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All Chapters of 蒼い華が咲く: Chapter 21 - Chapter 30

36 Chapters

21

体育の時間、俺たちは子供の様にギャーギャーと騒いでいた。担当の先生に急用が入ったってことで自習になったのだ。何をしようかって話になって誰かが童心に戻ってドッチボールをしようと言い出したのだ。それに全員が賛成してドッチボールを始めたのだった。「てめぇ蒼樹、いい加減に当たりやがれ!!」そんなこと言いながら俺をめがけて翔太がボールを投げてくる。「やだよ~ん」俺はそれを避けてあっかんべ~って舌を出す。「観念しろ織田!」翔太からボールを受け取った斎藤が俺に向かってボールを投げてきた。かなり威力のある直球がまともに俺の方へと飛んできた。誰もが息をのんだ。当たり前?だよね。俺、ケガしてるんだもん。「蒼樹!」「織田!」みんなの声がグランウドに響いた。「あっぶねぇ~。本気で来るかよ」俺は片手でそれを受け止めた。元々の利き腕は左だから、右手は使えなくてもさほど問題はないのだ。「お返し!喰らいやがれ~!」俺はそのまま敵陣に向かって投げ返した。「いってぇ~!!」被害にあったのは斎藤の隣にいた中路だった。「よっしゃ~!あったり~!」俺はガッツポーズを作った。「蒼樹お前ぜってぇケガ人じゃねぇ」「信じらんねぇ~」なんて声が飛んでくる。「翔ちゃ~ん、みんながイジメる~」俺は後ろを振り返って翔太に言ってみるが「あっ、わりぃ、俺、今敵だから」なんてにっこり笑って言われてしまった。「美咲ちゃ~ん、酷いと思わな~い?」仕方がないので、味方の美咲に訴える。「ごめん蒼樹。俺もみんなと同意見だ。お前ケガ人じゃない」美咲にも苦笑を浮かべたまま言われてしまった。「ひど~い。俺これでもケガに~ん!大事にしてよね?」なんてふざけてみる。「いや、今の球はケガ人の投げる球じゃねぇ。マジでいてぇもん」俺の被害にあった中路に止めを刺されてしまった。「ひど~い。みんなのイジメっこ~!え~ん」なんて言いながら俺は泣きまねをした。「お前はいくつだよ~!」「イジメて泣くかよお前が~」なんてどっと笑いが生まれる。勿論、俺も笑ってる。この瞬間だけ何も考えずにすむから…。余計なことを考えなくて済む…。嫌なことも何もかも…。「織田、お前はそろそろ休憩だ。ヒビだけだって言ってもそれ以上悪化させたくはないぞ俺たちは。ってことで織田抜きで再開するぞ」委員長の山根に
last updateLast Updated : 2025-09-25
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「織田先輩、大丈夫ですかぁ~」 教室に戻るとき、廊下ですれ違った後輩に声を掛けられた。あぁ、やっぱり全学年に伝わってんのね、これ。ホントに俺の情報が回るの早いなぁ。「大丈夫だよ。たいしたことないから心配しないでってみんなに伝えといてねぇ」 俺はその後輩に答える。これで、1年の連中には伝わるだろう。 「はい、わかりました~」 俺からの返事を聞き後輩は行ってしまう。「おっ、織田。大丈夫かぁ?」 今度は先輩。マジで伝わってるし。 「大丈夫っすよ~。軽傷ですからねぇ。みんなに言っといてください、大袈裟だって」 俺は先輩に心配しなくても大丈夫だと告げた。実際にそうだしね。 「おう、わかった。早く治せよぉ」 先輩は俺の頭を撫でて行ってしまった。俺は誰にも気づかれないように溜め息をついた。逢いたいなぁ…すっげぇ逢いたい…なんて思いながら歩いてたら教室の近くで見慣れた金髪はっけぇ~ん。俺はそっと後ろから近づき 「会長さ~ん、元気してる?」 彼の肩に顎を乗せて聞いてみる。俺の方が小さいからちょっと辛いんだけどね。 「体躯で自習だったのか?教室まで声が聞こえてたぞ」 俺の方を一瞬見ただけで言ってくる。ホントに学校の時の金狼さんは冷たいなぁ。でも、振り払ったり、嫌がったりしないのは彼の優しさだよね。イヤだったらすぐに退かすなり離れるよね。 「ん、そんなにうるさかった?」 そのままの体勢で聞き返してた。廊下を行きかう生徒が驚き振り返っていく。そりゃそうだ。堅物で有名な生徒会長様にこんなことしてんだもんね。 「結構な。傷はたいしたことなさそうでよかった。無理するなよ」 会長さんは俺の頭を撫でるとさっさと自分の教室の中へと行ってしまう。これだけの事で浮かれてる俺ってもう末期かも…。ヤバいなぁ…。「蒼樹~着替えねぇと時間がねぇぞ~」 教室からそんな声が飛んできた。 「あっ、そうだった」 俺はあわてて教室に飛びこんだ。片手で着替えるのって結構、大変なんだよね。 「ん~、これ邪魔ぁ~」 腕を吊るしてある布を取って急いで着替えた。はぁ~、楽だぁ。「よし!このままでいよう」 着替え終えて、吊るしてる布がなくて楽だからこのままでいようと呟いたら 「大人しく吊るしてろ!」 クラスメイト全員に怒られた。 「はい」 俺は大人しくいうこ
last updateLast Updated : 2025-10-05
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俺はというと、家に帰って夕方からず~っと時計と睨めっこ。時計の針はとうに7時半を指している。「嘘つき」ホント…嘘つき…この場所に来る気がないのなら初めっから言うなよ。約束なんかするなよ。俺に期待させるなよ…「嘘つき」そんな言葉と共に溜め息が出た。これで何度目の溜め息だろうか?そんなときガチャって玄関の開く音がして、俺は慌ててリビングから出て玄関に向かった。「悪いな、急な用事で遅れた。機種変更でいいんだろ?行くぞ」「うん、ごめん、忙しいのに」親父の言葉に返事をして俺は急いで靴を履き、そのまま二人で家を出た。家の鍵をかけ、親父の運転する車に乗って携帯ショップへと向かった。俺の携帯は完全に壊れててデータの復旧ができないけど、番号はそのまま使えるということで、新しい機種を買ってもらった。まぁ、登録してあったデータは覚えてるから自分で登録し直すことができるからいい。携帯を買い終えそのまま家まで送ってもらった。でも、道中一度も親子の会話というものはなく、お互いに無言だった。「忙しいのに時間を作ってくれてありがとう。もう大丈夫だから行っていいよ」車を降りて、お礼だけは告げた。おふくろ同様に俺の事など一度も見ようとはしない。「あぁ、じゃぁまた」短い返事だけを残し、車は行ってしまった。ホント、俺はあんたたちのなんなんだろうね…俺は溜め息をつき、家の中に入り、リビングのソファに座った。「…もぉ…自由にしてくれよ…解放して…っ…逢いたい…あなたに…金狼さん…」あぁ、俺は自分でも気が付かない間にこんなにも彼のことを必要としてたのか…「行かなきゃ…翔ちゃんたちが待ってる…」俺はもう一度溜め息をつき、自分の感情を押し殺した。こんな感情もったらダメなんだ。俺と彼とは住む世界が違うから…。だからダメなんだ…。彼にはこれ以上は甘えられない…俺は新しい携帯と財布を持ち家を出た。翔太たちが待つ店へと向かうために…。「こんばんわ~。ってみんないるじゃん。貸し切りかよ!」俺はZEAのたまり場の行きつけの店に入って驚く。まさか貸し切り状態になってるなんて思わないじゃん。「そ~ちゃん!!」そういいながら俺に突進してくる可愛い人。「まーくん」俺は彼を抱きとめた。あっ、これ、俺たち流の挨拶。ちなみにこの人の名は真樹。可愛い顔して俺よりも背が低いけど実
last updateLast Updated : 2025-10-10
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「終わったか?」俺が椅子に座るとマスターの正輝さんがウイスキーの入ったグラスを置いてくれた。普通は未成年に酒は出さないよ。でもこの人は違うんだ。ZEAのメンバーが一緒だと平気で俺や翔太に酒を出してくれる。「うん。あっ、正輝さん、データチョーだい。携帯壊れて新しくしたから」俺はお願いしてみる。「はぁ?お前、暗記してるだろうが。自分で登録し直せ」なんてあっさり却下されました。実際に暗記してるもん。「ちぇ~。いいもん。あっ、まーくんデータチョーだい」俺はまーくんに向かって携帯を投げた。「了解。全員分を登録していいんだよね?」まーくんは投げた携帯をキャッチして確認の意味で聞いてくるから俺は頷いた。残りは学校の連中か。それ以外の個人は自分で入れるしかないけど。「大丈夫か?」不意に翔太が聞いてきた。「ん~、ダメかも。死にそう…。いい加減に開放して欲しいよ」俺は溜め息をついた。「そろそろ潮時なんじゃね?」翔太も溜め息をついた。「多分ね、近いと思う」翔太の言葉に俺は同意した。そうなったら俺はどうするんだろう?本当…どうなるんだろう?このまま壊れていくのかな?暫くお互いに無言で飲んでた。「…翔太…俺さ…マジでヤバいかも…」ポツリと俺は呟いた。「はっ?何が?」行き成りすぎて意味が分からんとばかりに翔太が驚く。俺はカウンターにうつ伏し「んっ、なんかさ…マジで惚れちゃったかも…ヤバいくらい…」そう続けた。翔太の目が驚きで丸くなる。「はぁ?ちょっと待て、一体、誰に?ってかいつの間に??」うん、そうだよね。行き成りだし、誰だかわかんないよね。「うん、金狼さんに…惚れちゃったかも…」視線だけ翔太に向けた。「はぁぁ?ちょっと待て、お前あの人と一体どんだけ逢ってんだよ。いつの間に??」翔太が相手を聞き驚く。まぁ、一言も話してないから当たり前なんだけどさ。「ん、実はさ…ここの所ずっと毎日あの人と逢ってた。例の公園でさ…」だから俺は本当のことを話した。こんな話は学校じゃ話せないから…「毎日って…じゃぁ昨夜もか?」驚いたままで翔太が聞いてくる。「うん。でもさ、俺が怖くて逃げた。傍にいるのが辛くて…そしたらこの有様ですよ」俺はグラスを傾け、ケガをした右腕を見せる。「だから、何もしなくていいって言ったわけだ」翔太の
last updateLast Updated : 2025-10-12
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「お前どんだけくじ運悪いんだよ。でもよ、あの人はなんで毎晩お前の所に来るんだ?」俺の頭を撫でながら聞いてくる「ん~、それがわかんない。俺さ、初めて抱かれた日にさ、もう逢わないというか逢うつもりがなかったからバイバイって言ったんだよね。あの人だって夜の掟は嫌というほど知ってるはずだし。そしたらバイバイじゃなくてまたなって言われたんだよね。なんで?」俺はつい翔太に聞いちゃった。「イヤ、それは俺に聞かれてもわかんねぇけどさ。なんか不思議な人だな」俺に聞かれた翔太が苦笑を浮かべた。だよね。本人じゃないんだもんわかんないよね。「うん。不思議な人だよね。なんか俺の心を見透かされてる感じ。あの人の前だと自分のペース乱されっぱなしよ俺」俺はグラスに残ってる酒を飲み干した。「この蒼華をねぇ。やっぱり一度は逢ってみてぇなぁ」翔太が感心してる。「いくら翔太でもあの場所に来たら殺すよ?」半分は冗談で半分は本気でいう。あの場所は俺の逃げ場所だから…「わかってるよ。だから行ってねぇだろ?それに、俺がやり合ったら勝てねぇのわかってんだろ?ずっと負けっぱなしだよ、クソッ」翔太が溜め息をつく。実は翔太よりも俺の方が強いのをメンバー全員が知っている。でも、俺を頭にしなかったのは翔太が止めたのと、俺自身が拒んだから。俺は人の上に立つような人間じゃない。上に立って仲間を従えるなんてガラじゃないんだよね。俺は一緒にはいるけど、あれこれとまとめたり指示したりするのは苦手だからできないんだ。「…なぁ…翔太」俺はマジマジと翔太の横顔を見る。「ん?」酒を飲みながら俺の方を見返してくれる。「俺と寝てどうだった?」つい、昔のことを聞いてしまった。「ぶっ!」翔太は盛大に飲みかけの酒を吹き出した。あっ、直球すぎたかな?実は俺の初めての相手は翔太だったりする。あの時の俺は恋愛感情とか深い感情はなくて、あったのは唯の好奇心だけ。だから俺たちは今でもこうして後腐れなくやっていられてる。でも、本当は知ってるし、気付いてた。あの頃の翔太は恋愛感情で俺の事が好きだったというのを…。そてして、俺が寂しがっていたるを翔太が気付いていたのも…「ねぇ、どうだった?」もう一度、同じ質問をしてみる。翔太の顔が見る見る間に真っ赤に染まっていく。普段そんなに顔に出ないのにね。「お前なぁ、よかっ
last updateLast Updated : 2025-10-12
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「お前なぁ、暇つぶしで毎日あの場所に来るか?なんかあるんじゃねぇの?ちゃんとした理由が…」 俺の呟きに翔太が反論した。 「ん~わかんない。利用されてるだけでもいいや。今は傍にいられるだけで幸せだもん」 そういった俺に 「こんのおバカ!」 翔太に必殺デコピンをおみまいしてくれた。 「いったぁ~」 痛い。翔太のデコピンは地味に痛いんだよ。しかも後から痛みが増してくるというヤツ。 「お前さぁ、悪い方に考えすぎ」 翔太はそういうけど俺にはわからない。 「だってわかんないじゃん。俺はあの人の事なにも知らないもん。噂での彼しか…」 夜の街での噂の彼の事しか知らない。同じ年で同じ学校だっていうのも知らなかったんだし…。 「だぁ~!お前ってやつは!噂は噂。毎日、直接あの人と逢ってんだろ?だったら本人に聞けばいいじゃねぇか」 呆れ顔で翔太が言う。 「翔ちゃん、俺はね…怖いんだ。だから…知らないままでいい。これ以上は…嫌だよ俺」 俺の言葉に翔太がハッとする。そして 「ホント…くじ運悪すぎ…」 俺の頭を撫で呟いた。俺は夜に咲く華。蒼い蒼い華。誰にも媚びを売らない華。どこにも根をつけない華。彷徨う蒼い華。「翔ちゃん帰る」 俺は立ち上がり呟く。 「送ってくか?」 翔太がそう言ってくれたけど 「うぅん、いいや。歩きたい気分だから…また誘ってよ。まーくん携帯ありがと」 歩きたかったから断った。そして、まーくんに預けておいた携帯を受け取る。 「みんなもまた俺と遊んでねぇ~」 そして、みんなにそう言い残し店を出た。あっ、因みに支払いはZEAのメンバーで誰が出すかじゃんけんするからいつも払ってない。自分の分だけでも出すっていうんだけど、俺と翔太は未成年で一番年下だからっていう理由で却下されてるんだよね。大人になったらちゃんと払う約束だけは俺も翔太もしてるからね。 一人になって溜め息をつく。煌びやかな街は俺には似合わない。俺は自然とまた溜め息
last updateLast Updated : 2025-10-13
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「金狼さん、今度テストでしょ?テストんとき俺さ絶対に夜は出歩かないんだよね。だからさ、よかったら携帯の番号教えて?」 俺はダメもとで聞いてみた。 「携帯は?今あるのか?」 金狼さんは俺の携帯が壊れてるのを知ってるから、今持ってるのかを聞いてくる。 「はい、さっき買い替えてきたから」 俺は慌てて携帯を取り出し金狼さんに差し出す。金狼さんは俺の携帯を受け取ると自部分のを取り出して、なんの躊躇もなく俺の携帯に金狼さんの番号とアドレスが登録された。勿論、彼の携帯には俺のが登録された。 「いいの?俺が知っちゃってもいいの?」 自分で聞いておきながら戻ってきた携帯を見て心配で聞いちゃった。 「あぁ、かまわない。どうせ聞こうと思ってたからな」 なんて返事が返ってきて、驚いて彼を見上げた。金狼さんの方が背が高いから仕方ないよね?「えっ?どうして?」 ポカーンてしながら聞いちゃったよ。なんで金狼さんが俺の番号を知りたがるんだろう?「心配だから。ほら、帰るぞ」 なんて言われてしまった。金狼さんが俺を心配?なんかすごく嬉しい。金狼さんはんだポカンとしてる俺の手を掴むと歩き出した。 「うえぇぇ~!!」 突然すぎて変な声出しちゃった。ちょっと金狼さん?「帰るっつただろ?今夜は家まで送る」 うわぁ、なんですかこのエスコートは!! 「あ…ありがとう…」 俺は素直にお礼を言った。ありがとう金狼さん。ただの気まぐれでも今の俺にはすごく幸せな時間だよ…結局、俺は公園からずっと金狼さんに手を繋がれたままで家に帰って来た。 「ありがとう金狼さん。ごめんね」 俺がそう告げたら金狼さんが眉を顰め 「ありがとうは素直に受け取るが、ごめんは聞かない。これからもずっとお前からのごめんだけは聞かない」 なんて言いきられちゃった。俺はどうしていいのか困った。だって、こんなことを言われるなんて思ってなかったんだもん。 「じゃ…じゃぁ、ありがとう金狼さん
last updateLast Updated : 2025-10-13
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28 テスト

俺はいつものようにバスで学園に来てノロノロと歩いていく。 「そ~お~き~」 そんな声と共に後ろから翔太に抱き着かれた。 「おわぁ。どったの?」 俺は翔太の顔を見て聞いてみた。明らかに調子悪そうだったんだもん。 「二日酔い。昨夜さ、お前が帰った後でみんなに散々飲まされた」 翔太は俺から離れ頭を軽く振りながら教えてくれた。 「あはは。翔ちゃんが二日酔いになるぐらいだから相当だねぇ」 翔太はすっげぇ酒には強い。豪酒と言ってもいいぐらいだ。俺も同じぐらい強いけど翔太には負ける。そんな翔太を二日酔いに追い込むんだから流石メンバーだ。侮れない大人たち!! 「お前なぁ、ビール、チューハイ、ジン、ウォッカ、テキーラ、ウイスキーって店に置いてある酒を全種類もってこられてみろ、さすがに潰れるぞ?」 翔太は指折り数えながら苦笑を浮かべる。 「でも、それを断らないんだから翔ちゃんったらやっさしぃ~」 翔太はさメンバー思いなんだよね。だから年下だけどメンバーに慕われてるんだよね。俺たちはメンバーにしてみたら弟のようなもんだけどさ。だけど、頭として、翔太がちゃんとしてるからメンバーに信頼されてるんだよね。 「しばらく酒はいい」 ポツリ翔太が呟く。でも、明日か明後日にはまた飲んでるよこの人。いつもだもん翔太とメンバーのやり取りって。 「薬は?飲んだの?」 二日酔いになってるってことは頭痛が酷いんじゃないのかな?だからちゃんと飲んだのか聞いてみた。 「ん?あぁ、ちゃんと飲んだ。まだ効いてこねぇんだけどな」 翔太はそう答えてくれた。ならいいか。俺と違って翔太はそういうのちゃんと飲むもんね。俺たちはそのまま昇降口に向かい靴を履き替えて教室へと向かう。「お前さ、俺ってそんなに頼りないか?」 突然、翔太が聞いてくる。 「へっ?何が?」 俺は意味が分からなかった。何のことだろうか? 「目、腫れてる。俺じゃ役に立たないのか?」 俺はマジマジと俺を見て、目元をなぞっていく。 「もぉ~翔ちゃんったらぁ~だ~い好き~」 俺は思いっきり翔太に抱き着いた。 「きしょいわ!はぐらかしやがって」 翔太はそんな俺の頭をぐしゃっと撫でた。 「イヤだなぁ~俺、翔太には十分甘えてますよ~」 これ本当。でも…本
last updateLast Updated : 2025-10-13
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翔太にいたってはなにやってんだこいつって呆れ顔で見てた。 「ふふふ、おはようのチュー。会長さんの唇げっちゅー」 なんて俺は唇に人差し指を当てて笑う。 「それで?気はすんだのか?」 そんなことを聞いてくる。普段の会長さんじゃ考えられない言葉に驚いた。おぉ? 「う~んとぉ。じゃぁじゃぁ、抱き着き~」 俺はおふざけしてま~すって感じに抱き着いた。勿論その場にいたみんなは固まったままなんだけどね。だって堅物で有名な生徒会長様にこんなことをしてるんだもん。しかも気が付いてるヤツいないんじゃない?あっ、翔太は除外ね。会長の腕がしっかりと俺の腰に回されてるのに…。「もういいだろ?時間になるぞ?」 会長さんは呟き俺の頭を撫でる。 「ふふふ、ありがとうね会長さん」 俺は素直に会長さんから離れた。その言葉に固まっていたみんなが呪文呪縛が解けたように我に返り動き始める。会長さんはもう一度、俺の頭を撫でて自分の教室に入っていった。「お前って命知らずだな」 ボソッと翔太が呟く。 「かもね。それも楽しくていいでしょ?」 俺は小さく笑い翔太と一緒に教室へと入る。 「で?なんであんなことしたんだ?」 席に着くなり翔太からの質問攻め。 「イヤ、なんとなく?」 本当になんとなく。 「なんとなくって…。お前あれは敵に回したぞ…」 翔太が溜め息をつく。 「あ~。かもしれないね。でもいいんじゃない?それも楽しくて」 きっと、会長さんを好きな連中を敵に回したんだろうな。 「ホント、お前の行動は意味不明だな相変わらず」 翔太が呆れてる。 「うん、俺も自分でそう思うよ」 俺は素直に頷いた。学校にいるときの俺は何時もこんな感じ。自分の行動だって自分で理解できてないときがほとんどだ。それは本当の自分を押し隠して偽りの自分を演じてるからかもしれないのだけど。こうして、俺と会長さんのキス騒動はやっぱり2限目が終わる頃には全学年に広まっていた。相変わらずはえぇんだよ!!! 「ありゃりゃ。やっぱりこうなるのね」 俺は目の前の連中を見て呟く。何がと言われれば…只今俺の前には数人の生徒が激怒してます。理由?言わなくてもわかるでしょ?会長さんとのチューよチュー。「どうしてあんなことしたんですか!」 「金城さんになんてことするんですか!」 「ふざけたことす
last updateLast Updated : 2025-10-15
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30

東棟から西棟の教室に戻ろうと思って階段を下りてたら会長さんが壁に凭れて待ってた。 「ごめんね?俺のせいで会長さんにも迷惑がいっちゃったでしょ?」 俺は小さく笑いながら聞いてみた。俺のとこに来たってことは会長さんの所にも行ったてことだし… 「俺は大丈夫だ。お前は?大丈夫か?」 会長さんに反対に聞かれちゃったや。 「大丈夫だよ。迷惑かけたのはこっちだしさ。ごめんね?」 俺はぺこりと頭を下げた。間違いなく、俺が起こした行動で彼に迷惑をかけたのだから謝るのは当たり前だからね。 「お前からのごめんは聞かないって言っただろ」 なんて言われてしまった。 「それじゃぁ言葉がないよ会長さん。俺はね本当に大丈夫。無理してないから心配しないで」 俺は小さく笑った。その途端にグイッて腕を掴まれて引っ張られた。あまりにも突然だったから俺はその勢いのまま会長さんの腕の中に倒れこんだ。 「か、会長さん?」 彼の行動の意味がわからなくて俺は正直戸惑った。 「言いたいやつには言わせておけ。お前が気にすることはない。それに俺は拒んでなかっただろ?」 俺を抱きしめたままで言ってくる言葉に俺は小さく頷いた。 「うん、ありがとう」 会長さんの制服をそっと掴んで呟き気味に答えた。気まぐれでもいい、遊びでもいい。少しでも俺の事を見てくれるのなら…ねぇ、金狼さん。あなたにとって俺は何だろうね?それが聞けないから俺は前に進めない。前に進むのが怖いんだ。俺は恋愛することに恐怖を持っている。過去のトラウマが俺を縛り付けているから…あの後、会長さんは何事もなかったように去っていった。俺はというと…「ビックリ…」 実はというと本当に驚いていたりもする。学校での金狼さんは冷たいのだ。冷たいというより別人なのだ。だから、あんなことをしてくるとは思ってなかったから予想外だった。朝のチューの時もそうだけどさ。 「んふふ」 得した気分。少しぐらい幸せに浸ってもいいよね。俺は浮かれ気分のままで教室に戻った。 「そ~お~き~」 「なんであいつなんだよぉ」 「どーゆーことぉ~」 とまぁ、またこの攻撃にあい浮かれていた俺の気分は一気に沈んだ。見事に撃沈。 「うぜぇ。俺の自由だろうが!」 俺は叫んだ。ここに来てる連中は夜の街での俺を知ってる連中だ。 「だけどさ」 「なのに
last updateLast Updated : 2025-10-26
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