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沈む夕陽、届かぬ便り

沈む夕陽、届かぬ便り

橘川澪奈(きっかわ みおな)は、本来なら静かに最期を迎えるはずだった。だが、夫が臨終の間に残したひと言が、彼女の「幸福な一生」を一瞬で嘲りに変えてしまった。 「澪奈、俺は君と離婚して瑠花と結婚したい。死んだあと彼女と同じ墓に入りたいんだ」 そして続けた。「昔、彼女に君の芸術大学の合格証を譲った。その償いは、この人生をかけて十分果たした。澪奈、俺はもう君に借りはない。残されたわずかな時間は、一番愛する人と過ごしたい」 雷に打たれたような衝撃だった。その言葉を胸に刻んだまま、夫が息を引き取ってほどなく、澪奈も心労に押し潰されるようにして命を落とした。 ――次に目を開けると、かつての若かりし頃だった。
Short Story · 恋愛
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愛をやさしく語り合った

愛をやさしく語り合った

安田翔真(やすだ しょうま)が可愛い転校生に告白したあの日、みんなは私が取り乱して泣き叫んで止めに入るだろうと思っていた。 しかし、告白が終わるまで、私は現れなかった。 翔真は知らなかった。そのとき私が、彼のルームメイトのパーカーを着て、そのルームメイトのベッドの上に座りながら、無邪気な顔でこんなことを言っていたなんて。 「ねえ、ベッド濡らしちゃったんだけど……今夜、どうする?」 島良太(しま りょうた)は視線をそらし、喉仏を動かして、私にタオルを投げた。 「先に髪、乾かしてきな。シーツは俺が替えるから、それが済んだら寝ろ」
Short Story · 学園
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愛、終わりて悔いなし

愛、終わりて悔いなし

藤堂樹と結婚して六年、彼は愛人を囲っていた。 その愛人は、息をのむほど綺麗な女だった。そして、少しでも声を荒げると、怯えた子犬のように首をすくめてしまう。 だから樹は、そんな彼女を壊れ物でも扱うかのように、決して大声を出したりはしなかった。 しかし、そのか弱い女は、決して大人しくはしていなかった。ある日、彼女は私の前に現れて騒ぎ立て、事を荒げた。その結果、樹は激怒し、彼女の頬に強烈な平手打ちを見舞ったのだ。 そして翌日。彼女は、首筋を埋め尽くすおびただしいキスマークの写真を、私に送りつけてきた。 【奥さん、藤堂社長って、とっても手荒なんだから。私、怖くって】
Short Story · 恋愛
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遥かなる距離、残り愛の温もり

遥かなる距離、残り愛の温もり

私が再び産科医として働き始めてから、最初に担当することになった胎児エコーは、自分の夫とその昔の恋人の子どもだった。 資料の配偶者欄には、夫と同じ「三上重人」という名前が記されている。 重人が大城菜月の膨らんだお腹に耳を当て、胎児の心音を聞いている写真を見た瞬間、私の瞳孔は一瞬で縮んだ。 そして菜月の後ろに立つあの子は、紛れもなく幼い頃の私そのものではないか! でもあの時、重人は私の子供が死産だったと言ったはずだ! 「おめでとう、重人さん。菜月さん、妊娠したよね。でもさ、当時君が、結菜は死んだって小栗に嘘ついて、実際は菜月さんに預けたんだろ。今さらどうする気なんすか」 「そのまま育てればいい。三上家は金に困らない」重人の声は淡々としていた。「菜月は昔、祖母を助けるために体を張って、その結果もう妊娠しづらい。だから柚希に産ませた。菜月に子どもを返すために必要だっただけだ」
Short Story · 恋愛
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裏切り恋人にさようなら

裏切り恋人にさようなら

誰もが知っている。林田文彦(はやしだ ふみひこ)は、私が二十歳になって彼の嫁になるのを、ただひたすら待っている。 彼は心底から私を愛している。忠誠の証として自らGPSを渡し、居場所を常に把握させてくれた。 それが、婚約パーティーのそのすぐ傍の部屋で。 文彦は色っぽい女を抱き、狂ったように身体を交わらせていた。 GPSの内蔵通信から、彼の荒い息遣いが流れてくる。 「蕾(つぼみ)……今度は、コンドーム五箱全部、使い切ってやる」 私は心が冷め切った。システムを呼び出した。 「任務をやめた。この世界から脱出させて」 耳元で、冷たい電子音が響く。 「任務失敗。脱出まで残り3日」
Short Story · 奇想天外
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振り向くことのない君へ

振り向くことのない君へ

社長である夫との結婚は、6年間ずっと秘密だった。彼は、たった一人の息子に「パパ」とさえ呼ばせてくれなかった。 そんな彼が、また女秘書を優先して息子の誕生日をすっぽかした日。 もう限界だった私は、離婚協議書を残し、息子を連れて彼の元を去った。 あの冷静な夫が信じられないほど取り乱して、私の居場所を突き止めようと、オフィスにまで乗り込んできた。 だけどもう、遅い。私と息子は、二度と振り返らない。
Short Story · 恋愛
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私が去り、妻は狂った

私が去り、妻は狂った

結婚式で、俺は妻の初恋の相手に酒を一杯差し出した。 だが、相手はそれを皆の前で叩き落とした。 「梨衣(りい)をお前に奪われたのは俺の負けだ。だからといってこんな大勢の前で俺を侮辱するのはないだろ!」 妻は烈火のごとく怒り、嫉妬深くて吐き気がする男だと俺を罵った。 彼女はウェディングベールを引きちぎり、席を立ったその男を追って行ってしまった。 俺は慌てて弁明しようと駆け寄ったが、車にはねられた。 妻は一度だけ振り返ったものの、その男を追う足を止めることはなかった。 俺は救急搬送され、命を取り留めたものの、その時、心のどこかが完全に死んだ。 意識を取り戻したあと、三年も連絡をしていなかった父親に電話をかけた。 「親父……縁談、受けるよ」
Short Story · 恋愛
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忘却の風に身を任せ

忘却の風に身を任せ

神崎颯真(かんざき そうま)が事故で大怪我を負った。それを聞いた七瀬詩穂(ななせ しほ)は急いで病院へ駆けつけ、大量出血の彼に1000ccもの血を提供した。 彼の仲間たちが「早く帰って休んだほうがいい」と口々に言うものだから、詩穂は仕方なく病室を後にしたのだが、出口まで来たところで、どうしても心配が募り、また引き返してしまった。 しかし、戻った彼女の目に飛び込んできたのは、看護師が自分の血液が詰まった五袋もの輸血パックをゴミ箱に捨てている光景だった。 その直後、隣の病室から天井が抜けそうなほどの笑い声が響き渡っている。 「はははっ、あのバカ、また騙されたぞ!」
Short Story · 恋愛
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【完結】幼馴染の贈り物

【完結】幼馴染の贈り物

39歳独身悠人の家に突然、幼馴染小百合の娘、18歳になった小鳥がやってきた。 5歳の時に悠人とした、悠人のお嫁さんになると言う約束をかなえるために… 全74話です。
恋愛
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サイコな結婚詐欺師の成り上がり

サイコな結婚詐欺師の成り上がり

2人の息子の為なら何でもできる! 形は歪でも想い合う親子の話。 独裁国家だった自国エスパルが、帝国の領土となる。奴隷ではなく帝国民として受け入れて貰えること、能力が認められれば衣食住一流の生活が保証され帝国の首都で住めるとの発表にリーザは夫を捨て帝国の要職試験を受けに行くことを決意する。夫には離婚に応じて貰えず、息子を連れて子爵邸を脱出。リーザは子爵と離婚するために帝国の皇帝に見初められてしまおう作戦をたてる。私はよく未成年と間違えられるくらい若くて可愛い、息子にも良い生活をさせてあげたい。いざ、皇宮へ。
ファンタジー
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