裏切りの夜を抜けた
茶島婚姻生活切ない恋ひいき/自己中妻を取り戻す修羅場不倫
入江千代子(いりえ ちよこ)のこれまでの人生において、最も反逆的だった出来事。
それは、浅田辰彦(あさだ たつひこ)の実家が破産した際、誰もが彼を見放す中、全財産を抱えて彼と駆け落ちしたことだった。
千代子だけは、彼の再起に賭けた。
泥水をすするような三年の生活を経て、辰彦は日雇い作業員から、誰もが平身低頭するビジネス界の寵児へと這い上がった。
そして千代子を、以前にも増してわがままで傲慢な妻へと甘やかした。
どれだけ好き放題に振る舞おうと、辰彦は常に優しい笑みを浮かべて許してくれた。
人々は口を揃えて言った。
千代子はたった三年の苦労で、誰もが羨む理想の愛妻家を手に入れたのだと。
――あの「花屋の女」が現れるまでは。
結婚記念日、その女が浅田家に花束を届けに来たのが気に食わないというだけで、千代子は人を雇って女の店を徹底的に破壊させた。
だが今回ばかりは、辰彦がいつものように低姿勢で機嫌を取りに来ることはなかった。
彼はスマートフォンの電源を切り、姿を消した。
そして自分とあの女の親密な写真がネットのトレンドを埋め尽くすのを、ただ放置した。
ネット中がその話題で持ちきりになり、押し寄せたマスコミの嵐のようなフラッシュが、家の入り口を隙間なく埋め尽くしていた……