それから十分も経たずして、涼介が部屋にやって来た。由利は慌ててメイクをし、髪型を整えて服を着替えた。(……まるで兄さんに会うために気合いを入れているみたいだわ)瀬奈は鏡に映った自分を見つめながら、心の中で呟いた。しかし、やってしまった今後悔したところでどうしようもない。すっぴんで彼を出迎えるよりかはマシだろう。涼介は由利のそんな気持ちに気付くことなく、彼女の元へ歩いてきた。「由利、目が覚めたのか」「兄さん、心配をかけてしまったようね。兄さんが私をここまで運んでくれたと聞いたわ。ありが――」言い終わる前に、由利は涼介に抱きしめられた。すっぽりと、彼の腕に収まった。「に、兄さん……!?」「無事でよかった……」涼介の体は小刻みに震えていた。気のせいか、息遣いも荒くなっている。いつも毅然とした態度で、あまり人前で感情を露わにしない涼介のそのような姿は初めて見た。(涼介兄さん……そこまで私のことを……?)由利は誰も見ていないことを入念に確認し、彼の背中に腕を回した。涼介はともかく、由利は既婚者。このような行動はあまりよろしくない。(まぁ、ハグくらいならセーフよね!碧斗だって紫苑といつもしてるもんね!)紫苑は兄妹のスキンシップと称し、いきなり碧斗に抱き着くことがあった。それも由利や周囲の人々のいる目の前で。碧斗は拒絶するどころか、鼻の下を伸ばしてそれを受け入れていた。まぁ、あの二人は裏でそういう関係にあるのだから、今さらハグくらい何とも思っていないに違いない。「兄さん、今日は私のためにわざわざ来てくれてありがとう。見ての通り、もう体は平気よ」「それでもしばらくは安静にするべきだ。数日間は仕事を休んだらどうだ?」「そうねぇ……そうするべきでしょうけど……」由利は悩んだ。昔から彼女が三十八度の熱を出しても学校に行けと言ってきたような両親だ。そのくらいで休むだなんて甘えすぎだと言われてしまう可能性が高いだろう。(休みたいのはやまやまだけれど……面倒なことになりそうね……)言わずともその気持ちが伝わったのか、涼介が口を開いた。「言いづらいなら、俺が君のご両親に頼もうか?」「兄さん……?」突然の提案に、由利は驚いて彼を見上げた。「あの人たちも、俺からの頼みなら無下にはできないはずだ。しばらくはゆっくり休んだ方がいい」彼の言う通り、涼介が
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