校内の巨大な図書館で、未来の義姉候補である華さんが、館長である本多さんから部屋の引き継ぎをされていた、その時。 ワタシは一人で学校の近くにある商店街まで来ていた。『仕事が終わるまで喫茶店で待っていて欲しい』という浩二さんとの約束を守るためだ。「ここ……かな?」 首を傾げながら店の看板の前に立ち、店名を確認する。この辺には他に喫茶店もなさそうなので、きっと此処でまず間違いないだろう。 扉をそっと開けると、カランッと大きな呼び鈴が鳴る。たったそれだけの事なのに、ちょっとレトロな感じがして何だか少し嬉しくなった。「いらっしゃいませ。お好きな席にどうぞ」 大学生くらいの若い店員さんに声を掛けられ、ちょっと驚いた。格闘技をやっているっぽい引き締まった体格にエプロンを着けた姿がどうにもちぐはぐなのだが、むしろそれが少し可愛らしい。他にも、古くからある感じの商店街のお店に、“店員”として居るタイプの子ではないなとも思った。 おどおどとした声で「……はい」と答え、窓の近くにある四人掛けの席に座る。すると水と一緒にメニュー表を持って来てくれたので、ワタシはリンゴジュースを頼む事にした。 ほっと息を吐き、窓から外に視線をやる。 見える全てが“昭和時代”を思い起こす『昔ながらの商店街』だ。だけどまだまだ活気があり、買い物客達が数多く歩いている。烏が遠くで鳴き、夕陽に染まる空がとても綺麗だ。 そんなテンプレ的夕方の光景は、ただぼおっと見ているだけでちょっと癒される。今まではずっと、人目を気にし、影に隠れて淫夢でも見そうな人を探すだけの身だったので、ここまで『人間の生活』というものに関わってみた事がなかった。こうも穏やかな生活を、世の人々は送っていたのかと改めて思った。 光景を楽しみつつ、リンゴジュースを飲みながらのんびり店内で浩二さんのお迎えを待っていると、うっすらと彼の匂いが遠くから漂ってきた。どうやら仕事を終えて、こちらに向かって来てくれているみたいだ。 ありもしない獣耳がピンッと立ったみたいな反応をし、嬉しい気持ちを隠す事なく匂いのした方へ顔を向ける。すると、窓越しに小さく浩二さんの姿を
최신 업데이트 : 2026-09-17 더 보기