せっかく緊張がすこしほぐれかけていたセラの身体が、一瞬で氷のように硬直する。 声をかけられて、振り返った先には、豪華なドレス。女らしさを際立たせるような、胸元のあいたドレスには、たっぷりと宝石がぬいつけてある。華美な意匠だが、華やかな顔立ちを持つ、セラの姉、オディール・ローゼンタールの堂々とした態度には、そのドレスがよく似合っていた。優雅に扇を揺らして、親しみは感じられない微笑みをセラに向けている。その隣では、感情の見えない無表情で、黒曜石のような瞳をセラに向けて、第二王子カイルが立っていた。 「ごきげんよう、セラ。あら、そんな表情をされるなんて。わたしが、何か気に障ることをしてしまったかしら。……ああ、お気に入りの護衛騎士とお菓子を堪能しているところを邪魔してしまったから? それでそうやっていじわるな顔をしてわたしを見るのね」 オディールが、眉をさげ、悲しげにため息をついてつづける。 「あなたは、いつもわたしにいじわるだけれど、わたしはあなたが心配だわ、セラ。ジェイド殿下は、あなたのことを、大切にしてはおられないのね。はじめて参加する舞踏会だというのに、こんなふうにひとりで置いておかれるなんて……。わたし、とっても心配になって、声をかけにきたのよ」 「……っ」 セラの喉がぎゅっとなった。 まわりにいる人々が、ひそひそと、こちらを見ながら話している。 何か言い返さないと。 そう思うのに、オディールの顔を近くで見ると、喉が引きつり、声が出てこない。意見を言えば、痛みを与えられる。泣いても、痛みを与えられる。やめてほしいと懇願するほど、痛みを与えられる。ただ、黙って、オディールの関心が自分から離れるまで、待つしかない。今までの恐怖。 セラは、その場から逃げ出してしまわないよう、ぐっ
最終更新日 : 2026-08-16 続きを読む