長田先生の担当室で始まったラジオ体操。 しかし、それがすごかった。 ラジオ体操第一を……繰り返し二十回。「一回目。まだです」「八回目、まだまだです」「十三回目、まだまだです、はい」 先生は自分も体操をしているのに、僕をしっかり見ていて、ちょっとでも手を抜くと、CDが終わると同時に容赦なく再生ボタンを押された。「はい、いいでしょう」 ようやくOKをもらえたのは、二十一回目だった。 全身が悲鳴を上げている。 ラジオ体操第一でここまで追い込まれたのは初めてだ。「っひ、膝がガクガク言って……」「はい、限界は見極めなければなりません」 先生はぬぼーっとした顔のまま答えた。「筋肉痛はどうして起こるか知っていますか?」「え? ……運動のし過ぎ?」「はい。運動で筋肉繊維がちぎれます。それが筋肉痛ですが、実は、その間に、身体が成長しているのですよ、はい」「せ、いちょう?」「超回復といい、ちぎれた筋肉が更に強化されて回復するのです、はい。限界を越えなければ成長はないのです、はい」「ラジオ体操第一で、限界って……そりゃ二十一回って半端ない回数やったけど……」「はい。君の追加授業の始めにラジオ体操第一を持ってきたのには、ちゃんと理由があります、はい」 長田先生は僕と同じ回数ラジオ体操第一をやったとは思えない平坦さで、淡々と教えてくれた。「まず、ラジオ体操第一なら、どこででもやれますね、はい。自室でも、教室でも、廊下でも、日本であれば何処でやっていても問題はありません、はい。そして、ラジオ体操は、全身の筋肉を使います。はい。体の歪みも正し、内臓にもいい影響を与えます、はい。本当なら第二までやりたいところですが、はい、第二は運動強度が高いので、多分今の丸岡君の体力では、もたないと思いまして、はい」「……もちません。ていうか……こんな状態で、これから先、訓練、できるんでしょうか……」「後はストレッチをして終わり
Last Updated : 2025-11-24 Read more