二人が別れたのは、六度目の冬のことだった
大晦日の晩、藤本朔(ふじもと さく)にメッセージを10通も送ったのに、返事はなかった。
そしたら、彼の女友達の入江綾子(いりえ あやこ)が年越しの様子をインスタにアップしていて、そこに朔も写っていた。
【もう最高!日付が変わった瞬間に年賀状手渡しされるなんて、この人には甘やかされてばっかり。クサいセリフはやめとくね。朔、一生の親友だよ!】
すぐに、その投稿に返信があった。【もともと子供みたいなもんだろ】
二人のやり取りを見ていたら、なんだか急に、すべてがバカらしくなった。
私は衝動を押し殺し、ただ静かに朔へメッセージを一件送った。
【忙しそうだから、私と杏はもう先におやすみするね】
それから私は、朔のことに一切口出ししなくなった。彼の好みの料理を作ることも、週に一度は娘の藤本杏(ふじもと あん)と遊ぶようにと頼むこともやめた。
朔は、私が彼の気を引くためにわざと距離を置いていると思い、特に気にも留めなかった。
そんな中、綾子が「ゲストルームはひとりで寂しいからイヤ」と言い出した。
私は物わかりのいい妻を演じて、嫌な顔ひとつせずに主寝室を譲った。
その様子を見て、朔もようやく事態のおかしさに気づいたのか、慌てて説明をし始めた。
「綾子の家が水漏れで大変なんだ。でも明日の朝にはすぐ帰ってもらうから。
ねぇ、今度、杏を連れて遊園地に行こうか?
これからは、お前と杏との時間をもっと作るからさ」
私はただ微笑んで、何も答えなかった。
だって、私のこれからに、もう朔の居場所はないのだから。