和彦は自分の格好を見下ろす。秦の店が入るビルから連れ出されたあと、まずは速やかにその場を離れて、車は別の駐車場に停めてから、今度はタクシーで移動した。向かった先はデパートで、鷹津が選び、購入した、薄手のニットとパンツ、コートと靴に着替えたのだ。 鷹津らしからぬ散財ぶりは、総和会にケンカを売るような行動もあいまって、和彦をひたすら困惑させる。それゆえの『おかしい』という発言なのだが、鷹津は自分の行動を説明する気はさらさらないようだった。 鷹津という男に何かが起こったのは確かだが、和彦には推測することすらできない。もどかしいし、水族館に引っ張り込まれるまでは、腹立たしさすら覚えていたが、それはもう消え失せた。 鷹津と〈デート〉をしているという現実に、気恥ずかしさのほうが上回ったのだ。「なあ、どうして水族館なんだ」「遊園地のほうがよかったか?」 和彦は動かしていた爪先をピタリと止めて、思わず隣を見る。鷹津は、到底楽しんでいるとは思えない顔で、水槽を眺めていた。「そうだと言ったら、連れて行ってくれたのか?」「俺と一緒で楽しめるならな」「……今は、楽しんでいるように見えるか?」 横目で和彦を一瞥した鷹津が、ようやく唇を緩める。「あまり深く考えるな。晩メシまでの時間潰しだ」「服を買ってくれたのも?」「俺と一緒にいるのに、総和会の匂いが染み付いているものを身につけているのが、気に食わなかったんだ」 そのせいで、着替えた服はコインロッカーに押し込まれてしまった。 鷹津の言葉に、和彦は表情を曇らせる。「なあ……、あんた本当に――」 これからどうするつもりかと言いかけたが、言葉は口中で消える。代わりに、別の質問をぶつけていた。「水族館を出たら、次はどこに行くんだ」「希望はあるか?」「あんたなりのデートプランがあるんじゃないのか」「……ねーよ、そんなもの」 吐き捨てるように答える鷹津がおもしろくて、和彦は顔を伏せて必死に笑いを噛み殺す。本
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