ジュリアンの前で剣を振るっているアルの動きが、見て取れるほどに悪くなってきている。 ジュリアンは、手に持っている短剣に強く魔力を込めた。 普通の金属よりも魔力の馴染みがよい、スタルーン製のそれは、ジュリアンの母が持っていた護身用のものだ。──母上。ここで使うことを、お許しください。 術と同時に気持ちも込めて、ジュリアンは顔を上げた。 背負っていた荷を下ろし、中から折りたたみ式の弩を取り出す。 バネで広がった弓、その左右にピンと張った弦を、ジュリアンは噛んで弦受けに引っ掛けた。「いいぞ、アル!」「なにがですか?!」 弩の台座に、付与をした短剣をセットする。「なんですか、それっ?」 アルの問いかけに答えを返さず、ジュリアンは右腕一本で弩を構えると、引き金を引く。 どすんとした反動を身体強化で抑え込み、的へ向けて短剣を撃ち出した。 短剣は輝きながら黒い塊の中心に向かって飛ぶ。「これで、……なんか、……変わりますかねっ?!」 変わらず襲い来る触手を捌きながら、アルが問うてくる。 弩を降ろしたジュリアンは、すぐにも浄化を唱えた。「効いてくれればいいんだが……」 数秒の間を置いて、黒い塊がまるで爆発するように四散する。「効いたっ?!」「そう願おう」 触手の攻勢が止まり、のたうつように絡み合う。 嫌な匂いがかき回されて、更に強くなったような気がした。「ところでイアン様、それなんですか?」 アルの視線は、ジュリアンの手の中にある弩を見ていた。「戦いになるなら、備えは必要だろう? 今の私は、投擲が出来ないのでな」「あの短剣に、なにをしたんです?」「マークに渡した浄化の矢で、状況が変わったからな。なら効果の大きなスタルーンに、込められるだけ術を込めれば、多少は効くかと思ったんだ」 黒い塊が、捕らえていた
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