拗ねる描写は、短くて鋭ければ鋭いほど効く。長々と理由を並べるよりも、行動の一瞬を切り取るほうが読者の想像力を刺激するからだ。たとえば、口元だけ引き締めて視線を外す、小さな物をぎゅっと握りしめるといった具体的な所作を一行で示すだけで、感情の厚みが伝わる。私はそういう瞬間描写をよく使う。内面を全て語らせないこと、余白を残すことが肝心だ。
次にリズムを意識する。拗ねから回復するまでのテンポをコントロールすると、キャラの幼さや誇り高さが際立つ。セリフを短く切り、間を設ける。沈黙や短い独白を挟んでから、ふとした台詞で本音を漏らさせると、拗ねがリアルに見える。さらに、相手の反応をほんの少し遅らせることで拗ねの孤立感を強調できる。
最後に実例として作品の雰囲気に合わせた工夫を。スポーツ青春もののテンポ感なら動作で見せる、恋愛ものなら視線と台詞のすれ違いを増やす。私は書くとき、まず最も象徴的な一行を決めてから前後を削っていく方法を使っている。短い拗ねが、物語全体の感情の波を作ることを意識してみてほしい。