だが、彼の視線は、夕食の時からずっと、自分の足元に落ちたままだ。「……千隼」 ぽつりと、静寂を破るように名前を呼ぶ。 彼の肩が、微かに跳ねた。「傷、痛むの?」「……いいえ。痛みは、ほとんどありません」 掠れた低い声。 彼は顔を上げず、立てた膝の上で左手を固く握りしめている。 その様子が、どうしようもなく痛々しかった。 昼間、祖母から両親の過去の断片を聞かされ、私が静かに涙を流していた時、彼は隣でただ黙って私の涙を拭い続けていた。 だが、彼の内側では、私とは全く違う種類の感情が渦巻いていたのだと、背中から漂う空気の重さでわかる。「……お嬢」 千隼が、ゆっくりと顔を上げた。 薄暗い部屋の中で、彼のアメジスト色の瞳が、月明かりを反射して鈍く光っている。 そこには、かつての血の匂いを求めるような好戦的な色はない。 ただ、深く、冷たい湖の底に沈み込んでいくような、絶対的な諦観と自己否定の色が広がっていた。「……俺は、ここから消えます」 空気が、凍りついた。 私は障子から手を離し、彼の方へ向き直った。「何を、言ってるの」「言葉通りの意味です」 千隼は、壁から背中を離し、私に向かって正座をし直した。 怪我をした右肩を庇いながらの不器用な動作だったが、その姿勢は、ひどく張り詰めたものだった。「今日、親父と桔梗さんの過去を聞いて……俺は、自分がどれほど取り返しのつかないことをしているのかを、嫌というほど思い知らされました」 彼の声は、微かに震えていた。「親父は、自分の命を削って、自分が死んだことにしてまで……お嬢を、貴女を、この泥沼から遠ざけようとした。太陽の当たる場所で、普通の人として生きてほしかったからだ。……それなのに、俺は」 千隼の左手が、畳を強く握りしめる。
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