Alle Kapitel von 錬金術師は国から追われる: Kapitel 101 – Kapitel 110

111 Kapitel

101 失われた灯りとこれからの未来

二人で塔に戻り、「よし!これから魔力抑制布を作る準備に入るぞ」……と、そういったもののその前に――ちゃんと服を着てるけど……大丈夫だよな?レオンハルトはちらりとミレイユに視線を送ると、彼女も同じことを意識していたらしい。塔の中に入った途端俺のシャツの端をぎゅっと握って、視線を逸らした。だが、ミレイユの錬金術師としての準備が終わるということは、アリエルが帰ってきたら結婚しない限り、ミレイユと二人きりで一緒に過ごす夜はもうなくなるということだ。レオンハルトはその二人で過ごす夜が今日最後でもおかしくないと思っていた。そもそも、塔に入り浸るのはダリウスがミレイユの錬金補助とケアを指示しているからだ。錬金が終われば、ここに泊まる理由は無くなってしまう。それに、ダリウスは二人の関係に目を瞑っているけど――養母のアリエルが、レオンハルトとミレイユの関係をどう思うかわからない。少なくとも、こんな環境で手を出しているのだし、アリエルから相当叱られるだろう。もちろん、ミレイユが望んでくれるなら即責任取るつもりではいるんだが――レオンハルトは、そう思いながらミレイユに視線を移す。――少し触れたい。俺は服の端をつかんでいる彼女の手に触れて、握り返した。イチャイチャもいいけど、こういう何気ないスキンシップが一番大事なんだと思う。そばで笑って、普通に会話できる。そんな当たり前の幸せこそが大切なんだと思うダリウスは、身分が邪魔してそれが無理だったんだ……レオンハルトはダリウスの沈んだ顔を思い出した。「ミレイユ……このクーデターがうまくいって、師匠が帰ってきたらどうする?」今のうちに聞いておきたかった。「……お店の再建がしたいです。ただ、すごくお店の中を壊されちゃって……店
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-10-05
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102 クーデターに失敗したら?

しっかり泣いた後、ミレイユは「自分の出来る最高の仕事をダリウスと師匠に届けます」と告げた。その目にもう迷いはない。魔力抑制布の仕上げに取り掛かるという強い意志のもと、先ほど泣いていたことを忘れたかのように錬金術師としての仕事に没頭し始める。月影狼の毛皮の灰に、スライムを数滴……さらに麻痺毒を少しだけ混ぜていく。「ここからは危険です。布に触れるだけで痺れますから……レオンハルトさんは下がっててください」そう言って、布を口に巻き、手袋をはめるミレイユ。本来は錬金術師が実験するときは保護ゴーグルをつける。だが、この塔にはそのような洒落たものはない為、素材用のメガネを代わりにかけて、レオンハルトを手で制した。3階の部屋から追い出されたレオンハルトは遠目にそのミレイユの姿を焼き付けていた。凛として、メガネをかけて集中するその姿は、この国では珍しい働く女性の姿でかっこよかった。魔力抑制布の最終型はこの布をまともに浴びても死にはしないが、しばらく身体は思い通りに動かなくなるレベルまで引き上げられる。魔力も抑制されるので、回復魔法も使えないし、物理的に体も動かない。「敵にとっては地獄の布になり、味方にとっては最後の切り札になります」報告した時のミレイユの目がキラキラと輝き、それを受けたダリウスは思わずうっと言いながら「そうか……」としか言えなかった。アリエルより残虐なのはミレイユかもしれないと呟く。残虐かどうかはわからないが、プロ根性が強いということはよくわかる。レオンハルトは、先ほどショックを受けたミレイユに伝えられなかったことを考えていた。それは、クーデターが失敗した後の話だ。今までは成功の先ばかり伝えていた。だが、本当に怖いのは逆だ。敵は国王であり、国なのだから――仮に魔導炉を抑えても、国王の指示を抑えられなければ騎士団や近衛騎士団に全員討伐されるリスクが出てくる。
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-10-06
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103 ブレスレットに託された願い

翌朝。完成した魔力抑制布を抱えて拠点に戻ったレオンハルトはダリウスに目だけで部隊長室に来いと促された。……また、ミレイユを隊員たちに任せないといけない。正直、心配しかない。心の中では引き止めたい腕が伸びていた。レオンハルトが奥手なのは、部下たち全員が知っている。あわよくば……と考える奴がいてもおかしくない。しかも俺より若いのがゴロゴロいる。だが、ダリウスとカイルがレオンハルトをグイグイ引っ張っていく。ミレイユ!みんな騎士だからみんな裸族なんだって伝えておけば、みんなと距離を取ってくれたかもしれないのに!レオンハルトの心の絶叫なんてミレイユに届くはずもない。魔力抑制布は、ミレイユが厳重に包んで持ってきた。「圧砕砂と、熱で開く貝殻で布が飛び出すかどうかですね!」そこはミレイユに任せるしかないが、彼女はすでに顔馴染みになった隊員たちにそういいながら楽しそうに消えていく。レオンハルトの心配なんて、置き去りである。そして引っ張られていくレオンハルトは隊長室へ。「決行は明後日の深夜に決まった」ダリウスが口を開く。その瞬間、レオンハルトとカイルに緊張が高まった。「ついにですね……」緊張で背筋が冷える。「当日はどのように動く予定ですか?」「大きな変更はない。夜のうちに、俺たちで魔導炉を押さえる。そして、王都の魔力供給を絶つと王都は暗闇に沈むはずだ。伝達経路は遮断されるし、魔力兵器も応援も不可能になる。その隙に王を拘束する」「異変を察知される前に全てを終わらせるということですね」レオンハルトは確認した。「そうだ。セドリック公爵領には、かつて自分や兄が魔力過多症の治療に使った魔法障壁施設がある。そこへ幽閉して父の私兵が警備を固めるという流れの予定にしている」ダリウスはそう頷いて答えた。「アドリアン
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-10-07
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104 憎みあっても、願うのは生存

レオンハルトは歯ぎしりしたい気持ちでユリウスに連絡を入れた。【樹海防衛部隊の中には、魔物よけの予備はない。魔導炉までは魔物の発生状況の確認も兼ねて強行しようと思っていたので、追加物資はありがたくいただきたい。明日、カイルを王都まで取りに向かわせる】「これでいいかな?魔物よけの鈴もないだろうと聞きつつ、王都まで物資を取りに来いってどうやってくると思ってるんだ?あまりに支離滅裂だ」レオンハルトはダリウスを見つめた。カイルだって、ユリウスの言動がおかしいと分かって行くと言っている。それなのに、ダリウスはどうしてブレスレットを渡したんだろう?カイルは戻って来られると感じたんだろうか?カイルが彼女に会いたいっていうのは、最後に会いたいってことじゃないのか?彼女はもう助からないと覚悟を決めているように見えるし、もしもの時はカイルはユリウスに殺されるつもりなのだと思う。ダリウスには、カイルとその幼馴染の命が残りわずかであることが、自分とアリエルとダブって見えたのだろうか……転移ポートが埋め込まれたブレスレットが、敵に渡ると怖いが……レオンハルトは、ダリウスがいつものように冷静に下せている判断なのか不安になる。「返答がきました」カイルはそのモールス信号を読み取る。【了解。明日私のタウンハウスに来て欲しい。執事に預けておく。総司令官室には来ないように】「は?執事に預ける?お前が渡すんじゃないのかよ?」訳が分からない。自分は手を下さないから、執事に殺されてこいとでもいうのか?カイルも意味不明という顔をした。「執事に会いにいったら、オレ刺されるんでしょうか?」「貴族のタウンハウスの執事は殺し屋なのか?怖すぎるだろう」レオンハルトも、カイルにどうする?と聞く。「いえ、行くと決めましたから。」カイルはキッパリと答えた。うちのタウンハウスは高齢夫婦の管理人だぞ。侯爵家はそんな物騒
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-10-08
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105 すべての準備が整った

拠点内に、装具や道具がすべて揃った。……かなり圧巻だ。ダリウスはいよいよこの道具を使って、アリエルを助けられるという思いと、その日が俺たちの最後だという気持ちで心が揺れ動いていた。防具や盾に煌めく月影狼の毛皮(しかも甲殻魔物の粉末仕上げ)に夜目レンズ、指輪型の魔力抑制布――麻痺付き。その他数多くのハイポーション、ポーション、睡眠玉、解毒剤、魔物よけの鐘や鈴が並べられていく。そのほかにも爆弾系がいくつか入っていた。「ミレイユ、これだけ多くのものを集めるのは大変だっただろう」「爆弾系はあんまり得意じゃないんです。ダリウスも知ってるでしょう。師匠は爆弾を作るのは嫌がってましたから、作れるというレベルなんです」ミレイユが肩をすくめて言う姿にダリウスも微笑んだ。「そうだったな……あいつは素材を痛めるし、無意味な殺生にもつながるからと使わなかった。ただ、魔物からしたら爆弾で殺してくれというぐらいアリエルの方が殺傷能力が高かったがな」「師匠はいつもきれいな素材を持って帰って来ていたから、それが当たり前だと思っていたの。今ならとんでもないことだって分かるわ」ダリウスとミレイユはまるで父と娘のように仲良く話しながら笑った。「そう言われたら店で爆弾は見なかったな……」レオンハルトも店で一度品揃えを見たが、危険なものを取り扱っていた印象はなかった。「月影亭でも爆弾系はほとんど出さなかったの。作るとしても受注生産で見えるところには置いてなかった。魔物退治というよりは、道を塞ぐ落石を壊すといった用途が主流ね。魔物用に欲しがる商人や旅人には、かなり使用上の注意をしていたわ」「徹底してたんだな……使用頻度が低い分、苦手なのも無理はないけどよくこれだけ作ったもんだ。ミレイユ、この後はゆっくり休むんだぞ」レオンハルトが休むように念押しをすると、ミレイユも恥ずかしそうに「はい」と答える。「これだけのものを備えているのに、ユリウ
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-10-09
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106 もし戻れなかったら誰かと

「ダリウス……大丈夫かしら?」ミレイユの声には心配が滲んでいた。あんなふうに泣くダリウスを見るのは初めてだった。塔を外から眺めたあと、中を一通り見て今は四階にいる。「アリエルの日記をゆっくり読ませてもらえないか?あいつの苦しみに俺は気づいてやれないダメな男だったから……」それを聞いたレオンハルトからは、「そっとしておいてやろう」と言われていた。すでに外は暗くなっている。鈴を鳴らしながら、二人で外に出る。水場の音が静かに流れている。「本当に師匠とお別れしてしまうのかな……」ミレイユは、帰ってきたとき、傷ついた師匠がさらに傷つく姿を想像して胸が締め付けられる。「私に、もう何もできないのかな……」思わず小さく呟く。辛くて、現実を考えたくなかった。「ミレイユ、辛いが俺からも話がある。」レオンハルトは、先ほどダリウスと話し合った【もしクーデターが失敗したら】という状況に陥ったときの話を伝えた「うまくいかなかった時のことなんて、考えたくない……聞きたくもない」ミレイユは胸の奥で震える思いを押さえた。「でも、もし一人になったら……露頭に迷うのは確かだ。残念だが捕えられてしまったら、今度こそ俺もダリウスも……そしてアリエルもここには戻れない。そして……この塔も樹海の中にあり、いつまで安全かはわからないんだ」レオンハルトも震えるミレイユを抱きしめて優しく頭を撫でる。ミレイユは、嫌だと何度も頭を振った。「逃げた方がいいんでしょうか……? みんながいないなら、いっそ王の言いなりに……」魔術師の強さはわからないが、アリエルが捕まっているのだから、それを上回る可能性が高い。ひとりで逃げ回る未来を想像すると、い
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-10-10
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107 日記に綴られた最後の愛

一方のダリウスは塔の4階に上がり、ぼんやりとアリエルの日記や、思い出の詰まった木箱の中身を見つめていた。最初のころは、ダリウスもよく知っている懐かしい思い出が綴られているだけだった。アリエルは、どこか学校に行ったわけでもないのに錬金術を学ぶために難しい本も読めるし、文章にすることもうまかった。だが、自分の行動には自信を持つことが難しかったようだ。 何度もその日どのような動きをしてどう答えたかを記録にして、「これで大丈夫?」と聞いてきたものだった。ミレイユの育児のことも、だんだん増えていく樹海防衛部隊の隊員に対する対応も、アリエルなりに一生懸命考えていた。アリエルはほとんど不眠不休だった。 だが、それは自分は大丈夫でも、他人にはそれを求めてはいけないと少しずつ理解し始めていたのだ。責任感が強く裏表もない。 子供のまま大人になったような女性だった。ダリウスは、その「自分は大丈夫」という考えをなぜ疑問に思えなかったのかと頭を抱えた。「お前も甘えていいし、休んでいいんだ」とどうしてアリエルに言ってやらなかったのだろう。 アリエルの生きてきた道は、人と違うのだと理解していたはずなのに……自分がそのサインを見逃してしまったと、日記を読みながら知った。ダリウスは、アリエルが危険な生きた兵器であることを知っていた。だから、人にそれを強いてはいけないと伝え、やってはいけないことばかりを教えてきた。でも、本当に必要な言葉はそれじゃない。「お前もみんなと同じようにしていいんだ」とただ毎日伝えてやることだったのだ。 なぜなら、アリエルはみんなの普通を必死に理解しようとしていたのだから……アリエルの日記には、常に「これで大丈夫か」という不安がにじんでいた。最後の頃を思い出す。そういえば、ダリウスに今日あったことを書いた日記も見せなくなっていた。実際、不安定になってからは、日記は書かれなくなっていた日もあった。かと思えば、王や魔術師ライナルにされていること
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-10-11
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108 守るための別れ

塔に戻ってきたレオンハルトはコーヒーを淹れ、ダリウスに持っていこうか迷っていた。「そっとしてやる方がいいか……」ミレイユは3階で、早速万能薬の研究を始めてしまった。気持ちが落ち着いたら、ダリウスには、アリエルの今後についても相談しておきたかった。一つは仕事についてだ。アリエルの前職とレオンハルトの現職が被ってしまう。お互いどこかに異動になるのか、それともどちらが樹海防衛部隊に残るのかまだわからない。出来れば彼女の仕事を奪う形になるのは避けたい。もう一つはプライベートな方だ。こっちは今後どうしていくかを真剣に決めておく必要があった。もしダリウスが本当にアリエルから離れるなら、お店の再建ができるまではアリエルもミレイユも、今後は俺のタウンハウスで保護するのがいいだろう。たとえミレイユが、日々を取り戻す中で自分に別れを告げられることになってもだ。考えるだけでつらいが、その時も居場所の確保までは手伝うつもりだ。問題は、それはアリエルが移動できる容体の場合の話だ。それならタウンハウスで問題はないが、移動できないほど重体な場合はどこに連れていくのか。厄介なことに魔導炉は樹海の中だ。魔導炉から指輪でこの塔に連れてきて回復を待つこともできる。しかし、この塔に医者を連れて来ることができない。重体のアリエルをつれて、樹海の中、王都まで馬を走らせる?現実的ではない。一番体に負担がかからないのはただ一つ。ダリウスのブレスレットを使ってアドリアン宰相のタウンハウスに飛ばし、一旦はそこで治療を受けさせる方法だ。だが二度と交わることはないと自分のブレスレットを返してきたアドリアンが協力してくれるだろうか。いや協力してくれないと困る。今、ミレイユは手に入った光属性の魔核に夢中だ。万能薬の研究に没頭している間は降りてこない。ミレイユが席を外している間に、ダリウスとよくない未来を想定した話は済ませておきたいのだ。
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-10-12
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109 それぞれの想いと別離

ダリウスは、最後にミレイユに声をかけようか迷っているようだった。彼にとっては娘同然だ。クーデターが終わった後、もう戻ってこない。それを、自分の口で伝えるべきなのか……だが、レオンハルトはダリウスに冷たく告げた。「ダリウス、どんなに綺麗なことを言ってもアリエルとミレイユとは別れるんだよな。ミレイユは優しいから、仕方ないと涙してくれるかもしれない。そして、ダリウスから別れを告げられたことをアリエルに苦しみながら告げるだろう」「……ミレイユに全てを任せるのは……酷だよな」「ああ、何も言わないまま去ってくれ。ミレイユは何も言われなかったことにしてくれ。代わりに俺が2人には伝える。何も言わずに去るような男はろくなやつじゃない。離れて正解だってな」ダリウスは、レオンハルトに静かに頷いた。「もしアリエルが動けないようなら、アドリアンに一旦保護を依頼する。レオンハルト……ミレイユを……いや、2人を頼む」「ああ」レオンハルトはダリウスを連れて拠点に戻り、再び塔へ、ミレイユの元に戻っていく。2階に上がると、3階にいたはずのミレイユがいた。「ごめん、休憩か?ダリウスを連れて帰ってたんだ」レオンハルトは、何もなかったようにミレイユに微笑んだ。だが、ミレイユは首を振った。「分かってました……声が聞こえてたから……話を聞いてしまいました」ミレイユが目に涙を溜めてうつむいていた。レオンハルトは、ミレイユをぎゅっと強く抱きしめた。「すまない。俺の独断でミレイユとの会話をさせなかった」「ううん、私、貴族のことをよく分かってないから言ってしまったかもしれない。どうして全てを投げ捨てて師匠の元に、私たちと一緒にいてくれないのって……それができないからダリウスだって悩んでいたのに。
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-10-13
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110 救い出された彼女とその恩義

「じゃあ、行ってくる」表情は固いが、もう揺らぐことはないといった表情のカイルがレオンハルトやダリウスたちに告げる。「深追いするな。危険そうならすぐ戻ってこいよ」レオンハルトは思わずそう声をかけるが、カイルは愛する人のところに辿り着くまではきっと戻ってこないだろうと思っていた。最後に彼女を連れ去る予定なので、ユリウスの執事と接点を持ってから彼女の元に行くことになる。どうか、最後まで無事にいてくれよ――レオンハルトがそう願う横で、カイルはレオンハルトの肩を叩き、拠点を出ていった。魔物よけの鈴と、予備のポーションを持たせてある。順調にいけば、樹海を抜けて王都まで二時間ほどで辿り着く。魔物に遭遇することもないはずだ。カイルがいなくなると、拠点入り口はダリウス、ブレスレットで戻ってくる魔法陣のある隊長室をレオンハルトは警備しはじめた。「俺たちも周辺警備します」他の兵にも緊張が伝わったのだろう。休憩を回しながら、みんなで拠点を守り始める。ミレイユも治療道具や薬草を塔から持ち込んだ。体調が悪い彼女のために、拠点や塔に横になれるスペースを確保しておく。「いつ来てもらっても治療開始できます」あとは、カイルとその彼女の無事を祈るのみだった。◇そのカイルが王都にあるユリウスのタウンハウスに着いたのは出発から二時間後だった。馬は近くの預かり所へ預けておく。この馬を二度と取りに来ないだろうが、店にとっては良い馬だ。文句は出まい。……問題はここからなんだよな……冗談で執事に刺されるかも……なんて言ったが、実際に怖いのは兵に囲まれることや背後を狙われることだ。ユリウスのタウンハウスは、侯爵家だけあり門だけでもかなり立派なものだ。入り口はどこだよ?カイルがキョロキョロと周辺を見ると、正門に警備兵を立た
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-10-14
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