澪の【爆弾宣言】が放送された直後から、報道部は大騒ぎになっていた。あちこちで電話の音は鳴りやまず、大量の問い合わせメールが入ってくる。それらは全て他局や雑誌社、ネットメディアからだった。デスクは怒鳴りちらし、記者たちは走り回る。まさにフロア全体がパニック状態に陥っていた。「広報は? コメントは出すのか?」「スポンサーの対応を急げ! こっちは天野グループが絡んでるんだぞ!」「朝霧澪の映像、切り出して再編集して!」社員たちはモニターの前に集まり、今後の対応を話し合っていた。けれど沙月だけは蚊帳の外で、いつも通りに資料整理を行っていた。大騒ぎになっている報道部の中で、沙月だけは変わりなかった。社員たちの誰からも声をかけられないので、会話に加わることも出来なかったのだ。(どうせ私が、あの場に言っても無視されるだけ。それどころか、追い払われるかもしれない。仕事に専念するのよ。今の私にはそれしかできないのだから)この部署――いや、もとより局全体から沙月は相手にされずにいた。それが偶然なのか、意図的なのかは分からないが……何となく悟っていた。朝霧澪が、自分を孤立させようと仕向けているのではないかと……。けれど今は考えないようにしていた。(余計なことを考えては駄目、仕事に専念するのよ)そのとき、直ぐ近くで女子社員の会話が聞こえてきた。「朝霧さん、かわいそうだよね。あんなふうに写真撮られて……それに変な憶測ばっかりされてるし」「でも、ちゃんと認めて偉いよね。天野社長とのことも、堂々としてるし」「それに比べて……」誰かの声が、背後で途切れた。沙月が振り返ると、視線を逸らす女性社員たち。今の会話は、明らかに自分に対する嫌味だと言うことに沙月は気づいた。(私は、何も言ってないのに……)気にしないように、沙月は再び視線を資料に戻した。けれど、文字が頭に入ってこない。澪の笑顔が脳裏に焼きついて離れなかった。――そのとき。誰かがリモコンを操作し、報道部の壁に並ぶ2台の大型テレビが切り替わった。左の画面には澪が笑顔で婚約を宣言する映像が繰り返し流されている。右の画面では天野グループ本社前からのライブ中継が映し出されている。(司……!)沙月の身体が硬直する。画面には報道陣に囲まれた司が、無言のまま車から降りてくる映像が流れている
Last Updated : 2025-11-18 Read more