紬もまた、これほどまでに断言されるとは思っていなかった。隣に立つ宏一の厳しい横顔を見上げ、不意に気づかされる――自分は今、誰かに無条件で守られているのだと。これまでの人生で、決して味わうことのなかった安らぎだった。寧音の瞳には、隠しようのない動揺が広がっていた。あまりに苛烈な、拒絶の言葉。これまで積み上げてきたプライドが、ズタズタにへし折られていく。そしてそれ以上に、言葉にできないほどの屈辱がじわじわと全身を蝕んだ。こんな無様な姿を、紬に晒してしまった。慎は一度だけ、紬に視線を送った。その深い瞳の奥に、複雑な感情が揺らめく。それから、いつもの静かな声で口を開いた。「……教授が他に相応しいと考える方がいらっしゃるのであれば、無理強いはいたしません」寧音は顔色を失い、唇の端がわななき、血の気が引いていく。彼女は、憎悪に歪んだ表情で紬を睨みつけた。刹那、嫉妬の光がその瞳をよぎる。だが、己の立場をわきまえている彼女は、それ以上言葉を重ねることはなかった。宏一は慎と視線を合わせた。若くして底知れぬ深みを持つこの男は、今日の立ち回りに微塵の隙もなかった。紬がここにいると承知の上で足を運び、驕ることなく場を支配している。だというのに……「人を見る目」だけは、致命的なまでに欠落しているらしい。「長谷川代表。お引き取りを」宏一はそれだけ告げると、一顧だにせず背を向けた。紬も余計な一瞥すら向けず、その後に従う。偏見に凝り固まった人間と言い争うほど、無意味なことはない。それよりも、自分の時間を自分のために使う方がよほど価値がある。年明けから心血を注いできた飛行制御システム、および次世代チップの研究。国内のドローン技術を新たな次元へと引き上げるため、今まさに教授と論じたいことが山積していたのだ。紬の後ろ姿をしばらく目で追ってから、慎はゆっくりと視線を外した。寧音の表情は、昏く沈んでいた。生まれてこのかた、彼女の人生は常に順風満帆だった。誰もが羨むエリートと謳われ、賞賛を一身に浴びて生きてきた。それが、よりによって、あの女に、負けたのだ。「……で、首尾はどうでした?」陸が小走りで駆け寄り、早口に尋ねた。慎は目を細め、静かに告げた。「賀来教授には断られた」「なんだって?で、結局誰が選
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