万里は戸惑い、頭を掻いた。「何も不適切なことではありませんよ、社長」弘明はバックミラー越しに言った。「せっかく坊ちゃまが社長にお話されたんです。検討されてはいかがでしょう。『熱意さえあれば、どんな壁も崩せる』という言い方もあるでしょう?」万里は首を傾げた。翔吾は舌で頬の内側を押しつけた。「子供の前で戯言を続けるなら、その熱意でまずお前の頭をかち割ってやろうか」「……」弘明は言葉に詰まった。翔吾がこの話題をあまり好まないようだと感じ、万里は黙り込み、ポケットからチョコレートを一つ取り出し、包み紙を剥がした。口に入れようとした瞬間、翔吾に奪われた。「糖分は控えろと言っただろう。どこから手に入れた?」万里は正直に白状した。「彩葉さんがくれたの……彼女も糖分はダメ、一つだけって言ってたから」翔吾は陽光を反射させる瞳を細め、そのままそのチョコレートを一口で頬張った。「彼女がくれたものなら、まあいい。だが、他人にもらったものを、勝手に口にするな。覚えたか?」万里は素直に答えた。「覚えたよ、パパ」……学校から帰ると、彩葉は全身が痛んだ。シャワーを簡単に浴びて、布団にくるまった。夜七時頃、スマホの着信音で起こされた。「るりちゃん……どうしたの?」彩葉は体を起こし、痛む腹部をさすった。「いろはっち、あのクソ蒼真と離婚したの?今日、午前中に手続きするって言ってたじゃない!」瑠璃子の口調には明らかに怒りが滲んでいた。彩葉は疲れた様子で額を押さえた。「急用ができて、離婚できなかったの……」「クソったれ!あんな男といつまでぐずぐずしているのよ!さっさと離婚しなさい」瑠璃子は激怒していた。「今日、光一のやつに病院まで迎えに来いって言われて、性病の見舞いかと思ったら、あの林雫とかいう女だったのよ!病室に入ったら、クズ蒼真とあの女が抱き合っていたのよ!体が溶け合っちゃいそうだったわ!なんて安っぽい女なの!」彩葉は静かに聞いていた。表情は凍った湖面のように静かだ。「光一のやつも今日はおかしくてさ、あの女の前でクズ蒼真に謝れとか言うわけ!絶対ムリ!だから『大きいのが我慢できない!』って言って、走って逃げてきた!」彩葉はニヤリと唇を曲げ、こらえきれずに笑った「『お花摘み』で席を外す子はいるけど、『大きいほう』
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