บททั้งหมดของ 御曹司の妻を辞めた日、私は社長になった〜久世家を出た元嫁は、格上エリートと人生を再建する: บทที่ 111 - บทที่ 120

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19.篠原という署名

美緒から連絡がなくなって、三週間が過ぎていた。鷹宮は、その日数を数えていたわけではない。次の相談日を決めていたわけでもない。理念を書き直したら見せてほしいと約束させたわけでもなかった。最後の面談で伝えたのは、次は、理念の欄だけ見ても構いません。ということだけだった。期限は置いていない。完成を求めてもいない。美緒が再び相談するかどうかも、美緒自身が決めることだった。だから、連絡がないこと自体は何もおかしくない。鷹宮はそう理解していた。理念の答えが出ていないのかもしれない。事業計画そのものを見直している可能性もある。起業という選択肢を考えた結果、やめると判断したのかもしれない。それなら、それでいい。事業を始めることが正解なのではない。選択肢を並べ、比較し、自分で選ぶ。鷹宮が美緒へ求めたのは、それだけだった。それでも、仕事の途中で思い出すことはあった。地方企業の事業計画書を読んでいるとき。創業理念という文字を見たとき。経営者が、地域に貢献する、顧客を笑顔にするといった抽象的な言葉を並べているとき。美緒なら、あの問いへどんな答えを出しただろう。そう考える。そのたびに、鷹宮はそこで思考を止めた。答えが出たなら、美緒が必要だと思ったときに連絡してくる。出なかったなら、それも一つの結果だ。こちらから、その後いかがですか。考えはまとまりましたか。と尋ねる必要はない。むしろ、尋ねない方がいい。鷹宮は、あの夜に自分で決めたことを覚えていた。私生活を尋ねない。久世家を批判しない。離婚を勧めない。個人的な連絡を増やさない。美緒の決断を先回りしない。自分を頼らせる関係を作ら
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20.電話の向こうの案件

午後四時を少し過ぎた頃、鷹宮は小野寺製菓の資料を開いていた。地方の老舗菓子メーカー。創業は五十年を超える。主力商品は焼き菓子と羊羹、それから季節限定の詰め合わせ。都市部の百貨店にも卸している。売上そのものが大きく落ちているわけではない。取引先もある。商品にも、一定の評価がある。それでも利益が残らない。数字を見る限り、問題は複数あった。百貨店手数料。包装資材。送料。季節商品の売れ残り。値引き販売。商品数の多さ。そして、長年続いている取引条件。鷹宮は商品別収支のページをめくった。売価。原価。粗利。そこまでは出ている。しかし、包装と物流を含めた後の数字がない。販売チャネルごとの採算も混ざっている。百貨店で売った場合。自社ECで売った場合。贈答用。自宅用。すべてが同じ商品売上として扱われていた。「これでは、売れている商品と残っている商品が分かりませんね」向かいにいた三崎が言った。「はい」鷹宮は別の資料を開いた。商品一覧。数が多い。定番商品。季節限定。百貨店向け。オンライン限定。地域イベント向け。小さな会社にしては、扱う種類が多すぎる。増やした経緯は想像できた。取引先から求められた。季節ごとに新商品を出した。売れた商品を残した。やめる理由がなかった。そうやって一つずつ増えてきたのだろう。「相談内容は、販路の見直しでしたよね」三崎が確認する。「表向きは」「表向き?」「EC
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21.画面越しの篠原代表

オンライン相談の開始時刻は、午後五時だった。鷹宮は十分前に会議用の画面を開き、共有されていた資料をもう一度確認していた。ファイル名は、小野寺製菓様 三か月試験支援 御見積書案。その下に、もう一つ。業務範囲案。送信者は、篠原美緒。小野寺製菓を紹介してから、美緒から直接連絡が来るまで、鷹宮は何も尋ねなかった。面談がどうだったのか。岳に何を言われたのか。工場へ行けたのか。契約の話まで進んだのか。聞こうと思えば、三崎を通じて確認することはできた。小野寺製菓へ連絡することも。紹介者として、様子を尋ねることも不自然ではない。それでも、しなかった。紹介した時点で、鷹宮の役割はいったん終わっている。そこから先は、小野寺製菓とリブランシュの間の話だった。そして今日。美緒自身から、契約範囲と見積金額について相談したい。という連絡が来た。つまり。少なくとも、話はそこまで進んだ。鷹宮が知っているのは、それだけだった。開始時刻になり、画面に接続通知が出る。鷹宮は入室を許可した。数秒後。画面の中央に、美緒の姿が映った。「こんばんは」美緒が少し頭を下げる。「本日はよろしくお願いいたします」鷹宮は、一瞬だけ返事が遅れた。「こちらこそ、よろしくお願いします」離婚後、美緒の姿を見るのは初めてだった。メール。電話。それだけだった。篠原美緒という名前は何度も見た。声でも聞いた。それでも、画面に映っている人間と新しい名前が結びつくまでに、ごく短い時間が必要だった。以前と大きく変わったわけではない。髪型も。表情も
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22.ここからが仕事です

美緒から連絡が来たのは、オンライン相談から五日後だった。午前九時を少し過ぎた頃、鷹宮は執務室で別案件の月次報告を確認していた。売上、粗利、在庫、資金繰り。前月との差異を追いながら、気になる箇所へコメントを入れていく。いつもの朝だった。画面右下に、新着メールの通知が出た。差出人は、篠原美緒。鷹宮の視線が止まる。オンライン相談を終えてから、こちらから連絡はしていない。見積書を作り直したのか、小野寺製菓へ提出したのか、業務範囲を先方が受け入れたのか。鷹宮は何一つ確認していなかった。相談の最後に伝えたのは、最終的な見積書は、篠原代表が決めてください。ということだけだった。その言葉どおり、決めるところから先は美緒の仕事だった。鷹宮は月次報告のファイルを保存してから、メールを開いた。件名は、小野寺製菓様との契約について。本文は短かった。鷹宮様小野寺製菓様との契約が成立し、本日、初回分の入金を確認しました。ご助言いただき、ありがとうございました。篠原美緒鷹宮は一度最後まで読み、もう一度最初へ戻った。契約が成立した。初回分の入金を確認した。最終的な契約金額は書かれていない。オンライン相談で見た見積書案から、いくらへ変更したのかも分からない。業務範囲をどこまで残したのか、小野寺製菓とどのような話をしたのか、契約書へどんな条件を書いたのかも書かれていなかった。だが、鷹宮にとって必要な情報は十分だった。小野寺製菓がリブランシュへ仕事を依頼し、その対価を支払った。その事実だけでいい。鷹宮は椅子へ背を預けた。以前、久世物産の会議室で、美緒は自分の仕事を、少し手伝っただけ。数字を整えただけ。そう呼んでいた。
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23.名前が先に届く

小野寺製菓との契約成立を知らせるメール以降、美緒から連絡はなかった。一週間。二週間。鷹宮は、こちらから進捗を尋ねなかった。三か月の試験支援が始まっていることは知っている。商品別の採算を確認し、EC導線を見直し、ギフトセットと販売テストを検討する。オンライン相談の時点で、美緒が予定していたのはそこまでだった。実際に何から着手したのかは知らない。小野寺製菓へ何度足を運んだのか。岳と意見が合っているのか。数字を見て、想定と違う問題が出てきたのか。何も聞いていなかった。気にならないわけではない。初めて受けた仕事だ。契約前には、価格をどこまで下げるべきか迷っていた。業務範囲も、最初は曖昧だった。仕事を受けたあとになって、頼まれたことを断れず、一人で抱え込んでいる可能性もある。連絡を一本入れることは簡単だった。その後、いかがですか。何か困っていることはありませんか。文章にすれば、それだけで済む。けれど、鷹宮は送らなかった。小野寺製菓と契約したのは、リブランシュだ。鷹宮ではない。美緒は部下でも、投資先の経営者でもない。契約の進捗を報告する義務もなかった。鷹宮が定期的に様子を尋ねれば、美緒は答えようとするだろう。そのうち、報告することが当然になるかもしれない。それは望んでいた関係ではなかった。必要なときに相談する。必要がなければ、自分で進める。そのために、最終判断を美緒へ返してきた。ならば、連絡がないことも受け入れるべきだった。午後、鷹宮は地方銀行の法人営業担当者とオンラインで話していた。議題は別の案件だった。地方食品会社の設備投資について、借入条件と今後の事業計画を確認する。三十分ほどで本題を終え、担当者が資
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24.相談される側

小野寺製菓の名前をきっかけに、リブランシュについて尋ねられることが増えた。最初は地方銀行の担当者だった。その次は、以前から付き合いのある食品卸の役員。さらに数日後には、別の地域企業の事業承継について相談を受けていた席で、「リブランシュの篠原さんという方、ご存じですか」と聞かれた。鷹宮は、そのたびに必要なことだけ答えた。「はい」「小野寺製菓の件を聞きまして」「そうですか」「商品を減らしたのに、利益は改善したそうですね」「私は実務には関わっていません」それ以上を説明しない。何を減らしたのか。どの数字を見直したのか。小野寺製菓とどのようなやり取りをしたのか。鷹宮自身が知らないことも多い。知っていることまで、美緒の代わりに説明する必要もなかった。話を聞きたいと言われれば、「篠原代表へ直接確認してください」と返した。紹介が必要な場合だけ、美緒の了承を取って連絡先をつなぐ。それ以上はしない。以前は、鷹宮が美緒の能力を説明していた。数字を整理できる。商品と販路をつなげられる。現場の情報を経営判断へ変えられる。事業者自身が説明できる資料を作れる。小野寺製菓を紹介したときには、それらを鷹宮が言葉にする必要があった。今は違う。相手の方から、「小野寺製菓の件を聞いた」と言ってくる。実績が、美緒の説明より先に届いていた。その変化を、鷹宮は正しいと思った。ある午後、三崎が数件のメールをまとめて持ってきた。「リブランシュ関係です」鷹宮は顔を上げた。「何件ですか」「こちらに来ているものだけで三件です」三崎がタブレットを机へ置く。一件目は地方の調味
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25.怖いです

鷹宮が返信したのは、メールを読んでから十分ほど後だった。今夜であれば、二十一時以降なら時間を取れます。電話でも、オンラインでも構いません。それだけを書いた。何がありましたか、とは尋ねなかった。急ぎですか、とも。美緒が「少し、お話しできますか」としか書かなかったのなら、今の段階で鷹宮が先に内容を決める必要はない。返信は、数分で届いた。オンラインでお願いできますか。二十一時で大丈夫です。鷹宮は了承だけ返した。午後の残りの仕事を終え、二十時半を過ぎた頃には執務室に人の気配も少なくなっていた。三崎は先に帰っている。窓の外には、夜の街の明かりが並んでいた。二十一時ちょうどに接続通知が届く。鷹宮が許可すると、画面に美緒が映った。「こんばんは」「こんばんは」以前のオンライン相談と同じように、背景には淡い色の壁が見える。小さな棚。机の端らしいもの。それ以上は分からない。鷹宮は、どこにいるのか尋ねなかった。美緒は仕事用と思われるブラウスを着ていたが、髪は昼間より少し崩れていた。化粧も薄い。疲れているようには見える。ただ、体調が悪いと断定できるほどではなかった。「お時間をいただいて、すみません」「構いません」美緒は一度、視線を下げた。画面の下に資料があるのかと思ったが、共有の通知は出ない。「今日は、資料を見ていただきたいわけではなくて」「はい」「少し、話を聞いていただきたくて」鷹宮は頷いた。その言葉だけで、普段の相談とは違うことが分かった。価格でも、契約範囲でも、顧客との条件でもない。美緒はすぐには続けなかった。何度か言葉を選ぶように唇を動かし、やがて小さく息を吐いた。
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26.鷹宮に聞かなくても

「怖いです」と美緒が口にした夜から、一週間ほど経った。その間、美緒から相談の連絡はなかった。鷹宮も、自分からは連絡しなかった。新しく受けた案件をどうするのか。小野寺製菓の支援は順調なのか。あの夜に話していた不安は、その後どうなったのか。気になることはあったが、確認する理由にはならない。怖いまま、確認してください。そう伝えたのは鷹宮自身だった。ならば、そのあと美緒がどう判断するのかまで見届けようとするのは違う。鷹宮は、いつもの業務へ戻っていた。地方企業の事業再生。新規投資案件の審査。既存投資先の月次確認。複数の資料を行き来しているうちに、一日は過ぎる。美緒の名前を見ない日もあった。それでも、リブランシュの名前を聞く機会は少しずつ増えていた。ある午後、三崎が執務室へ入ってきた。「篠原さんから、お電話です」鷹宮は手元の資料から顔を上げた。「直接?」「はい。おつなぎしてよろしいですか」「お願いします」数秒後、内線が切り替わる。「鷹宮です」『篠原です。お仕事中にすみません』以前なら、その名乗りにまだ微かな違和感があった。今はもう、篠原という姓と美緒の声が自然に結びついている。「大丈夫です。どうしましたか」『少し、確認しておきたいことがありまして』声は落ち着いていた。あの夜のような、不安を押し出す話し方ではない。鷹宮は椅子へ座り直した。「はい」『藤崎さんから、将来的にリブランシュの仕事を手伝えないかと相談を受けています』鷹宮は一瞬、返事を止めた。藤崎。久世物産でEC周辺を担当していた社員だった。KUZÉ ma vieの資料にも、藤崎が出した改善案は何度も使われて
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27.判断の軸

久世物産という名前を、仕事の相談として再び聞くことになるとは思っていなかった。連絡が来たのは、午後の会議を終えて執務室へ戻った直後だった。三崎が資料を置きながら、「篠原さんから、オンライン相談の希望が来ています」と言った。鷹宮は椅子へ座る前に足を止めた。「内容は?」「久世物産から、再建支援について相談があったそうです」鷹宮は何も言わなかった。三崎も、それ以上の意味を付け加えない。「明日の夕方で希望が来ています」「時間を空けてください」「分かりました」三崎が退出する。扉が閉まったあと、鷹宮はパソコンを開いた。美緒から届いたメールを確認する。鷹宮様久世物産から、事業再建について正式な相談がありました。受けるかどうかは自分で決めるつもりです。その前に、判断するときに何を確認すべきか、一度整理したく、ご相談できればと思っています。篠原美緒短い文面だった。受けるべきでしょうか。そうは書かれていない。どうしたらいいですか、でもない。判断するときに、何を確認すべきか。求めているのは結論ではなく、軸だった。鷹宮は、その一文をしばらく見た。以前なら、美緒は判断そのものを自分の外へ置こうとすることがあった。自分には決める資格がない。自分の考えで進めていいのか分からない。そういう迷いが、質問の形になっていた。今は違う。決めるのは自分だと、最初から書いてある。鷹宮に求めているのは、答えではない。見落としがないか。感情と事業判断が混ざっていないか。そこを整理するための時間だった。翌日の夕方。オンライン画面に美緒の姿が映った。「よろしくお願いいたします」
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28.条件付きで

美緒から連絡が来たのは、久世物産の件について話してから四日後だった。午後六時を少し過ぎた頃、鷹宮は執務室で翌週の会議資料を確認していた。画面右下に、新着メールの通知が出る。差出人は、篠原美緒。件名は、久世物産の件について。鷹宮は手元の資料を保存してから、メールを開いた。鷹宮様先日はありがとうございました。久世物産の件ですが、条件付きで受けることにしました。契約内容については真帆さんにも確認していただき、久世物産側へ条件を提示しています。篠原美緒文面は、それだけだった。条件付きで受ける。鷹宮はその一文を読み返した。受けると決めた。久世物産だからでも、過去への答えとしてでもなく、リブランシュとして受ける理由があるかを考えた結果なのだろう。少なくとも、美緒はそう判断した。鷹宮は返信画面を開いた。そうですか。最初に浮かんだのは、それだけだった。おめでとうございます、ではない。久世物産の再建支援を受けること自体は、祝うべき出来事とは違う。よく決めましたね、も違う。鷹宮が美緒の判断を採点する必要はない。少し考え、承知しました。条件はまとまりましたか。と入力した。問いは、それだけにする。何を条件にしたのか、すべて報告してほしいわけではない。ただ、前回の相談で最も重要だったのは、美緒個人と業務を切り分けられるかという点だった。そこが整理できたのかは、確認してもよいと思った。返信は十分ほどして届いた。はい。契約面は真帆さんに確認してもらいました。私的な連絡と業務連絡を分けること、必要資料を期限内に開示してもらうこと、契約外の業務は別途協議することを条件にしています。また、リブランシュが久世物産の指
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