千尋はそれ以上何も言わず、撮影現場へ向かった。それから三十分ほどして、ようやく隙を見つけて柚香にメッセージを送った。京原市に来ているのかと尋ねる内容だった。柚香がそのメッセージを見たとき、ちょうど食事をしていた。メッセージの最後に添えられた一文を見て、思わず眉を寄せる。――LINEは使わず、SMSで連絡して。理由は分からなかったが、それでも返信した。【うん。でも、もう帰ろうと思ってるよ。何か用?】千尋が返信しようとしたところ、視界の端にアシスタントがこちらへ歩いてくるのが見えた。結局、慌てて数文字だけ打ち込む。【何でもないよ。今度京原市に来たとき、ご飯ごちそうするね】送信すると、千尋はすぐにすべてのメッセージを削除した。ちょうどそのとき、アシスタントが彼女の前までやって来た。「千尋さん」美咲が何気ない様子で声をかける。「あと三十分くらいしたら、メイクに行けるよ」千尋は「分かった」と答えた。けれど、視線はどうしてもスマホの画面へ向いてしまう。柚香から返信が来ませんようにと、心の中で祈った。さっき車の中で、美咲が目でカメラの存在を知らせてくれたとはいえ、彼女は結局のところ修司が自分のそばにつけた人間だ。まだ何も分からない今、美咲が細かいことまで修司に報告するのかどうか、判断できない。一方、柚香は千尋からのメッセージを見て、釈然としない気持ちになっていた。「どうしましたか?」食事の合間に、康平が柚香の様子がおかしいことに気づき、声をかけた。「何かありました?」「どういうときに、LINEじゃなくてSMSで連絡するの?」柚香はどうしても千尋のメッセージが引っかかっていた。会って食事をしたいだけなら、電話でもLINEでもいいはずだ。康平が答える。「携帯会社を乗り換えるときの確認じゃないですか?」慎吾は無表情のまま言った。「ブロックされたときです」柚香は一瞬、固まった。すぐに千尋との連絡先を確認する。特に変わったところはなく、友達登録もそのままだった。「気になるなら、メッセージを送ってきた本人に聞けばいいでしょう」康平はさっぱりした性格で、こういうことをいつまでも考え込むタイプではない。柚香はどうするか迷った。すると、何かありそうだと察した執事がすぐに近寄ってきた。この数か月、
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