「お久しぶりです、三枝さん」 私がそう言うと、陽斗さんの笑顔がほんの少しだけ遅れた。 以前なら名前で呼んでいた。 陽斗、と。 何の疑いもなく、そう呼んでいた。 でも今は違う。 ここは仕事の場で、彼はノヴァリンクの代表で、私は鷹宮グループ側の担当者だ。 その距離を、私は自分で選んだ。「……少し、他人行儀だね」 陽斗さんは穏やかに笑った。 声も表情も昔とあまり変わらない。 変わらないからこそ、胸の奥に小さな違和感が生まれた。 その柔らかさに、以前の私は何度も安心していた。 けれど今は、その柔らかさの奥にあるものを、少しだけ見ようとしている。「仕事の場ですので」 私はそう答えた。 できるだけ静かに。 感情を乗せすぎないように。 莉愛さんが、陽斗さんの隣で小さく笑った。「朝比奈さん、お元気そうでよかったです」「ありがとうございます。小鳥遊さんも」 婚約破棄を告げられたあの夜、莉愛さんは陽斗さんの隣にいた。 華やかで、きれいで、自分が選ばれたことを疑っていない顔をしていた。 今も、その華やかさは変わらない。 ただ、私を見る目には、あの時とは違う色があった。 探るような。 測るような。 私がここにいる理由を、まだ納得していないような目。「生活支援連携案の担当をされているんですね」 莉愛さんが言った。「はい。試験導入に向けて準備を進めています」「すごいですね。以前は、そういうお仕事をされている印象があまりなかったので」 言葉は丁寧だった。 けれど、棘はある。 以前のあなたは、陽斗の隣で静かに笑っていただけではなかったか。 そう言われた気がした。 私は手元の資料を持ち直す。「以前は、任されていた
ปรับปรุงล่าสุด : 2026-08-13 อ่านเพิ่มเติม