体育の時間、俺たちは子供の様にギャーギャーと騒いでいた。担当の先生に急用が入ったってことで自習になったのだ。何をしようかって話になって誰かが童心に戻ってドッチボールをしようと言い出したのだ。それに全員が賛成してドッチボールを始めたのだった。「てめぇ蒼樹、いい加減に当たりやがれ!!」そんなこと言いながら俺をめがけて翔太がボールを投げてくる。「やだよ~ん」俺はそれを避けてあっかんべ~って舌を出す。「観念しろ織田!」翔太からボールを受け取った斎藤が俺に向かってボールを投げてきた。かなり威力のある直球がまともに俺の方へと飛んできた。誰もが息をのんだ。当たり前?だよね。俺、ケガしてるんだもん。「蒼樹!」「織田!」みんなの声がグランウドに響いた。「あっぶねぇ~。本気で来るかよ」俺は片手でそれを受け止めた。元々の利き腕は左だから、右手は使えなくてもさほど問題はないのだ。「お返し!喰らいやがれ~!」俺はそのまま敵陣に向かって投げ返した。「いってぇ~!!」被害にあったのは斎藤の隣にいた中路だった。「よっしゃ~!あったり~!」俺はガッツポーズを作った。「蒼樹お前ぜってぇケガ人じゃねぇ」「信じらんねぇ~」なんて声が飛んでくる。「翔ちゃ~ん、みんながイジメる~」俺は後ろを振り返って翔太に言ってみるが「あっ、わりぃ、俺、今敵だから」なんてにっこり笑って言われてしまった。「美咲ちゃ~ん、酷いと思わな~い?」仕方がないので、味方の美咲に訴える。「ごめん蒼樹。俺もみんなと同意見だ。お前ケガ人じゃない」美咲にも苦笑を浮かべたまま言われてしまった。「ひど~い。俺これでもケガに~ん!大事にしてよね?」なんてふざけてみる。「いや、今の球はケガ人の投げる球じゃねぇ。マジでいてぇもん」俺の被害にあった中路に止めを刺されてしまった。「ひど~い。みんなのイジメっこ~!え~ん」なんて言いながら俺は泣きまねをした。「お前はいくつだよ~!」「イジメて泣くかよお前が~」なんてどっと笑いが生まれる。勿論、俺も笑ってる。この瞬間だけ何も考えずにすむから…。余計なことを考えなくて済む…。嫌なことも何もかも…。「織田、お前はそろそろ休憩だ。ヒビだけだって言ってもそれ以上悪化させたくはないぞ俺たちは。ってことで織田抜きで再開するぞ」委員長の山根に
Last Updated : 2025-09-25 Read more