日曜日の朝。 「ノアー! 早くー!」 玄関から、茗子の声が響いた。 「茗子、まだ約束の時間まで十分あるよ」 貴子が、靴紐を結びながら言う。 「だって、楽しみなんだもん!」 美香は、二人の後ろで鞄を確認していた。 財布。 端末。 ハンカチ。 それから、NOA-Link。 「……よし。忘れ物なし!」 「美香さん」 背後から、ノアの声がした。 「お弁当を、お忘れです」 美香が振り返る。 ノアは、保冷バッグを持っていた。 「……あっ!」 「先ほど、キッチンに置かれていました」 「ありがとう! 危なかった!」 茗子が、吹き出した。 「ママ、忘れ物なしって言ったばっかり!」 「聞こえてますー!」 ノアは、三人を見つめた。 そして、小さく微笑んだ。 「……では、参りましょうか」 * 花屋は、公園へ続く通りの角にあった。 店先には、色とりどりの花が並んでいる。 「わあ……!」 茗子が、目を輝かせた。 「これ、かわいい!」 「茗子、触る時は気をつけてね」 貴子が、声をかける。 美香は、ノアを見た。 「ほら。好きな花、探してみよう」 「……はい」 ノアは、ゆっくりと店内を歩いた。 赤い薔薇。 白い百合。 小さな黄色い花。 一つずつ、視線を向ける。 「……美香さん」 「なに?」 「花は、どのような基準で選ぶのでしょうか」 美香は、少し考えた。 「うーん。色とか、形とか、香りとか?」 「……なるほど」 「でも、難しく考えなくていいよ」 美香は笑った。 「好きだなって思ったら、それでいいんじゃない?」 ノアは、花を見つめた。 「……好き」 その言葉を、小さく繰り返す。 やがて。 彼は、一輪の花の前で足を止めた。 淡い藤紫色の花だった。 「……こちらが、気になります」 美香は、隣に並んだ。 「綺麗だね」 「はい」 ノアは、花弁を見つめた。 「理由は、まだ分かりません」 「うん」 「ですが、見ていると、もう少しここにいたいと思います」 美香は、静かに笑った。 「じゃあ、それにしようか」 ノアは、彼女を見た。 「……私が、選んでも
Zuletzt aktualisiert : 2026-09-22 Mehr lesen