LOGIN2年前、佐藤 みあり は、4年間お付き合いした彼と別れた。 結婚の話をしていた時、彼、塩谷 律樹(しおやりつき)のお母様にブライダルチェックを受けるよう言われた。受けてみると、子どもを授かりにくいことが判明したのだ。 子どもが好きな みありは、授かりにくいということに、とてもショックを受けた。 「それでも、構わない!」と言う律樹。 しかし、律樹のご両親に猛反対を受けた。 それでも、一緒に居ようとする律樹、みありは、それが辛くなって自分から身を引いて連絡を絶った。 なのに、28歳になった今、なぜか みありと同じ会社に、課長として転勤して来たのだ。 復活愛♡の行方は……
View More──10月の初め
まだまだ、ポカポカと暖かい日が多く、 日中は、汗ばむほどの陽気だ。 晴れた朝は、心地良く過ごしやすい気候で嬉しい。 私は、いつもより早く目が覚めたので、 少しだけ早めに出社した。 早く着いたせいか、まだ人も疎らでエレベーターも空いている。 5階でエレベーターを降りて、 「おはようございます」 と、社内で会った人に挨拶をしながら、自分の部署である工事部へと続く長い廊下を歩いて行く。 前から来た男性にも挨拶をしようとした。 「おはようござい……えっ?」 思わず固まってしまった。 「みあり!」 と、私の名前を呼ぶその──5月15日 律樹の誕生日 「29歳のお誕生日おめでとう〜!」 「ありがとう〜」 平日なので、仕事を終えてから急いで帰って来た律樹。 「お疲れ様〜」 「ただいま〜みありに早く会いたかったよ」と言いながらハグをする律樹。 私は、妊娠5ヶ月に入り、少しずつお腹が大きくなって来たので、5月10日で退職したのだ。 「何言ってるのよ、私、会社を辞めてまだ1週間も経ってないよ」と言うと、 「みありの席を見たら居ないのは寂しい」と言う。 「ふふ、毎日家で会ってますけど?」と笑うと、 「そうだけど〜」 「赤ちゃんが聞いてるよ」と言うと、 「赤ちゃん、ただいま! みありを独占出来て良いな〜赤ちゃんも大好きだよ〜」と言ってお腹を撫でている。 そして、グニョっと動いてお腹を蹴る。 「うわっ! 今、動いた!」 「うん、返事してるんじゃない?」と言うと、 「スゲ〜な、今から天才だな」と言っている。 ──最近よく動くんだけどね…… 結局、私の悪阻は、5ヶ月に入り落ち着いた。 やはり空腹になると気持ちが悪くなる食べ悪阻だったので軽い方だった。 1日中少しずつ、ずっと食べていたような気がする。 なので、律樹が帰って来て晩ご飯を食べている時も、先に食べたのに、またお腹が空いて、一口サイズの小さいおにぎりを作っては食べていた。 そして、夜中もお腹が空いて目が覚めてしまうと、 眠れないので、寝る前に小さなおにぎりを食べる。 それを見て、律樹も、 「美味そう」と言って又一緒に食べる。 おかげで、律樹も一緒に少しずつ体重が増えてしまったようだ
すると、長岡さんから、 「あのね〜みありちゃんに、ご報告が……」と言われた。 「はい! どうしたんですか? まさか、辞めるとか?」と言うと、 「ううん」と、おっしゃったので少しホッとして、 「じゃあ?」と聞くと…… 「実は、私、彼氏が出来ました!」 と、照れながらおっしゃった。 「え〜! そうなんですか? 良かったですね、おめでとうございます」と言うと、 「ありがとう。まだ始まったばかりなんだけどね」と、おっしゃる。 「うんうん、どんな方なんですか? どこで出会ったんですか?」と、興味津々で聞くと、 「それがね〜」と、もじもじしながら…… 「原田くん」 と言った…… 「え〜〜〜〜! 原田って、私たちの大学の友達の原田ですか〜?」と、失礼な程、驚いてしまった。 「うん……」と、とても可愛く答える長岡さん。 ──可愛い、もう乙女だ! 「そうなんですね。もしかして、私たちの結婚式の後ですか?」と聞くと、 「うん、そうなの。3次会まで誘ってもらって、意気投合しちゃって」 「ウウッ、長岡さん可愛い〜」と言うと、 「や、やめてよ〜! 私2歳年上だから、ちょっと迷ったんだけどね」と、おっしゃる。 「え? 2歳なんて全然変わらないですよ」と言うと、「そうかなあ〜」と不安そうにおっしゃるので、 「だって76と78なんて、全然分からないじゃないですか?」と言うと、 「そ、そうだけど……28と30は大きいから」と、おっしゃる。 「いえ、全然変わらないですよ。0歳と2歳はさすがに、違いますけど……」と言うと、 「そ、そうよね?」 「はい!」
──金曜日の夜、 大学病院から紹介されたクリニックに月1回通院しているので、仕事帰りに行った。 結婚式があったので、いつもより行くタイミングがズレて1ヶ月とちょっと、少しだけ遅くなってしまった。 ──前回の診察では、まだ妊娠は確認出来なくて、 その後の排卵日がタイミングだったんだ と思った。 律樹も一緒にクリニックに来たがっていたが、仕事が繁忙期なので、1人で行くことに…… 尿検査と血液検査をして、エコーでお腹を確認してもらった。 モニターに映る画像を見せられる。 検査薬で陽性反応が出たことを医師に告げた。 「うん! ココ分かりますか? 胎嚢があるでしょう? これが赤ちゃんの居るお部屋です。ご懐妊おめでとうございます」と言われた。 「ありがとうございます」 やっぱり嬉しくてウルウルした。 お腹の画像をプリントした物を貰った。 まだまだ、とっても小さい。でも、このお腹の中に居るんだと思うと愛おしい。 ──私たちの所に来てくれてありがとうね 妊娠5週目と診断された。 出産予定日は、10月31日。 「2週間後に又来てください。その時に役所で母子手帳を貰って来てくださいね」と言われた。 「それまでにも、もし何か気になることがありましたら、すぐに来てくださいね。何か聞きたいことは、ありますか?」と聞いてくださった。 「私……産めますか?」と聞いていた。 「ええ、もちろん! 元気な赤ちゃん産みましょうね。嚢胞のことが気がかりですか?」と、 「はい」 「妊娠中は、大きくなることもあります。ですが、この大きさなら大丈夫ですよ。もっともっと大きな嚢胞
もしかして、私は、妊娠に気付かずにピルを飲んでいたのかもしれないと思ったから調べた。 〈妊娠中に気づかずに飲み続けていても問題ない〉 「良かった」 ──妊娠した? でも、悪阻がなかった? あっ、律の酒臭さは、いつもより感じたか……私が呑んでないからかと思ってた 「みあり! お腹が空くと気持ち悪くなる悪阻もあるらしいぞ! 食べつわりだって」 「!!!!」 律樹も調べてくれていた。 「みあり! もしかして?」 「え、え? 分かんないけど……もしかする?」 「とりあえず、落ち着け! 俺! あ〜妊娠検査薬、何処で買える? 薬局か、近くにあるかなあ?」と、調べてくれる律樹。 近くに薬局はなかった。 そこで律樹は……誰かに電話している。 「もしもし、島田さん?」 ──!!!! 島田さん? 「お願いがあるんだけど……」と言っている。 ──まさか……嘘でしょう! お酒を飲まない島田さんなら車を出してもらえると思ったのか、妊娠検査薬を買ってホテルまで届けて欲しいとお願いしている。 ──いつまで島田さんは、律樹の使いっぱしりをさせられるのだろう。お気の毒と思いながら、今回は、私もとても助かる。 「ごめんね。あっ! それと、絶対に母には言っちゃダメだよ! じゃあお願いします」と、頼んでしまった律樹。 「島田さんに頼んじゃうんだ」 「うん、マブダチだから」と笑っている。 「マブダチなら披露宴に呼ぶでしょう?」と言うと、 「あ、そうだな、忘れてた」と笑っている。 「ふふふふ」 「それより、みあり! もしかすると、もしかするよね
二次会は、大学サークルのメンバーが中心になって開いてくれた。ホテルの1室を借りてくれたので移動がスムーズで良かった。 律樹と私の高校の時の友達も手伝ってくれたようだ。 友達と友達が仲良くしてくれるのは、嬉しいと思った。 二次会では、パーティー形式で、披露宴の時よりもっとたくさんのゲームをした。 司会者は、大学のサークルメンバーの1人、原田(くん)がしてくれた。 幼少期の写真をたくさん並べて、新郎と新婦を当てるゲーム。 「え〜コレ誰だ? みありは……たぶんコレだと思うんだけどな」 「では、みありさん、律樹はどれでしょう?」 「え〜この2人、似てるけど、きっとこっちだな」 「答えは……2人共大正解!」 「「良かった」」 「ホッ」 「ではでは、次の問題です! 2人の記念日は?」 ──律樹、気づくかなあ? 司会の原田が、「コレは間違えると、大変だよね〜」と言う。 すると…… 「あ〜〜〜〜!」と大きな声で言った律樹。 私がニヤニヤと笑うと、 「では、律樹から答えてもらいましょうか?」と言う原田。 「大学4年の時に、告白したのは、2月23日でした」と言う律樹。 皆んなが、 「え〜! 今日?……」 「そうです! 今日は、俺たちの記念日だった、ごめん! みあり」 「「え〜すご〜い!!!」」と言う友達が拍手をしてくれた。 「ふふ、やっと思い出したんだ!」と言うと、 「ごめ〜ん、いつから気づいてたの?」 「予約する時から」と言うと、 「うわ〜ホントごめん」と謝っている。 「うわっ、律樹忘れてたんだ! 最低〜」と美耶に言われる。 「あんなに目立って、大学の芝生の真ん中で告ったくせに……」と千秋に言われている。 「あ〜最低だよな俺、だって再会した10月1日のことばかり覚えてたから」と言った。 「あ〜律樹ダメダメそんなの言い訳よ」と、 私が何も言っていないのに、美耶と千秋が怒っていて可笑しかった。 「ふふふ」 「はい、では仲直りのキスをしてもらいましょう」と言う原田。 「「え?」」 「イエ〜い!」パチパチと拍手が起こり、 「キス、キス、キス、キス……」とキスコールが始まってしまった。 「え〜とそれは、唇に?」と原田に聞いている律樹。 「当
私は、まず一昨年、亡くなった母への感謝を述べた。 「今日この会場の席に、座ることは叶わなかったですが、きっと笑顔で『おめでとう! 良かったね』と喜んでくれていると思います。お母さん、産んでくれてありがとう! 育ててくれてありがとう!」 それだけで、皆んなの涙を誘ってしまった。 なので、我慢していた私もやっぱり泣いた。 そして、再会した父と祖父母への感謝。 「最初は、やっぱり戸惑いました。でも日を追う毎に、とても大切に思われていることに、嬉しくなり、独りぼっちになったと思った私を元気にしてくれた、お父さん、お爺ちゃん、お婆ちゃん、ありがとうございます。これからもよろしくお願いします」 そして、 「その架け橋となってくれたのは、何より旦那様になってくれた律樹さんなのです」と言うと、 「え?」と驚いている律樹。 「貴方が居なかったら、私は、ずっと独りぼっちだと思っていました。家族になってくれてありがとう! 心から感謝しています。これからもよろしくお願いします」と言うと、律樹はとても驚いて、泣いていた。 そして、律樹のご両親への感謝。 「お義父様、お義母様、律樹さんを産んで育ててくださりありがとうございます。私は、まだまだ未熟で不束者ですが、これからもどうぞよろしくお願いします。そして、一人っ子の私に義弟と義妹が出来ました。これからも仲良くしてください」と挨拶した。 皆んな泣いていた。 そして、花束贈呈。 私はお義母様に花束を贈呈し、お義父様の胸ポケットには1輪の花を差した。律樹は、父に贈呈してくれた。固い握手をし抱き合って父が律樹の背中をトントンと二度叩いた。 最後は、新郎である律樹が皆様にご挨拶してくれた。 「いや〜いきなり妻に泣かされるとは思いませんでした!」と笑っている。 「本日は、皆様ご多用の中、僕たち2人の為に、こんなにたくさんの方々にお集まり
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