「俺も裕也も、いたってノーマルだから。絵里、変な勘違いしないで」絵里は思わず吹き出した。「しないよ」通話を切り、立ち去ろうとした。顔を上げたその瞬間、出入り口に立つ人影が視界に入る。相手は、戸惑ったような顔で絵里を見ていた。綾子だった。撮影用の衣装に身を包み、メイクも華やかに決まっている。けれど絵里と目が合うと、そこにははっきりとした罪悪感が浮かんだ。絵里は淡々と視線を外した。そのまま足を進め、彼女を一度も振り返らない。絵里が通り過ぎるのを見て、綾子は何か言いかけて唇を開いた。だが、あまりに冷たい態度に、結局言葉を飲み込むしかなかった。現場を出る前に、絵里は覚とこの二日間の撮影内容について軽く打ち合わせをした。いくつか調整が必要な箇所があったが、絵里からすればどれも些細な問題だ。了承して、スタジオを後にする。門を出たところで、すぐ目に入った。コンクリートの柱にもたれ、タバコをくゆらせている和也。絵里は眉をひそめ、そのまま通り過ぎようとする。気づかれないように立ち去るつもりだったが、遅かった。和也が顔を上げ、絵里を見つけるなり、慌ててタバコを投げ捨て、靴先でぐりと揉み消した。大股で追ってくる。「絵里!ずっと待ってたんだ。聞きたいことがある。頼む、行かないで」手が絵里に触れる前に、彼女はすっと身をかわした。絵里は冷えた視線で和也を見る。何も言わなくても、彼が何を聞きたいのかは分かっていた。「裕也がどうして私の部屋にいたのか、とか。私とどういう関係なのか、とか。どうしてあなたにこんなことをするのか……そういうの?」和也が数秒固まる。「……分かってるなら、なおさら言ってくれ。お前たち、いったいどういうことなんだ?」「裕也から、もう十分に説明はあったはずだけど」絵里は淡々と言う。和也は進路を塞ぎ、食い下がった。「認めない。お前の口から聞きたい。二人は、どんな関係なんだ?」あの墓地で、裕也と絵里が親密にしているところをこの目で見た。それでも和也は、絵里が自分を苛立たせるためにやっているだけだと信じていた。まさか本当に結婚したなど、認めたくなかった。「……いいよ」絵里は正面から彼を見据え、静かに、けれど眩しいほど穏やかな笑みを浮かべた。「よく聞いて。私は裕也
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