บททั้งหมดของ 触れるたびに溺れる浅ましさ: บทที่ 31 - บทที่ 40

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7-3

 ジュリアンの前で剣を振るっているアルの動きが、見て取れるほどに悪くなってきている。 ジュリアンは、手に持っている短剣に強く魔力を込めた。 普通の金属よりも魔力の馴染みがよい、スタルーン製のそれは、ジュリアンの母が持っていた護身用のものだ。──母上。ここで使うことを、お許しください。 術と同時に気持ちも込めて、ジュリアンは顔を上げた。 背負っていた荷を下ろし、中から折りたたみ式の弩を取り出す。 バネで広がった弓、その左右にピンと張った弦を、ジュリアンは噛んで弦受けに引っ掛けた。「いいぞ、アル!」「なにがですか?!」 弩の台座に、付与をした短剣をセットする。「なんですか、それっ?」 アルの問いかけに答えを返さず、ジュリアンは右腕一本で弩を構えると、引き金を引く。 どすんとした反動を身体強化で抑え込み、的へ向けて短剣を撃ち出した。 短剣は輝きながら黒い塊の中心に向かって飛ぶ。「これで、……なんか、……変わりますかねっ?!」 変わらず襲い来る触手を捌きながら、アルが問うてくる。 弩を降ろしたジュリアンは、すぐにも浄化を唱えた。「効いてくれればいいんだが……」 数秒の間を置いて、黒い塊がまるで爆発するように四散する。「効いたっ?!」「そう願おう」 触手の攻勢が止まり、のたうつように絡み合う。 嫌な匂いがかき回されて、更に強くなったような気がした。「ところでイアン様、それなんですか?」 アルの視線は、ジュリアンの手の中にある弩を見ていた。「戦いになるなら、備えは必要だろう? 今の私は、投擲が出来ないのでな」「あの短剣に、なにをしたんです?」「マークに渡した浄化の矢で、状況が変わったからな。なら効果の大きなスタルーンに、込められるだけ術を込めれば、多少は効くかと思ったんだ」 黒い塊が、捕らえていた
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8-1

 全員の顔を確認したところで、ジュリアンは改めて皆の顔を見回す。「では、オクタクルの影響が残っていないかどうか、一度確かめてから撤収しようか」「わかりました」「ああ、アル。おまえはそこで服を乾かしてから来いよ」 クリスが言った。「なんで?」「大活躍しましたしね。調査は私たちに任せてくれて大丈夫ですよ」 歩き出し掛けていたマークが、振り返って言う。 一緒に振り向いていたカイルも、無言で頷いた。「そうだな、アルは大活躍だった」 ふふっと、ジュリアンが笑う。「確認作業ぐらい、任せろって」 アルとジュリアンを残して、三人は走り出す。 なんだか、仲間外れにされたような気がする。「なんなんですかね、あいつら」 そんなことを言いながらジュリアンに向き直ったアルは、ギョッとする。「イアン様?!」「ああ、済まない。少々、無理をしすぎたようだ」 ジュリアンは、そこに座り込んでいた。「魔力切れですか?」「そうだね。……だが、オクタクルが消えた所為か、空気が軽いし、心配するほどのことでもないよ」「いえ、よくありません!」 アルはそこにジュリアンを残し、三人の後を追う。「クリス!」「どうした? 休んでいろと言っただろう?」「イアン様が魔力切れを起こしている。先に館に帰らせたい」「えっ?」 ジュリアンの名が出たところで、マークとカイルもジュリアンを見た。「分かった。じゃあ泉の調査は後で報告書を上げる。おまえはイアン様に付き添って、一緒に戻れ」「分かった」 アルはジュリアンのところへ戻る。「断ってきましたから、先に戻って体を休めましょう」「いや、大丈夫だよ?」「だめです」 アルは身体強化をすると、ジュリアンの体をひょいと抱き上げる。「おい、よせっ」「いえ。
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8-2

 館に戻り、アルはジュリアンをベッドに寝かせた。 横にされたジュリアンは、ぎりぎりまでブツブツと文句を言っていたが、アルが温かいお茶を淹れて部屋に戻った時には、既に寝息を立てていた。──やっぱり、すごく消耗されていたんだな。 そっと部屋を出て、眠らせておくことにした。 しばらくすると、山からクリスたちが戻ってきた。「ご苦労。異常は?」「なかった。アレで完全にカタが付いたと思うぞ」 執務室に集まり、報告をし合う。「ジュリアン様は?」「眠っている。平気だと言っていたが、やはり疲れていたんだろう。なにか、報告が?」 マークは、ちらとカイルを見やった。 頷いて、カイルが口を開く。「アルフォンス様。今更ですが、あの戦いの中で負傷……されましたよね?」「え? ……ああ、うん……。かすり傷程度だが、した……と思う」 なぜ今、このタイミングで? と不審顔のアルに、カイルは自分の腕を出して見せる。「ここ、袖が切れているでしょう?」「そうだな」「でも、傷がないんです」「……え?」「俺もだ」 クリスは脇腹を、マークは足を、それぞれ見せる。「アルフォンス様も……?」 言われてみれば、体に痛みがない。 それどころか、あの戦闘のあとで、泉から領主館まで身体強化を使ったまま、ジュリアンを抱いて降りてきても、ほとんど疲労も感じていない。「どういうことだ?」「泉を調べている間に、あの周辺の木々が緑を取り戻してきてな。俺たちも気が付いたんだ」「シンフィールド子爵はあの泉を〝奇跡〟と断言しました。その伝承通りに癒やしの効果があった……と判断すべきではないかと」「なるほど」 自分の疲労感を考えると、カイルの話には説得力があ
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8-3

 夜、アルは桶に湯を持ってジュリアンの部屋を訪れた。「失礼します」「ん……? ああ、すまん、私、すっかり寝入ってしまっていたようだね」「魔力切れは、体力も消耗しますから」 ベッドに起き上がったジュリアンに、アルはまずお茶を渡す。「どうぞ」「ああ、ありがとう」 ゆっくりとお茶を飲み下し、ジュリアンはやっと力が抜けたように息を吐く。「皆は、もう戻った?」「はい。カイルは、泉の〝奇跡〟も戻ったと確信しているようですよ」「うーん、それはどうかなぁ? とりあえず、オクタクルの始末はついたけど……」「クリスが言うには、周囲の木々も色を取り戻したと」「本当に?」「瘴気の元も絶てたことですし、土地の再生も望めるかと思います」「それは、村の人が喜ぶな」 嬉しそうに微笑むジュリアンに、ふと、オクタクルとの戦いの最中の指揮していた姿を思い返す。 弩を構えたジュリアンの、きりとした凛々しい姿は、幼少の頃に訓練場で指導していた時と何も変わっていないと感じる。「イアン様」 ジュリアンが飲み干したカップをテーブルに置き、アルは湯に浸したタオルを絞った。 それに気付いたジュリアンは、着ていた夜着をするりと脱ぐ。「あの時、俺の名を呼びましたよね?」「……あの時?」 硬く絞ったタオルで背中を拭く。「黒い霧に包まれた時に、聞こえました。私のアルフォンス……と」「え……?」 それまで何の抵抗もなく体を晒していたジュリアンが、不意にぎこちなく振り返った。「私が……なに?」「私のアルフォンス……です。イアン様」「いつ?」「俺が、黒い霧に呑まれた時に。あなたが言ったんですよ?」 ジュリアンは、まるで視線を
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8-4

 アルの舌が、ぺろりとジュリアンの唇を舐めた。──熱い……。 それはアルの舌の温度なのか、触れられた場所に感じた感覚なのか、分からなかった。──私は、本当に〝私のアルフォンス〟などと言ったのか? アルの手が体を抱き、首筋や鎖骨にキスが落とされる。 その一つ一つが、体に火を付ける儀式のように思えた。──ああ……、蕩けそうだ……。 アルの手が下履きに掛かっても、ジュリアンはそれを止めなかった。──止める必要など、ありはしない。自分の体が、これを求めているのだから。 膝に掛かった手に促されるままに、ジュリアンは足を開く。「あっ……、よしなさいっ!」 アルの顔が自分の股間に迫った時に、思わずジュリアンは制止の声を上げた。「嫌ですか?」「そんな穢れた場所に、触れてはだめだ」「だめ……は、聞きません」 そう答えて、アルは握っていたそれを口に含む。「だめだ……っ! よせっ!」 アルの口腔内に迎え入れられたそこは、歓喜するようにすぐにも堅く勃ちあがる。 油薬を載せた指先が後ろも探り、ジュリアンの熱を煽り立てた。「ああっ! だめ……だ……」 つま先が丸まり、膝が震える。 下腹がひくついて、追い立てられた熱が解放を求めて集まるのがわかった。「アルっ! 離せっ!」 先端を強く吸われて、ジュリアンはあっけなく熱を放つ。「ば……か……。なぜ、離さなかったんだ!」 ジュリアンの目の前で、アルはその熱をごくりと飲み込んだ。「あなた、自分の時には狼狽えるんですね?」「なに?」「俺が〝やめてください〟と言っ
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9-1

 領主館の裏の山に、ローデンフェルの伝説に残る〝奇跡の泉〟が発見された話は、マークによって早々に村に伝えられた。 村長をはじめ、村の住人は、そこから領主館に水を引くことに賛成の意を示し── それどころか、数少ない村の労働力を、その土木工事の手伝いに寄越したいとまで、申し出てきた。「そもそも、領主館に水を引く必要はないだろう? 井戸もあるんだし」 集まった村人を前に、ジュリアンが言った。「いいえ! 領主様。村に伝わる泉の話には、古傷も癒えたという話もございます」「私の傷より、きみたちの生活の基盤を整えるのが先だろう?」「ぜひとも、ローデンフェルの救世主たる領主様に使っていただきとうございます」「救世主とか、やめなさい。私は義務を果たしているだけだから」 そう言って聞かせるジュリアンに、集まった村人たちは一様に首を横に振る。「今は、芋が育ち、私たちが飢える心配もございません。まずは領主館に水を引くことが先です」「ならば、もっと村に近い場所に水場を設けた方が良いのでは?」「貴重な奇跡の泉の水を、泥棒に奪われては困ります。水の管理は領主様にしていただきたく」 そこまで言われては、ジュリアンにもう言い返す言葉は出なかった。「分かった。領主館で管理がきちんと出来る、公共の水施設を作ろう」 その場にいた者たちが、わあっと歓声を上げる。「全く、きみたちには敵わないよ……」 こうなることを予想していたように、マークは満足げに頷き、カイルが嬉しそうにニコニコしていた。
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9-2

 結局、泉からの水路の建設は、かなり大掛かりな公共工事として扱うことに決まった。「こちらが、予定の図面です」 カイルが広げた紙面には、泉からの水路の他に放置になっている開墾地を利用した大掛かりな施設の図面が書かれている。「こっちは、なんだい?」「奇跡の泉ですし、もともと地熱を含んだぬるま湯なので、いっそ公共浴場として利用したほうが良いと思いまして」「そうか。泉に落ちたきみたちの傷や魔力が癒えたのだから、そう使うのが本来の使い道……というわけか。……しかし、これかなり大掛かりなものになるが、私の私財はさほどの蓄えがないのに、どうするんだい?」「王都にお戻りになったクリストファー様が、投資を集めてくださってます。現在名乗りを上げてくださっているのは、クリストファー様のご実家マグワイア男爵家と、アルフォンス様のご実家フェルトン子爵家です」「投資と言えるほど、儲かる事業になるかなぁ? 二人が無茶を言ったんじゃないの?」「そもそお、お二方は家督を継がない立場ですし。説得に行かれたのはクリストファー様ですから。今回は、相続人の資格があるのだから、その分を前払いでとお願いしたようです」「え……、ええ〜? そんな無茶を……」「無茶ではありません。ある程度の資金の回収と、収入源としての目処が立たねば意味がありませんから」「待ちなさい。領民にそんな高額な利用料を請求しちゃ駄目だよ?」「領民の利用は、基本無料です。浴場としての体裁が整ったところで、第三騎士団に話をします」「第三に? ああ……、だが怪我が多いのも第三か……。しかし、上層部に話をせずに、いきなり第三に持っていくのはどうなんだ?」「公的に誘致するつもりがないので、上層部に話を通すつもりはありません」「なぜ?」「現在の資金から考えますと、あくまで平民が使う公共浴場程度の規模の施設しか作れません。そこに第一の騎士や貴族などが来れば、トラブルになります」
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9-3

 夕食を終えたあと、ジュリアンは居間で報告書を読んでいた。「イアン様」「どうしたの? 今日はもう、休んでいいと言ったと思うけど」 部屋に入ってきたアルに、ジュリアンが振り返る。「いえ。ちょっと付き合ってください」「なんだい?」 立ち上がるジュリアンに手を貸し、アルは部屋を出た。 廊下を通り、屋敷の裏へと案内されて、ジュリアンはびっくりする。「いつのまに、こんなの作ったの?」「進捗はお知らせしてましたよ」 木造のこじんまりとした建物は、中に少し広めの湯船と洗い場を備えていた。「どうぞ」「えっ? 私が使うのかい?」「当たり前でしょう。ここは、イアン様専用の風呂ですから」「少々、立派すぎるのでは?」 湯船には、適温の湯がたっぷりと張られている。 身を沈めると、縁から溢れて床を濡らした。「いかがですか?」 常にずくずくと傷んでた背中の痛みが、湯に溶け出していくような心地がする。 ふと目をやると、だらしなく下がっているだけの左腕が、水面にぷかりと浮いていた。 だがそれも、いつもは血の巡りが悪く冷え切っているのに、今は指先がジンジンするほど温かい。「存外に心地良い……。確かに、これは奇跡だな」 振り返ると、そこでアルは裾と袖を捲くりあげていた。「なんだ、脱いで一緒に入ったらどうだ?」「俺を相手に、そういう無防備を晒してはいけませんと、忠告したでしょう?」「はは……、むしろ今更だろう?」 ジュリアンは、わざとそういう物言いをした。 顔を赤らめたアルが、やけくそ気味に服を脱ぎ捨て、湯船に入ってくることも分かっている。 そして── そうしたら、ジュリアンの体を抱き寄せることも……。「また〝手伝ってやろうか〟とか、ふざけたことを言うつもりですか?」 アルの手が、顔にかか
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10-1

 ジュリアンは、公共浴場〝ローデン泉館〟の完成式典に出るために、馬車に乗っていた。 正直、領主館から公共浴場までは、さほど遠い距離でもないのだが。 領主としての格を守るために、馬車に乗れと言われてしまったのだ。「今日の式典、シンフィールド子爵もいらっしゃるとか?」「はい。子爵も投資をしてくださったので」 カイルの答えに、ジュリアンは複雑な顔をした。 シンフィールド子爵に投資の話を持ち込んだのは、クリスである。 クリスが王都に戻ったあと、子爵からジュリアンへ手紙が届き、投資を申し出てきたのだ。「まだ、先がどうなるかもわからない事業ですし……」 と答えたジュリアンに。「これは投資というより、泉を穢し、領民に苦労を強いた賠償と受け取ってほしい」 との返事をされてしまった。 こうなっては、断りようもない。「今日の式典、貴族用の施設じゃないのに、子爵がお見えになって大丈夫なんだろうな?」「もちろんです。マグワイア男爵家とフェルトン子爵家からも、代理の方が見えてますから」「むしろ、ますます胃が痛くなる話じゃないか……」 そもそもずっと〝貴族〟として扱われたことのないジュリアンは、マナーは仕込まれたが、実際に使う機会はほとんどなかった。 そんなハリボテの上っ面が、いつ剥げ落ちるかと常にヒヤヒヤしている。「ジュリアン様は、きちんと対応出来ていますよ」「そういう割に、腹芸が出来ないとか言うよね、きみたち……」 ジュリアンの返しに、カイルはくすっと笑っただけだった。
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10-2

 馬車の扉が開くと、周囲から歓声が上がった。──ああ、夢のようだな……。 初めてローデンフェルの地を踏んだ日。 期待にざわめく領民たちの声が、ジュリアンの姿を見た瞬間にしんと静まり返った。 そうなることが分かっていても、なにも感じなかったわけではない。 それが、今は── 皆が笑顔で、ジュリアンを迎え入れてくれている。 それが、なんとも感慨深い。「ヴァレンティン準男爵殿」「シンフィールド子爵様! 申し訳ない、私が出迎えるべき立場なのに……」「いや。私が貴殿を出迎えたくて、先に来させてもらったのだ」 ステップを降りきったところで、アンソニーがジュリアンの手をグッと握る。「聞けば、泉にアンデッドが出たとか?」「奇跡の力の素晴らしさが、別の方向で証明されてしまいまして……」 そこで歩き始めたジュリアンを見て、アンソニーは驚き顔になった。「準男爵殿、杖はどうされました?」「あの泉の水を引いた風呂に浸かっていたら、少し楽になりました。未だ片足を引きずりますので、お見苦しくてすみません」「いや……、王都を救った英雄の体を癒せたのなら、こんなに嬉しいことはありません」 二人が並んで進むと、領民たちの間から自然と拍手が起きる。 建物へと続く道は、整地されて石畳になっていた。 そこをぎこちないながらも、ジュリアンは杖を使わずにゆっくりと進む。 警備に立っているアルが、なぜか誇らしげにこちらを見ている。 領民たちの間から「ご領主様が、杖を使わずに歩いていらっしゃる」と、囁く声が聞こえた。「あれは……アントン?」 その晴れがましい舞台に進む中、ふと人混みの整理をしている人物の顔を見て、ジュリアンは眉をひそめる。「……いや、あっちはコンラッド? それに、モーリスに、ピーターまで&he
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