灯台を降りる頃には、 太陽は少しずつ傾き始めていた。 岬からの帰り道。 海の色が、昼の青から、 少しずつオレンジがかった色に変わっていく。「お腹、すきましたね」 原付の後ろで、ぽつりと呟いた。 朝からろくに食べていない。 昼休みも、彩音たちの視線が怖くて、 購買に近づけなかった。 私のお腹は、 正直にぐう、と鳴いた。「……図太くなったな」 前から、呆れたような声が届く。「え?」「あの夜は、遠慮して腹減ったとも言えなかったくせに。 今は腹の音まで聞かせてくるのか」「そ、それは……!」 顔が一気に熱くなる。「聞かせてるつもりは、ないです!」「聞こえてんだよ。耳いいからな、俺」 くそ。 こういうところだけは「普通じゃない」能力、 発揮しなくてもいいのに。 でも、 からかわれているのに、 どこか嬉しい。 人とこうやって、 他愛ない言葉を交わせる感覚自体が、 久しぶりだった。「……飯でも食うか」 彼が、ふいに言った。「いい店、知ってるんですか?」「さぁな。漁師に聞いた」 それは、 この町の誰よりも「美味しい店」を知っていそうな人たちだった。 少し走ると、 道路脇に、小さな木製の看板が見えてきた。「浜焼き処 かもめ亭」。 手書きの文字。 少し色あせたカモメの絵。 店の前には、七輪と木のベンチ。 炭火の匂いが、風に乗って漂ってくる
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