去りゆく後 狂おしき涙
黒川隼人(くろかわはやと)との結婚生活七年目、白石紗季(しらいしさき)は脳腫瘍だと診断された。
紗季は夫と子供のために賭けに出ることを決意し、五十パーセントの生存率で手術台にのることにした。
しかし、隼人の想い人である三浦美琴(みうらみこと)が帰国し、紗季は自分と隼人の結婚が仕組まれたものであったと知った。
隼人は美琴を彼の秘書として傍に置き、隼人の友人は彼女のことを「奥さん」と呼び、自分の六歳の子供さえも「美琴さんが母親だったらいいのに」と言った。
紗季は完全に心が折れ、彼らの前から姿を消した。
そしてある日、二人は紗季が残した診断書を見て後悔した。
二人は海外まで紗季を追いかけ、土下座して謝罪をし、紗季に一目会うことを懇願した。
しかし、紗季は彼らを許す気は全くなかった。
彼女は薄情な元夫と恩知らずな息子など、もう必要ないからだ。