛斗のことをすごく憎んでいるけれど、本当に護さんが思うような人なのだろうか」護さんは瑛斗のことを「華に酷いことをして苦しめた相手」と思い、私から遠ざけようとする。しかし、子どもたちに何かあったら助けに行くと言って、本当に長野まで来てくれた瑛斗。私と話す間、子どもたちに向ける視線は、温かいものを感じた。誤解だったが、玲が誰かを監視するように指示する不審な電話を聞いて、私のことを心配して長野にまで駆けつけてくれたこともあった。瑛斗が示した行動は、護さんの言葉とはまるで違っていた。「瑛斗は、思い立ったらすぐに行動しちゃうんだから……」子どもたちや私のことを思っての行動に、自然と小さな笑みが零れた。瑛斗のことを考えて笑みを浮かべるなど、一体いつぶりだろうか。(そうだった。瑛斗は、嘘が嫌いな真っ直ぐな性格だった。熱くなりやすい一面もあるけれど、一度決めたら人の言うことも聞かない、少し頑固なところもあったわ……)結婚していた頃の瑛斗のことを思い出す。私が知っている瑛斗は、自分にも相手にも正直で誠実な人だった。いつしか歯車がズレてうまく噛み合わ
last update最終更新日 : 2025-09-06
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166.護さんとデート、Rからのメール①

華side「華、たまには外にランチでも食べに行かないか?そのあと買い物でもどう?」平日の昼間、久しぶりに護さんにランチに誘われた。護さんが長野にマンションを購入して以来、護さんが休みの平日の昼は、護さんの部屋で一日をずっと過ごす日々が続いていたので、外に出るのは新鮮で嬉しかった。「ええ、いいわよ。行きましょう、楽しみだわ。」私は笑顔で答えてすぐに支度をする。車に乗り込むと、護さんがスマホを操作してから、店のホームページを見せてくれた。「このお店なんだけどね、使われていなかった別荘を改装して、隠れ家風のレストランに改装したんだって。窓から見える景色やテラスも綺麗らしいんだ」「わ、お庭も薔薇の花が綺麗に咲いている。とても素敵なところね。こんなテラスでハーブティーを飲みながらスコーンを食べたら気持ちいいんだろうな。ね、メニューや他の写真も見ていい?」「ああ、いいよ」助手席で、護さんのスマホを借りて店の写真を見て楽しんでいた。護さんはナビをセットすると、静かに車を走らせていく。前菜からメインディッシュにスープ、デザート。季節ごとにメニューが変わるようで、旬の地場食材をふんだんに使い、色彩豊かで繊細な盛り付けの料理の写真が何枚も掲載されている。その一枚一枚をスライドさせながら楽
last update最終更新日 : 2025-09-06
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168.華の問い詰め、護の動揺①

華side「うん、前菜もスープも美味しいね!……華、どうした?さっきから元気がないみたいだけれど」さきほどのメールが気になり、目の前の料理に集中できずにいたのに気がついたのか、護さんは、私のことを心配して顔を覗き込んできた。「あ、ううん。何でもない。スープが美味しくて、どうしたらこんな味が出せるか考えていたの。護さんは前菜のソース、どちらの方が好き?」私は慌てて誤魔化したけれど、このままじゃいけない気がした。(……このままでは駄目だわ。何も聞かずに疑惑を抱えたまま護さんと結婚は出来ない。もう親の都合なんてないんだから、私の意思で結婚も決める!)目の前にある温かいスープをじっと眺めていた。この温かさが、嘘によって冷めてしまうかもしれない。そう思うと胸が苦しかった。しかし、もう後悔はしたくない。私は意を決して、護さんにメッセージの件を尋ねた。「護さん、さっき車の中で店のホームページを見ていたらメッセージが届いて。見るつもりはなかったんだけど、通知画面に本文が表示されて見てしまったの。Rって誰?」「え、華?待って。メッセージってなんのことだい?」私の言葉に、護さんの笑顔が消えた。
last update最終更新日 : 2025-09-07
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169.華の問い詰め、護の動揺②

華side「ああ、これは産科の先生からのメールだよ」「産科の先生?先生とこんなメールをやり取りするの?それに、護さんは神宮寺家の専属医じゃないの?」「もちろん神宮寺家の専属医が本職だ。しかし、今は診る人も少ないからね。僕は、産科の医師でもあるから、知り合いの個人病院で臨時医として契約しているんだ。学会とか予定が入った時は代わりに診察したりするんだ。華のお父さんも知っているよ」「先生とのやり取りにしては、親しい間柄に見えたけど」「昔からの付き合いだからね。火曜日、研修で代理を頼むかもしれないって言っていたから、その返事だよ。行けることになったって」「そうなの。それなら、なんでイニシャルで登録しているの?私も他の人もフルネームで登録していたじゃない」私の問いに、護さんの目が泳いだ。「それは……登録する時に先生が自分で入れたんだ。イニシャルの方が誰か分からなくて面白いって。まあ、そんな登録しているのは一人だけだから、すぐに分かるんだけどね」護さんの話を聞いても、腑に落ちなかった。(イニシャルでわざわざ登録する?護さんは几帳面だから、もし相手が好き勝手に登
last update最終更新日 : 2025-09-08
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