アロー・フロンティアから訴状の写しが届いたとき、紬は特に驚きもしなかった。自分から名乗り出て矢面に立ったのは、まさにこの写しを受け取るためだったのだから。特許庁からも連絡が入り、今回の騒動を受けて改めて最初から審査・確認を行うと告げられた。もし問題が発覚すれば、特許は取り消される可能性もあるという。それでも紬は落ち着き払った様子で、淡々と必要な証明書類の整理を続けていた。そこへ、携帯が鳴った。画面を見ると、悠真からの着信だった。紬はすぐに応答ボタンに触れた。「望月さん?」悠真はちょうど飛行機に乗り込もうとしているところらしく、背後に搭乗を促すアナウンスが微かに聞こえていた。「フライテックの件、ある程度は把握しました……大丈夫ですか?」悠真はかねてより、承一が宏一の息子であることを知っている。あの承一が、問題が起きたからといって部下を捨て駒にするような人間だとは到底思えなかった。それに、この絶体絶命のタイミングで紬が「単独開発者である」と発表されたということは……まさか本当に、あの複雑なシステムを紬がたった一人で作り上げたというのだろうか?紬は、彼の言葉を少し意外に思った。「大丈夫です。お気にかけてくださって、ありがとうございます」悠真は、この事態への驚きを抑えきれずにいた。まだ完全には確かめられていないが、それでも胸の奥から妙な高揚感が込み上げてくるのを感じていた。少し間を置いてから、真剣な声で言った。「アロー・フロンティアが提訴に動いたと聞きました。僕に何か力になれることはありませんか?ベイサイド・テクノロジーの法務部は、国内でもトップクラスの実力を持っています。必要であれば、すぐに担当者を動かしますが」例の盗用騒動にしても——彼は自分の直感を信じたかった。あれほど高度で複雑なシステムをゼロから組み上げられる人間が、他人の初期コードなどを盗む必要などあるだろうか。紬には、彼の申し出がかえって不思議に感じられた。フライテックが世間からの悪評の渦中にあり、すでに三社もの取引先が解約に動いているこの状況で、悠真が自らリスクを冒して助けを申し出てくれるとは。内心不思議に思いながら、少し間を置いて丁寧に答えた。「ありがとうございます。ですが、今のところは大丈夫です」悠真は歩みを止め、紬には彼女なりの勝算
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