偽りの愛に溺れる君に決別を
桐生旬(きりゅう しゅん)が家庭に戻って以来、かつて自分を夢中にさせた女子大生について二度と口にすることはなかった。
妻の結城晶(ゆうき あきら)には、とても優しかった。
毎日定時に帰宅し、晶の好みをすべて覚えていて、生理のときには温かい生姜湯を作り、彼女が悪夢を見れば、強く抱きしめてくれる。
誰もが口を揃えて、旬のことを模範的な夫だと褒めた。
だがある日、二人が行きつけのレストランで食事を終え、会計を済ませて帰ろうとしたとき、少し離れた場所から騒ぎ声が聞こえてきた。
「ちょっと触ったくらいで何だよ!清純ぶるな!」
酔っ払った客が、ウェイトレスの手首を引っ張っている。
「こういう店で働いてるってことは、金持ちの男を釣るためだろうが!」