去りゆくものは二度と戻らない
成田真夏(なりた まなつ)は石崎景吾(いしざき けいご)を十年間愛し続けてきたが、景吾は彼女に対して冷たくなったり優しくなったりしていた。
彼女はそれを気にせず、いつか必ず自分の真心に目を向けてくれると信じていた。
ところが、婚約披露宴の日、真夏は彼が成田真夜(なりた まよ)と情を交わすところを目撃してしまった。
「真夏と結婚して株を手に入れたら、彼女と離婚するさ。そして、堂々とお前を妻に迎える」
結局、彼は生まれつき冷淡だったのではなく、ただ単に彼女を愛していなかったのだ。しかも、彼女を利用しようとしていた。
彼女は石崎家の大旦那様である石崎武雄(いしざき たけお)にすべてを打ち明けた。
「おじいさま、私、よく考えました。景吾は私を愛していません。私も無理強いしたくありません。だから、彼とは結婚しません」
武雄は驚いた。
「でも、お前は長年彼を愛してきたのではないのか?彼に虐められたのか?
安心しなさい。わしの孫嫁はお前だけだ!」
「おじいさま、結婚式の日程は変えません。私は石崎家に嫁ぎます。でも新郎を変えます。
七日後の結婚式当日、石崎家の同輩の中から抽選をします。当たった人とその場で結婚します」
どうせもうこれ以上悪くなることはないのだから!