末永くつき添いたいと願ったのに
【三十五歳の女って、どんな匂いだ?】
白野里奈(しらの りな)の腰はまだだるく痺れており、全身の汗が冷めやらないうちに、緋村誠(ひむら まこと)のスマホの明るい画面がふと目に入った。
「親友グループ」のチャットに、そんなメッセージが投稿されていた。
男の熱い胸が再び彼女の背中に押し付け、首もとでの呼吸が荒くなっていく。
「いいお姉ちゃん、もう少し付き合って……」
里奈は口元をわずかにゆるめ、スマホから視線をそらした。
もう三十五歳だ。彼氏のスマホをチェックするような習慣は、とっくにない。
考えるべきは、十歳も年下でエネルギーに満ちたこの男を、どう落ち着かせるかだ。
二人は夜中までやり続け、里奈は幾度も疲れで意識が途切れたが、目を覚ますたびに、またあの光るスマホの画面が目に飛び込んできた。
彼女は消そうとしたが、指先が思わず固まって動かなくなった。
誠という調香師には、自分はどんな香りに感じられているのだろうかと、ふと興味が湧いた。
指先で軽く上にスクロールすると、彼の返信が針のように突然目に飛び込んできた。
【三十五歳の女?加齢臭がするよ】