Lahat ng Kabanata ng 愛人の死に耐えられなかった夫、お前が死ねばよかったのにと言い残し自死ー妻は回帰したー: Kabanata 61 - Kabanata 70

101 Kabanata

第61話

それから十分も経たずして、涼介が部屋にやって来た。由利は慌ててメイクをし、髪型を整えて服を着替えた。(……まるで兄さんに会うために気合いを入れているみたいだわ)瀬奈は鏡に映った自分を見つめながら、心の中で呟いた。しかし、やってしまった今後悔したところでどうしようもない。すっぴんで彼を出迎えるよりかはマシだろう。涼介は由利のそんな気持ちに気付くことなく、彼女の元へ歩いてきた。「由利、目が覚めたのか」「兄さん、心配をかけてしまったようね。兄さんが私をここまで運んでくれたと聞いたわ。ありが――」言い終わる前に、由利は涼介に抱きしめられた。すっぽりと、彼の腕に収まった。「に、兄さん……!?」「無事でよかった……」涼介の体は小刻みに震えていた。気のせいか、息遣いも荒くなっている。いつも毅然とした態度で、あまり人前で感情を露わにしない涼介のそのような姿は初めて見た。(涼介兄さん……そこまで私のことを……?)由利は誰も見ていないことを入念に確認し、彼の背中に腕を回した。涼介はともかく、由利は既婚者。このような行動はあまりよろしくない。(まぁ、ハグくらいならセーフよね!碧斗だって紫苑といつもしてるもんね!)紫苑は兄妹のスキンシップと称し、いきなり碧斗に抱き着くことがあった。それも由利や周囲の人々のいる目の前で。碧斗は拒絶するどころか、鼻の下を伸ばしてそれを受け入れていた。まぁ、あの二人は裏でそういう関係にあるのだから、今さらハグくらい何とも思っていないに違いない。「兄さん、今日は私のためにわざわざ来てくれてありがとう。見ての通り、もう体は平気よ」「それでもしばらくは安静にするべきだ。数日間は仕事を休んだらどうだ?」「そうねぇ……そうするべきでしょうけど……」由利は悩んだ。昔から彼女が三十八度の熱を出しても学校に行けと言ってきたような両親だ。そのくらいで休むだなんて甘えすぎだと言われてしまう可能性が高いだろう。(休みたいのはやまやまだけれど……面倒なことになりそうね……)言わずともその気持ちが伝わったのか、涼介が口を開いた。「言いづらいなら、俺が君のご両親に頼もうか?」「兄さん……?」突然の提案に、由利は驚いて彼を見上げた。「あの人たちも、俺からの頼みなら無下にはできないはずだ。しばらくはゆっくり休んだ方がいい」彼の言う通り、涼介が
Magbasa pa

第62話

碧斗はズカズカと大股で歩いてくると、涼介と由利を引きはがした。碧斗に押された涼介は、数歩後ろに下がった。そのせいで、由利との間にかなりの距離ができてしまった。「……お前」「兄貴、由利に何をしているんだ!」碧斗は涼介に向かって怒鳴り声を上げた。二人の間に割り込み、まるで由利を守るようにして涼介の前に立ちはだかっている。「何をしているだなんて……まるで俺と由利が不倫しているかのような言い方だな」「ふ、不倫だと!?」その言葉に、碧斗は見るからに動揺した。二人はそういう関係なのかと、疑うように由利と涼介を交互に見た。(何をそんなに狼狽えているのよ、あなたと紫苑がいつもしていることでしょう?)自分は堂々と不倫をしておいて、されるのは気に食わないのか。傲慢で、自分勝手にもほどがある。そう思っていたのは由利だけではないようで、涼介も眉をひそめて碧斗を見つめていた。碧斗は由利の両肩を掴んで揺さぶった。「不倫だなんて……由利、兄さんとそういう関係なのか?」「何を言っているの、そんなわけないでしょう」その返答に彼は安心したような表情になったものの、一度抱いた疑念はそう簡単には拭えなかったようだ。碧斗は由利の肩を掴んだまま、彼女を厳しい口調で問い質した。「なら……この部屋で一体何をしていたんだ?さっきは何故あんなにも近くにいたんだ?」「碧斗……」彼の言いたいことはわかる。由利が既婚者である以上、別の男と二人で寝室にいるのは良くないと、そう言いたいのだろう。しかし、当事者である碧斗は紫苑とそれを何度もやっている。自分の行動は棚に上げて人を批判するとは、何ともおめでたい頭をしている。「何もしていないわ。ただちょっとお礼を言っていただけよ」「お礼?」「ええ、倒れた私をここまで運んでくれたのは涼介兄さんだから」由利は遠回しに、あなたは何の役にも立っていないのよと碧斗に伝えた。その意図が伝わったのか、碧斗はショックを受けたように俯いた。彼はプルプル体を小刻みに震わせながら、言葉を紡いだ。「……本当にそれだけか?」「何が言いたいの?」呆れたように聞き返した由利の肩を、碧斗が強く揺さぶった。額が合わさるほどの距離で、彼が声を荒らげた。「――この部屋で兄貴としていたのは、話だけか!?」「…………碧斗?」碧斗は弱々しく、情けない声で呟いた。「本当は
Magbasa pa

第63話

碧斗が出て行ったあと、涼介は由利に声をかけた。「由利、碧斗はいつもあんな感じなのか?」「え?えぇ、そうね……紫苑と一緒に過ごす時間が多いのはいつものことよ。だからいちいち気にしちゃいない。あの二人はいくら言っても変わらないから……」「そうか……」最後の一言は、諦念に近かった。由利は碧斗に変わってほしい、紫苑よりも自分を見てほしいと願ったことが何度かあった。しかし、それらは全て抱くだけ無駄なものだということを、今は知っている。「私が何を願おうが、意味が無いの……碧斗と紫苑はいつも二人だけの世界にいて……そこに私が入り込む隙なんて無いのよ。昔からずっとそうだったわ」「……」三度の生を経験した彼女は、身をもってそのことを学んだのだ。いつからか、それが当たり前だとさえ思うようになった。暗い表情の由利の手を、涼介がギュッと握った。「――由利、アイツに何か言われたら何でも俺に言ってくれ」「涼介兄さん……?」顔を上げると、真剣な眼差しの彼と目が合った。涼介が握る手に力を込め、強く言い聞かせるように言葉を続けた。「――俺はいつでも、お前の味方だから」そう言い残し、涼介は部屋から立ち去って行った。***その日の夜、由利は家族揃っての夕食に参加していた。正面には両親が座り、横に碧斗、そして右斜め前には紫苑が座っている。家族に囲まれての食事は、由利にとっては非常に窮屈な時間だった。紫苑が嬉しそうに由利に声をかけた。「姉さんが目覚めたようでよかったわ。私、ずっと心配していて夜も眠れなかったのよ」「……心配かけてしまったようでごめんなさいね。もう平気だから」「そう?ならよかったわ」紫苑が愛らしく微笑んだ。両親は目覚めた由利に対して言葉をかけることもなく、ただ黙々と食事を続けている。(相変わらず冷たい人たちね、今さら気にもならないけれど)両親が由利に対して異様なほど冷たいのは、昔からのことだ。しかし、今さら紫苑のように心配されたいとも思わない。「紫苑は大丈夫なのか?今日はずっと部屋にこもっていたと聞くが」「ええ、大したことは無いから心配しないで父さん」紫苑が軽く手を振りながら答えた。やはり、両親が気にかけるのはいつだって紫苑ただ一人なのだ。ここにいると、そのことを余計に思い知らされる。(早く食べ終えて部屋に戻ろう。ずっとここにいると気分が悪
Magbasa pa

第64話

新婚旅行とは、結婚して間もない夫婦が初めて二人で行く特別な旅行のことである。二人だけの特別な空間を楽しむという意味を持ち合わせており、いくら親族であろうと、そこに割り込む者などいてはならない。ましてや、義理の妹が新婚旅行に一緒に来たいだなんて。「紫苑……本気で言っているの?」「ええ、私が冗談なんて言うとでも?姉さんたち、海外に行くんでしょう?私は旅行なんてほとんど行ったことがないの。姉さんと義兄さんがいないゴールデンウィークなんて寂しいし……私も一緒に連れてってよ、姉さん」「……」紫苑は昔から、無邪気な顔で非常識なことを言っては由利を困らせていた。前世では二人きりで行ったはずの旅行に、面倒事ばかり起こす紫苑がついてくるだなんて、ハッキリ言って御免である。由利はやんわりと断りと入れようとした。「紫苑……新婚旅行は普通、夫妻が二人だけで行くものなのよ」「そんなこと知っているわ。だけど、妹がついて行っちゃいけないなんて決まりはないでしょう?」だから私を連れて行ってよ、と紫苑は気さくに笑った。碧斗は何も言わずに紫苑を見つめ、由利もすぐには答えを出せなかった。来てほしくない、という彼女の視線は紫苑には伝わっていないようだ。紫苑は期待に満ちた眼差しで、由利を見つめている。そんな状況に痺れを切らしたのか、母親が姉妹の会話に割り込んだ。「……あなたはたった一人の妹の頼みも聞いてあげられないのかしら?」「……母さん」母親の責めるような目が、由利を鋭く射抜いた。母親が由利を責めるのはいつものことだったが、今回ばかりは彼女もすぐに受け入れるわけにはいかなかった。「母さん、父さんも。考えてみてください。紫苑は体が弱いんですよ?旅先で何かあったら大変ではありませんか?それでも紫苑を旅行に行かせるというのですか?」「……その心配は尽きないけれど、紫苑が望んでいるのなら、そうさせてあげるべきでしょう」「本気で言っているのですか……?」普段は外へ出るだけでも心配するくせに、こういうときは反対しないだなんて。(自分たちで連れて行くってなったら嫌がるでしょうに。私たちにはここぞとばかりにその役割を押し付けるわけ?)横にいた父親も、母親の言葉に賛成の意を示した。「そうだな、紫苑もいつも家にいてばかりでは暇を持て余すだろう。海外へ行くことはきっと良い経験になるは
Magbasa pa

第65話

碧斗と二人だけの新婚旅行に紫苑が来るとなってからというもの、由利は浮かない気持ちを隠しきれずにいた。別に彼と二人きりで旅行に行きたかったというわけではない。ただ、紫苑が一緒に来るのが憂鬱なだけだ。「航空券の予約は済ませておいた。紫苑の分もな」「あら、本当!?ありがとう、義兄さん!今からとっても楽しみだわ!」旅行の一週間前になり、紫苑はワクワクを抑えきれないという様子ではしゃいだ。旅先のガイドブックを眺めていた彼女が、碧斗に声をかけた。「義兄さん、私ここに行きたいわ!」「……行く予定は無かったが、紫苑が望むならそうしよう」碧斗は断る素振りも見せずに、すぐにそう答えた。結局、彼もまた由利よりも紫苑が大切なのだ。彼女が旅行に来るという時点で、由利の意見など重要ではなくなっていた。彼女を置き去りに、二人だけで話は進んでいく。「――ねぇ、姉さんはどこか行きたいところはないの?」ふと、紫苑が正面に座っていた由利に声をかけた。彼女は突然話しかけられたことに驚いた。(……今になって、私を気遣っているつもり?)由利は考え込んだあとに、口を開いた。「私は……特には無いわ。碧斗と紫苑が決めたところで」「ふーん……そう」本当は無いことは無かったが、それを言ったところでどうにもならないことを由利はよく知っていた。どのみち紫苑が行きたくないと言えば、あっさりと行かないということで決まってしまうのだから。今回もそのようになると思い、あえて何も意見を出さなかった。二人ともその方が楽で満足すると思ったが、どうやら紫苑は違うようだった。彼女は呆れたように前に座る姉を見つめていた。「――姉さんって、昔から自分の意思何も無いのね」「……」「ねぇ、義兄さんもそう思わない?」紫苑は横に座っていた碧斗に同調を求めた。彼は困る様子を見せながらも、紫苑がいる手前頷いた。碧斗を味方に付けたと思って調子に乗ったのか、紫苑はさらに心無い言葉を浴びせた。「姉さんがそんなんだから、父さんと母さんも優しくできないのよ。姉さんは昔から冷たいし、自分の意思をきちんと伝えないんだもの」「……ッ」一体誰のせいで、そうなったと思っているんだ。由利は思わず反論しそうになった。(私がいつも自分の意思を言わないのは、全てあなたが……!)という言葉は、彼女の心の中に留められたままだった。紫苑に
Magbasa pa

第66話

数日後、由利は紫苑と共にゴールデンウィークの旅行に向けての準備をしていた。「姉さん、この服似合っているかしら?」「ええ、とっても素敵よ紫苑」紫苑が由利の前で着てみせたのは、リゾート用の白いワンピースだった。全体を上品なレースであしらった可愛らしいワンピースは、紫苑にピッタリだった。たしか最近、碧斗に買ってもらったものだったはずだ。「そうだ、せっかくだからハイビスカスの花も着けたいわよね!」「あなたの好きなようにしなさい」由利はまだ紫苑が旅行についてくることを受け入れられたわけではなかったが、既に決まってしまったので仕方が無い。航空券やホテルも予約してしまっている今、覆すことなどできるわけがなかった。浮かない顔の由利とは対照的に、紫苑は目に見えてはしゃいでいた。普段あまり家から出られない彼女にとって、こんなにも遠くへ行くのはかなり珍しいことだった。「久しぶりの旅行だもの……気合い入れないと!」「そうね、何かあったら碧斗が守ってくれるわ。困ったら何でもあの人に言うのよ」彼が許可したのだから、紫苑の世話は碧斗がしなければならない。由利は旅先で紫苑のことを彼に押し付けるつもりだった。ハッキリ言って、そのことに対する負い目は全くない。(どうせ紫苑に何かあったら絶望して自決しちゃうくらいなんだから……)そういう風になるくらいなら、最初から自分の手で守り抜けばいい。由利の言葉に、紫苑は照れ臭そうに笑った。やっぱり彼女は碧斗のことが好きなのだろう。由利の彼への気持ちが無くなった今、妹の恋をむしろ応援してあげたいくらいだった。そのとき、服を選んでいた紫苑が、ふと由利に声をかけた。「ところで、姉さんは準備は終わったの?さっきからスマホばかりいじっているけれど」「……私?」そこで由利は、既にまとめた自身の荷物に目を向けた。紫苑よりかは旅行慣れしている由利は、早いうちから準備を終えてしまっていた。「もう終わったわ」そう答えると、紫苑は興味津々な様子で身を乗り出した。「へぇ、姉さんはどんな服を持って行くの?」「別にいつもと変わらないわ」由利は紫苑の前でスーツケースの中を開いた。丁寧に畳まれた服や、化粧品などが入っている。その中で、見覚えのないあるものに紫苑は注目した。「あら、姉さんそのネックレスは何?」「あぁ、これは……」涼介から貰ったも
Magbasa pa

第67話

いつものほほんとしているだけだった紫苑が、今日に限ってやけに鋭い。由利は内心焦っていたが、何とか平然を装って答えた。「……もう私もいい大人でしょう?一つくらいは、そういうのを持っておきたかったのよ」「へぇ、そうだったのね。姉さんが自分でそんなものを買うとは驚きだわ」由利は普通の女性が好むようなハイブランドのジュエリーに興味が無く、これまで自分で買ったことは一度も無い。そのため、紫苑の言っていることは的を得ていた。彼女がそこまで自分のことを見ていたのは意外だったが。由利は何とかネックレスから話題を変えようと、口を開いた。「それにしても、紫苑は私のことをよく知っているのね。驚いたわ」「当たり前でしょう?何年一緒にいると思ってるのよ。私ほど姉さんを知っている人は他にいないわ。父さんと母さんよりも詳しい自信があるのよ?」「父さんと母さんよりも……そうね、その通りだわ」両親は由利に興味なんてない。好きの反対は無関心というのは本当で、彼らは昔から由利に関心を寄せたことが無かった。唯一寄せられるときがあるとすれば、それはいつも紫苑に関すること。そのような環境で育ったせいか、由利は我儘を言う紫苑が愛しいと思っていた時期があった。彼女だけは私を必要としてくれる、彼女の前でだけは存在価値を見出せる、と本気でそう思っていたのだ。今思えば、全てが最初から歪んでいた。暗くなった表情の由利を、紫苑が正面から覗き込んだ。「そういえば、姉さんと碧斗義兄さんと三人で旅行に行くのは初めてじゃない?」「ええ、たしかにそうね……」三人だけでの旅行など、前世を含めても経験したことがなかった。不安が無いと言えば嘘になるが、碧斗がついているのだ。彼が紫苑を守っていれば何とかなるだろうと、今はある程度受け入れられている。そのとき、紫苑が両手を広げて由利を抱きしめた。「姉さん、前に姉さんとずっと一緒にいたいって言ったでしょう?あれは嘘偽りのない私の本当の気持ちよ」「……そう」紫苑の願いは、由利とは対照的なものだった。彼女の今の望みは紫苑たちのいない世界へ行くことだったからだ。紫苑は由利を抱きしめたまま、耳元で囁いた。「ねぇ、姉さん――だから、大人しくしていてくれないかしら?」「……何を」抱きしめられているため、顔は見えない。しかし、気のせいかその声は異様なほど低かった
Magbasa pa

第68話

時は流れ、いよいよ旅行の日となった。由利と碧斗、そして紫苑の三人はそれぞれスーツケースを手に持ち、家を出た。「母さん、行ってくるわね」「ええ、いってらっしゃい」玄関の前で、母親が紫苑をギュッと抱きしめた。たかが数日間の旅行だというのに、まるで一年間の留学に行くかのような見送りの仕方だ。「由利、碧斗君。紫苑を頼んだわよ」「はい、お義母さん」碧斗は即座に答えたが、由利はあえて返事をしなかった。無視されたと思ったのか、母親が由利を見て眉をひそめた。彼女はそんな母親を気にすることなく、スーツケースを引いて車に乗り込んだ。母親に挨拶すらしない。相手もされたところで別に嬉しくも何ともないだろう。続けて碧斗と紫苑も車に乗り、そのまま空港まで向かった。運転手を務めるのは、夏目家に長く仕える由利より少し年上の男性だ。「よろしくお願いします」助手席に座った由利が声をかけると、彼は驚いたように目を見開いた。この邸には働いている者に日頃の礼をいちいち言う人間なんていないから、そのような反応になるのも当然かもしれない。運転手の彼は嬉しそうに笑うと、こちらこそと小さく言葉を返した。後部座席にはいつも通り紫苑と碧斗が並んで座った。紫苑は碧斗の腕に絡みつきながら、キャッキャッとはしゃいだ。「義兄さん、とっても楽しみだわ。義兄さんと旅行ができるなんて夢みたい、私とっても幸せよ」「あ、ああ……そうだな、俺もだ……」由利はそんな仲睦まじい二人を、ルームミラー越しに見ていた。そのとき、ほんの一瞬だけ碧斗に固定されていた紫苑の視線が、由利の方に向けられた。「……」紫苑と視線が合い、二人はしばらくミラー越しに見つめ合った。先に目を逸らしたのは、紫苑の方だった。彼女はそのまま再び碧斗にしがみついた。(……一体何がしたいのかしら?昨日の発言も気になるし……)結局、紫苑の口からその真意を聞くことは永遠にできなさそうだった。***車で数十分、由利たちは空港に到着した。車から降りて中に入ると、空港内はスーツケースを持った人々でごった返していた。「わぁ、やっぱり人が多いわね……」ゴールデンウィークということもあり、空港はなかなかに混雑していた。みんな長期休みのこの時期に、家族旅行に行っているのだろう。人で溢れかえる空港内にて、横にいた紫苑が興奮を抑えきれない様子で由利に声
Magbasa pa

第69話

それからしばらく経ち、チェックインまで残り僅かになったとき。由利と碧斗は二人して空港内を走り回っていた。大の大人が公共の場で走り回るなど、正気の沙汰ではない。しかし、今はそんなことを気にしている場合ではなかった。由利は走りながらも、横にいる碧斗を責め立てた。こうなったすべての原因は、由利ではなく彼にあった。「――ったく、碧斗ったら、何してるのよ!チェックインまでもう時間が無いっていうのに!」「す、すまない……だけど、目を離した隙に紫苑がどこかへ行ってしまって……!」そう、紫苑がいなくなってしまったのだ。碧斗と紫苑は一度由利と別れ、二人きりで空港内を散策していたはずだった。疲れていた由利は空港にあるベンチで休憩し、二人について行くことはなかった。数十分後、碧斗は血相を変えて由利の元へ戻ってきた。紫苑がいなくなった、と信じられないことを口にして。しかも、自分のカバンを碧斗に持たせた状態だったので電話をかけることもできなかった。それから由利と碧斗の二人は、必死の思いで紫苑を捜索していた。(碧斗がいれば大丈夫だと思っていたのに……とんだ誤算だったわ)こんなことになるのなら、最初から私もついて行けばよかった。そうすれば、紫苑とはぐれることなんて無かったのに。今さら後悔したところで、あまりにも遅すぎた。由利たちが飛び立つ予定の空港はかなりの広さだ。迷子を一人探すのにも苦労してしまう。はぐれたのが由利や碧斗であればまだしも、紫苑というのが問題だった。(マズいわね……あの子、どう考えても一人でチェックインなんてできないし)紫苑は昔から何でも一人でできた試しがなく、いつも由利のあとをついて歩いているような子だった。いくら大人になったとはいえ、初めての飛行機で自力でチェックインは難しいだろう。もし、このまま見つからなければ……最悪の事態が彼女の頭をよぎった。「碧斗、私たちはそれぞれ一人でも飛行機に乗れるでしょう?お互い別の場所を探しましょう」「ああ、そうだな……なら俺は、あっちの方を探してみるよ」「なら私は反対側を。見つけたら連絡してちょうだい」碧斗は黙ったまま頷き、由利とは逆方向に走り出した。彼女はしばらく近辺を探したあと、傍にあった案内図をじっと見つめた。(紫苑はどこに行ったのかしら……)由利たちが今いる空港はターミナルが三つあり、地下は三
Magbasa pa

第70話

由利はゆっくりと、紫苑に近付いた。彼女はニコニコ笑みを浮かべながら、由利を見つめていた。チェックインまであまり時間が無いというのに、どうしてそうも呑気でいられるのだろうか。由利は紫苑の肩を両手で掴んだ。「紫苑……心配したのよ」「あら、そう?姉さんに心配してもらえるだなんて、嬉しいわ」「何を言っているのよ……」余計に意味がわからない。こんな大事なときに迷子になっておいて、何故慌てる素振りもなくのほほんとしていられるのか。紫苑ならただ単に事の重大さを理解していないだけという可能性もあったが、そこには何か別の意味が含まれているような気がした。「紫苑、どうして碧斗から離れたりしたの?私たちがどれだけあなたを探したか」「どうして義兄さんから離れたか……?それはね……」紫苑は由利に一歩近づくと、背の高い彼女を見上げながら囁いた。「――姉さんに、いなくなった私のことを見つけてほしかったのよ」「…………何ですって?」背筋が凍った由利に対し、紫苑は赤い唇を歪ませた。由利を嘲笑っているかのような不気味な笑み。――あなたは永遠に私から逃れることなどできないのよ。まるで彼女がそう言っているかのようだった。そこで紫苑は、すぐ傍にある一軒のお店に視線を向けた。「姉さん……子供の頃を覚えてる?私がいなくなったときのこと……あのときもちょうど、あそこにアイスクリーム屋さんがあったわよね……」「……」紫苑が由利を待っていたのは、空港内にあるアイス屋のすぐ前だった。由利はフロアマップの中にアイスクリーム屋を見つけたことでもしかしたらと思い、ここまでやって来たのだ。彼女の予感は的中。紫苑はアイス屋の前で由利が来るのを待っていた。由利と紫苑。どちらも考えていることは同じだったのである。(……やっぱり、紫苑もあのときのことを思い浮かべていたのね)―――十年以上前、まだ二人が幼い頃。由利は紫苑を連れて、外で遊んでいた。この頃から病弱だった紫苑は、外に一人で遊びに行くのを両親から許可されていなかった。そのため、彼女が遊びたいと言ったときには由利はどのような用事があろうと絶対について行かなければならなかった。今思えばとんでもないルールだったが、当時の由利はそのことを特に不満には思っていなかった。いつものように紫苑を公園へ連れて行き、二人で楽しく遊んだ。しかし、公園か
Magbasa pa
PREV
1
...
56789
...
11
I-scan ang code para mabasa sa App
DMCA.com Protection Status