修司にとっても、これは完全に予想外の事態だった。もう少し煽りを入れて、二人の関係の崩壊を早めようと企んでいたのだ。ところが、潜り込ませたスパイからの報告によれば、昨夜裕也は絵里の家に泊まり、今朝は揃って出勤したというではないか。「何を焦っている。時間はいくらでもあるだろう。それよりも、どうやって彼女を俺と協力させるか、その頭を絞ることだな」修司の目つきは鋭く冷酷で、その口調には重苦しい威圧感と、隠しきれない苛立ちが混じっていた。そう言い捨てると、傲慢な態度で通話を切る。悟史はスマホを握る手に力を込め、指の関節が白くなる。やがてゆっくりとスマホを下ろす。その目に、一瞬だけ鋭い光が宿った。絵里がオフィスに戻ると、丈裕から報告が入る。古い団地周辺の防犯カメラの映像をようやく解析し、美月が事件に巻き込まれる直前、和也がそこを訪れていたことを突き止めたのだ。絵里は数秒間呆然とした後、すべてを悟る。和也こそが、美月を死に追いやった張本人だったのだ。裕子を連れ去り、その後洋二をけしかけて、裕子を人質に南を脅迫したのも彼だ。田中が事件に巻き込まれた当日、和也は藤原家にいた。ドローンが雪枝が田中に襲いかかった瞬間を捉えていたにもかかわらず、和也はずっと嘘をつき続けていたのだ。ボイスレコーダーの内容は父の死に関するものだけだと偽っていたが、もともとその言葉を疑っていた。今となっては確信に変わっている。ボイスレコーダーの内容は、南が言っていた通り、本当の命の恩人に関するものに違いない。和也が故意にその事実を隠蔽したのは、十年前の私の本当の恩人の存在を隠すためだったのだ。だが、一体誰なのだろうか。和也がそこまで恐れ、何が何でも私に隠し通そうとする人物とは……我に返った絵里は、全身の血が凍りつくような感覚に襲われる。当時自分を救ってくれたその人が、すでに命を落としているのではないかという恐怖が込み上げてくる。しかし、生死にかかわらず、真実を突き止めなければならない。自分の命の恩人が、一体誰なのかを。すぐに南に電話をかけたが、電源が切られているというアナウンスが流れるだけだった。南の身に何かあったのではないかと恐れた絵里は、丈裕に捜索を命じる。午前中いっぱい、絵里は気が気ではなかった。昼になり、裕也が昼食に
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