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時を歪めた男と運命を変えた女

時を歪めた男と運命を変えた女

By:  氷砂糖山芋Completed
Language: Japanese
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私の夫は世界トップクラスの科学者で、私はただの平凡な主婦だ。 その日、彼が十年の歳月を費やして研究してきたタイムマシンが、ついに成功した。 彼は息子を連れて過去へ戻り、若くして亡くなった初恋の人のもとへ向かうという。 出発前、息子は私に白い目を向けて言った。「ママなんてただの家政婦だよ。パパに見合うのは晴海さんだけよ」 夫は冷たく言い放った。「深水知夏(ふかみ ちなつ)、僕は二度と戻らない。この家も寄付した。早く出て行ってくれ」 私は鼻で笑った。「あんたたち、後悔しないでね」 私はこっそり二人のあとを追って実験室へ向かった。機械が作動する最後の瞬間、光に向かって手を伸ばした。 父子は知る由もない。この十年間、私が待ちわびていたのはまさにこの瞬間だということを!

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Chapter 1

第1話

結婚記念日のこの日、夫が十年かけて研究してきたタイムマシンがついに完成した。

彼は息子を連れて過去へ戻り、亡くなった初恋の人と再会するという。

出発前、息子は私に白い目を向けて言った。「ママなんてただの家政婦でしょ。パパと晴海さんの邪魔をしないで」

夫は冷淡な表情で告げた。「深水知夏(ふかみ ちなつ)、この家はもう寄付した。早く荷物をまとめて出て行ってくれ」

私は冷笑した。「あんたたち、後悔しないでね」

私がこっそり二人のあとを追って実験室へ向かった。機械が作動する最後の瞬間、光に向かって手を伸ばした。

父子には知る由もない。本当の夫と娘を救うため、この瞬間を私は十年も待ち続けていたことを。

……

桐谷慎也(きりたに しんや)の研究がついに成功した。

彼は息子の桐谷誠(きりたに まこと)を連れて時空を遡り、十年前へ戻るという。

私はテレビのニュースでその事実を知った。

今日は私たちの結婚十周年記念日。私は夕食を作り、彼の帰りを待っている。

ドアが開くと、私は駆け寄る。

「慎也、あなたの好きな料理を作ったの。結婚十周年のお祝いに」

慎也は微かにため息をついた。「深水、僕たちは終わりだ。十年間、僕と誠の世話をしてくれたが、やはり晴海を忘れられない」

金縁メガネの奥の冷たい瞳は、何事もないかのように静かで、まるでごく当たり前のことを告げているかのようだ。

熱い皿を手にしているのに、私はその痛みに気づかない。

スーツに身を包んだ彼を見つめ、無意識に彼の目の端のほくろを探す。「慎也、離婚するってこと?」

「研究が成功した。晴海に会いに行く」

彼は言った。

指先が熱で真っ赤になっているのに遅れて気づき、手にしていた皿を落としてしまった。精巧に作られた料理が床に散らばった。

「まさか……過去に戻るだって?十年前に戻るつもりなの?」私が信じられない思いで目を見開いた。

加藤晴海(かとう はるみ)は慎也の初恋の人。十年前に事故で亡くなり、慎也は彼女を忘れられずにいた。

「ああ。誠も連れて行く」

そう言うと、すぐに晴海と再会できることを考えたのか、彼の目にかすかな笑みが浮かぶ。

私は慌てて一歩踏み出し、彼の腕をつかむ。

「私はどうなるの?慎也、私はいったい何なの?今日は私たちの結婚記念日よ……」

「深水、僕たちはここで終わりだ」慎也は情け容赦なく私の指を一本ずつ剥がす。

私が拳を握りしめ、爪が手のひらに食い込んだが、痛みを感じない。「つまり、私を置き去りにするの?

誠、あなたもママを置いていくの?」

大切に育てた息子は私に白い目を向け、慎也の側に立って、やや軽蔑的な目で私を見る。

「ママは年取ってブスで、晴海さんとは比べ物にならない。晴海さんに会いに行く邪魔をしないで。晴海さんにママになってほしい」

私が二人を見つめ、複雑な思いが去来する。

誠が病気で寝込んだ時、私は何日も眠らずに目を赤くして看病した。

あの頃は、まだ小さな手で私の小指を握り、「ママ」と呼び、幼稚園の工作で習った折り鶴を持って帰り、柔らかな声で「ママ」と呼んでくれた。

成長するにつれ、彼が私をうるさい、家政婦みたい、他の母親のように垢抜けてない、と嫌うようになった。

「現実を受け入れろ。僕は戻らない。それにこの家はもう寄付書にサインした。晴海のために設立した基金へ寄付する。早く荷物をまとめて出て行ってくれ」

慎也が付け加えた。

なんだか馬鹿らしく思えた。彼らは行く前に、晴海の基金へ家まで寄付するつもりだというのか。

「わかった」私が深く息を吸い込む。「後悔しないでね」

「後悔?晴海と一緒になれないことこそ、後悔だ」

慎也は一語一語、強く言い放った。

そう言うと、彼は誠を連れて車で家を離れる。

彼らは気づかなかったが、私は別の車で彼らの後を追う。

実験室で、慎也と誠の目は興奮と期待に輝いている。

机の上では、一台の装置がまばゆい光を放っている。

「パパ、これで晴海さんに会いに行けるの?」

誠はくりっとした目を動かし、好奇心にあふれた表情を見せる。

「ああ」慎也は口元を緩め、誠が晴海の話を出すと、彼の顔に珍しい優しさが浮かぶ。

私は見たことのない表情だ。

それを聞くと、誠の目が輝く。

「晴海さんが大好き!晴海さんはすごくきれいで、天使みたい。ママはブスみたい。ブスがママはいや」

慎也は彼の頭を撫でる。「大丈夫、過去に戻れば、晴海がママになる」

そうか、私は十年もの世話と思いやりを、彼らにとっては何の価値もない。晴海に会うためなら、命を賭して時空さえ遡ろうとするのだ。

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