(改稿版:書き直し)3-13 沙月の孤独と過去の回想 1報道部の騒ぎは、徐々に沈静化していた。電話の音はまだ断続的に鳴ってはいるものの、社員たちはそれぞれの持ち場に戻って仕事をしている。澪は報道部の中心で談笑していたが、そこへ男性スタッフが駆け込んできた。「朝霧さん! 広報部が呼んでいます! 至急お願いします!」一瞬張り詰めた空気が流れるも、澪は笑顔で立ち上がった。「お呼びがかかったようね。ほんと、人気者は大変だわ。みんな、じゃあね」「行ってらっしゃい。澪さん」「頑張ってね」女性社員たちにエールを送られた澪。笑顔で手を振り、ヒールの音を響かせながら報道部を去って行く。「……」沙月は、無言で澪の去って行く後姿を見届けていた――**** その後も沙月はずっと孤独だった。昼休みは社員食堂に行く気にもなれなかった。どうせ行っても1人、それどころか周りで悪口を言われる可能性もある。沙月はコンビニでおにぎりを買うと会社近くにある公園のベンチに座って食事をした。昼休みが終わり、報道部に戻って来た沙月を気にかける者は誰もいない。(でも嫌がらせを受けるくらいなら、誰にも相手にされない方がマシだわ)この時までの沙月は、そう思っていたのだった……。午後に入っても、AD高橋から与えられている仕事を、誰とも会話することなく1人で淡々とこなした。タイピングには自信がある沙月。無言でPCの前に座り、ひたすらデータの入力を続ける。それが今の自分のできることだったから――――18時報道部は澪の不在にも関わらず、彼女の話題で盛り上がっていた。沙月は音を立てないように席を立つと誰に言うでもなく声をかける。「お疲れさまでした」しかし当然、それに対する返事はない。代わりに背後からわざとらしい声が響いた。「ねぇ。今夜、朝霧さんを誘って婚約祝いに皆で飲みに行かない?」「いいわね! 他の部署の人たちも誘いましょうよ」「朝霧さん、絶対来てくれるよね!」楽しそうな笑い声が響く。楽しそうな彼女達を振り返らず、沙月は報道部を後にした―― 電車に揺られながら、沙月は電車の窓から外を眺めていた。窓ガラスに映る自分の顔は憔悴しきった顔をしている。(……高校のときと同じね……)沙月の脳裏に高校時代の記憶がよぎる――****高校2年のとき、突然沙月は
Terakhir Diperbarui : 2025-11-20 Baca selengkapnya