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白露'の原作を改めて読み返してからアニメ版を観ると、まず構造の取り回しがかなり違うことに驚かされた。原作は章ごとに主人公の内面を丁寧に掘り下げることで少しずつ世界観を積み上げていく作りだったが、アニメは視聴者の注意を引くために序盤から事件描写を前面に出している。私が特に気になったのは、原作の第4章にあった長い“手紙”のモノローグが丸ごと省略され、代わりに短い回想カットと会話で説明されてしまった点だ。原作では手紙のトーンや言い回しが主人公の心情変化を細かく示しており、それが後半の決断の根拠になっていたため、観る側の解釈幅が狭まったように感じる。
また、サブキャラクターの描かれ方も変化している。原作では支援者の一人である“洋子”が徐々に回復しつつ主人公に対して微妙な距離感を保つ描写が延々と続き、読者にとってはその過程自体が物語のテーマの一部だった。ところがアニメはその経過を圧縮し、別の主要人物の事件と絡めて洋子の展開を早めに決着させてしまう。結果として洋子の存在が物語上の“触媒”に近くなり、原作で積み上げられていた孤独や再生というテーマの深みが薄まった部分がある。逆に映像作品としてはテンポが良く、ドラマチックな瞬間は強調されている。
演出面では、アニメ独自の象徴表現が追加されているのが面白かった。原作で断片的に出てくる自然描写や季節の移ろいを、アニメは色彩設計や音楽のモチーフで繰り返し提示し、物語の感情曲線を映像的に補強している。特に終盤で挿入される雨や風の描写、挿入歌の出し方は原作にはない解釈を提示していて、ラストの解釈がやや変わる印象を与える。結末そのものの事実関係は大きく変わらないけれど、視覚と音の力で感情の着地点を操作しているため、受け取り方はかなり変わる。これらの違いが好き嫌いを分けるポイントだと感じた。