それでも…愛

それでも…愛

last updateLast Updated : 2025-10-21
By:  心優(mihiro)Completed
Language: Japanese
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2年前、佐藤 みあり は、4年間お付き合いした彼と別れた。 結婚の話をしていた時、彼、塩谷 律樹(しおやりつき)のお母様にブライダルチェックを受けるよう言われた。受けてみると、子どもを授かりにくいことが判明したのだ。 子どもが好きな みありは、授かりにくいということに、とてもショックを受けた。 「それでも、構わない!」と言う律樹。 しかし、律樹のご両親に猛反対を受けた。 それでも、一緒に居ようとする律樹、みありは、それが辛くなって自分から身を引いて連絡を絶った。 なのに、28歳になった今、なぜか みありと同じ会社に、課長として転勤して来たのだ。 復活愛♡の行方は……

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Chapter 1

第1話 再会

──10月の初め

まだまだ、ポカポカと暖かい日が多く、

日中は、汗ばむほどの陽気だ。

晴れた朝は、心地良く過ごしやすい気候で嬉しい。

私は、いつもより早く目が覚めたので、

少しだけ早めに出社した。

早く着いたせいか、まだ人も疎らでエレベーターも空いている。

5階でエレベーターを降りて、

「おはようございます」

と、社内で会った人に挨拶をしながら、自分の部署である工事部へと続く長い廊下を歩いて行く。

前から来た男性にも挨拶をしようとした。

「おはようござい……えっ?」

思わず固まってしまった。

「みあり!」

と、私の名前を呼ぶそのひとは……

まさかの……

2年ぶりに会う元カレだった。

「えっ! どうして?」

私たちは、とんでもない場所で再会してしまった。

佐藤 みあり 28歳

私には、以前4年間お付き合いをして、結婚を考えていた彼氏が居た。

当時、結婚の話を両親にした彼は、

お母様から私に『ブライダルチェックを受けるよう伝えて欲しい』と言われたようなので、私は病院でそれを受けたのだ。

すると、どうも私には子どもを授かることが、難しいということが判明した。

『もちろん0%ではないですが……』と、医師からの気休めの言葉を受け取った。

目の前が真っ暗になり、かなり落ち込んだ。

子どもが好きだから、将来子どもの居る暮らしを夢見ていたのに……

それでも彼は『子どもが出来なくても良い! 2人で幸せになろう』と言ってくれたのだが、当然彼のご両親は結婚に猛反対。

子どもが授かりにくいというショックと、彼のご両親の反対。

私は、Wでショックを受けた。

それでも私たちは、しばらくは一緒に過ごしていた。

でも、しだいに親に反抗してまで、私と一緒に居る彼のことを見ていると、申し訳なく思えたし、

私自身も彼と一緒に居ることが辛くなってきてしまっていた。

そんな時、あんなことが起こってしまい、良い機会だと思って自ら離れてしまったのだ。

26歳の秋だった。

あれから2年、

ようやく私は、落ち着きかけたところだったのに。

なのに、なのに…

その彼が、また目の前に現れた。

「えっ! どうして?」

「久しぶり!」と、ニコやかな笑顔を私に向ける彼は……

塩谷 律樹しおや りつき28歳

大学時代の同級生だ。

「ひ、久しぶり……」

と思わず挨拶している自分が居る。

──って、挨拶してる場合じゃないわよ!

ニコニコ笑っている律樹に……

「じゃなくて、どうして、ココに居るの?」

と、もう一度聞いた。

すると、

「どうしてって、俺今日から··で働くからだよ」と言う。

··とは、私が大学卒業後に就職したゼネコン会社だ。

今私たちは、その社内の廊下で、2年ぶりにバッタリ会っているのだから、そりゃあ驚いても不思議はない。

朝っぱらから、私が寝ぼけて夢でも見ているのかと思った。

「え? なんで? 転職?」と聞くと、

「まあ、そんなとこ」と律樹は言った。

律樹とは、大学卒業後は別々の会社に就職した。

同じ系列の会社ではあったが、別の会社だから

別れてしまえば、もう会うことなどないと思っていた。

「まさか、ストーカー?」と言うと、

「なんてこと言うんだよ! ちゃんと正規ルートから入ったんだよ!」と言った律樹。

「ヘッドハンティングでもされたの?」と聞くと、

「ま、そんな感じだ」と微笑みながら言った。

「ふ〜ん、そうなんだ……」

と、納得したものの、

──いやいや、違う違う! 同じ会社ならこれからも度々顔を合わせてしまうじゃん!

私は、慌てて、

「じゃあ!」と、自分の部署へ逃げようとすると、

「待って!」と、律樹に腕を掴まれた。

「え!」と驚くと、

「それだけ? 冷たいなあ〜あの時のこと、じっくり聞かせてよ!」と言われた。

冷たいと言われても、もう2年も前に私たちは、別れてしまっているのだし。

まあ、最も私から一方的にだったから、怒っているのか? とは思ったが……

それ以降、私から連絡も断ったので、本当に2年ぶりで何を話せば良いのかすら分からなかった。

「だって……」

「もう、俺のこと嫌いになった?」と聞かれた。

──嫌いになんてなるわけない!

簡単に忘れられれば、どれだけ気が楽かと毎日思い出してしまっていたのに……

私は、答えられずに、

「仕事……行かなきゃ」と言った。

「分かった! じゃあ、また後でな」と言われた。

──ん? 後で? 出来ればあまり会いたくない。

顔を見るたびに、また、思いが募ってしまう

──簡単に忘れられるわけなどないのだから……

「おはようございます」

私は自分の部署である工事部まで行き、席に着いた。

衝撃過ぎて、ボーっとしていると、

隣りから2歳上の先輩、長岡さんに声を掛けられた。

「おはよう! みありちゃん! 聞いた?」と。

「おはようございます! え? どうしたんですか?」と聞くと……

「今日から新しい課長が来るんだって!」と言う長岡さん。

「え? そうなんですか?」

──新しい課長

嫌な予感しかしないのは、気のせいか……

そして始業時間になると、

「おはようございます! 皆さん! ちょっと良いですか?」と朝礼の合図と共に部長が、部署に居る皆さんに声を掛けた。

部長の方に視線を向けると……

──ゲッ! やっぱり!

部長の隣りには、律樹が立って居た。

──嘘でしょう!

私は、左手で前髪を触りながら顔を覆うように隠した。

あんなにも、会いたい、会いたい! と毎日思い続けていた人なのに……

つい先程からは、最も会いたくない! と思ってしまっている人だ。

──どうしてよ! こんな事ってある?

顔を隠すように、額に手を当てているのだが私の顔は、丸見えのようだ。

律樹がこちらを見ている。一瞬右の口角を上げて小さく笑ったのが見えた。

だから、さっき

『また後でな』と言ったんだなと思った。

「ハア〜」と、ため息を吐く。

律樹は、何やら挨拶をしているようだが私の耳には何も入って来ない。

皆さんの拍手で、挨拶を終えたことが分かった。

席に着いて両手で頭を抱えた。

長岡さんに、「みありちゃん、どうしたの? 具合悪いの?」と聞かれた。

「ハア〜病みそうです」と言うと、

「え? どうしたの? 大丈夫?」と真剣に心配してくれているので、

「あ、大丈夫です!」と、引き攣った笑顔で答えた。

「そ、そう? 塩谷 律樹しおや りつきさんだって、カッコイイね」と、おっしゃった。

──ええ、よ〜く存じ上げておりますよ

彼は、昔からカッコ良くて、優しくて、モテる男なんですよ〜

とは、言えず……

「ふふ」と、また微妙な顔で愛想笑いをした。

いつものノリとは全く違う私に、

「ホントに大丈夫?」と言う長岡さんの後ろから、

「どうしたんですか? 佐藤さん、具合悪いんですか?」と聞いてきたのは、律樹だった。

「!!!」

私は、目を大きく見開いてしまった。

──貴方のせいで、具合が悪くなりそうなのよ

と、一瞬目がバチッと合ったが、すぐに目線を外し、

「あ、大丈夫です」と言うと、

「そうですか? では、佐藤さんに少しお伺いしたいことが……」と言った。

「……なんでしょうか?」と目を合わさずに聞くと、

「工事部のこと、色々教えてもらえませんか?」と言われた。

「え?」

思わず律樹の顔を見てしまった。

──どうして私なのよ?

と思ったが、

長岡さんに、

「みありちゃん、教えて差し上げて」と言われたので、断れなかった。

「えっ、あ、はあ〜」

「では、会議室を使っても良いですか?」と律樹は、長岡さんに聞いている。

「どうぞどうぞ」と満面の笑みで答える長岡さん。

──ああ、2人きりになってしまう

ヤバイ〜

そして、律樹が会議室に入ってから、私も後からゆっくりと中に入った。

すると、

「カチャ!」と、律樹は鍵を掛けた。

──どうして鍵なんて掛けるのよ!

オマケに外から見えないように、テキパキとガラス張りの部屋のブラインドを全部閉めて、外からの視線を遮断した。

──何をするつもりなの?

てか、初めて来たはずなのに、妙に手慣れてるわね? 前の会社もこんな感じだったのかしら?

と、私はどうでもいいことを考えていた。

「良し! みあり、コレで大丈夫だ! 遠慮なく話してくれ」と言った。

「な、何をですか?」と聞くと、

ゆっくり近づいて来る律樹の顔をジーッと見つめていると、目の前で止まった。

──ドキドキ……ドキドキ……

私は、私より背の高い律樹を見上げている。

「ハハッ、仕事の話に決まってるだろ?」と

言われて、ようやく目線を落とした。

──ホッ

すると、

「もしかして、今ドキッとした?」と、わざわざ屈んで私の顔を覗き込みながら言っている律樹。

──なんなのよ! もう〜!

弄ばれている。

すると、

「ごめん、一瞬だけ……」と言って、私をぎゅっと抱きしめた。

「ウッ!!!」

──えっ? 不意打ち……ずるい! 反則!

驚いたのと、少し期待してしまっていた自分も居て、突き放すことが出来ずに今、私は黙って律樹に抱きしめられている。

──2年ぶりの律樹だ……

律樹のムスクの香りが私の鼻腔を刺激する。

泣きそうになってしまった。

すると、

「ごめん、ありがとう! さあ、仕事しよう、座って!」と私のカラダから離れた律樹は、すぐに切り替えた。

「あ……は、い……」

私がボーっとしながら、端の椅子に座ると、

律樹は、直角に角の椅子に座った。

会議室は、十数人が入れるほど広いのに、入口からすぐのテーブルの一角だけを2人で使っている。

律樹は部長から貰ったのか資料を見ながら、1課の課長は誰で、主任は……と私に班分けを確認している。

そして、念入りに個々の性格や特徴を私から聞き出しそれをメモしているようだ。

こんな風に努力家だからヘッドハンティングもされたのだろうと思った。

その顔は、真剣そのもので、

──仕事の時は、こんな顔をするんだ!

と、少し見入ってしまった。

「ん? で?」と言われて、

「あ……」と、また私は、話を続けた。

工事部は、3課まで有って、律樹は2課の課長に就任したようだ。

「りっ……塩谷しおや課長は、2課の課長さんなんですね」と言うと、

「律で良いよ!」と言うので、

「いえ、会社なので」と言うと、

「今、·って言いそうになったくせに〜」と揶揄う。

「いえ、言ってません」と言うと、

「嘘だ〜」と笑っている。

私は遠くを見て、知らんぷりをする。

「お〜い! どこ見てんの〜? ハハッ、

そう! 俺は2課だよ。みあり、さっき俺の演説を全然聞いてなかったもんな〜」とニヤリと笑われた。

「すみません。遅ればせながら、課長就任おめでとうございます!」と言うと、

「ありがとう!」と、満面の笑みを浮かべた。

──くぅ〜その笑顔は、最強なんだわ!

ハア〜ダメだよ! その笑顔は皆んなに見せちゃ!

と、思ってしまっている自分がいる。

「それと……···呼びは、マズイので··でお願いします」と言うと、

「分かってるよ! ··さん! でも、2人きりの時ぐらい良いでしょう?」と、私の手を握る。

私は、スッと手を引っ込めて、

「ダメです! 会社だし……手も! それに私たち、もうとっくに別れてますから」と言うと、

「勝手に終わらせたくせに……!」と言われた。

「それは……! 今は、仕事の話ですよ」

「じゃあ、定時過ぎたら、きちんと話そう!」と言われた。

今更、何を話すのだろう。

もう私たちは、戻れないのに……

たとえ戻ったとしても、又律樹のご両親に反対されるだけ。

私たち2人が一緒に居る未来など、もう私には想像出来なくなってきているのに……

律樹は、どう思ってるのだろう?

さっきのハグは、どういう意味だったのだろう?

今更、あの時のことを聞いて、何が変わると言うのだろう。

でも、私も律樹に聞きたいことがたくさんある。

とりあえず、話そうと思う。

2人で……

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第1話 再会
──10月の初め まだまだ、ポカポカと暖かい日が多く、 日中は、汗ばむほどの陽気だ。 晴れた朝は、心地良く過ごしやすい気候で嬉しい。 私は、いつもより早く目が覚めたので、 少しだけ早めに出社した。 早く着いたせいか、まだ人も疎らでエレベーターも空いている。 5階でエレベーターを降りて、 「おはようございます」 と、社内で会った人に挨拶をしながら、自分の部署である工事部へと続く長い廊下を歩いて行く。 前から来た男性にも挨拶をしようとした。 「おはようござい……えっ?」 思わず固まってしまった。 「みあり!」 と、私の名前を呼ぶその男は…… まさかの…… 2年ぶりに会う元カレだった。 「えっ! どうして?」 私たちは、とんでもない場所で再会してしまった。 佐藤 みあり 28歳 私には、以前4年間お付き合いをして、結婚を考えていた彼氏が居た。 当時、結婚の話を両親にした彼は、 お母様から私に『ブライダルチェックを受けるよう伝えて欲しい』と言われたようなので、私は病院でそれを受けたのだ。 すると、どうも私には子どもを授かることが、難しいということが判明した。 『もちろん0%ではないですが……』と、医師からの気休めの言葉を受け取った。 目の前が真っ暗になり、かなり落ち込んだ。 子どもが好きだから、将来子どもの居る暮らしを夢見ていたのに…… それでも彼は『子どもが出来なくても良い! 2人で幸せになろう』と言ってくれたのだが、当然彼のご両親は結婚に猛反対。 子どもが授かりにくいというショックと、彼のご両親の反対。 私は、Wでショックを受けた。 それでも私たちは、しばらくは一緒に過ごしていた。 でも、しだいに親に反抗してまで、私と一緒に居る彼のことを見ていると、申し訳なく思えたし、 私自身も彼と一緒に居ることが辛くなってきてしまっていた。 そんな時、あんなことが起こってしまい、良い機会だと思って自ら離れてしまったのだ。 26歳の秋だった。 あれから2年、 ようやく私は、落ち着きかけたところだったのに。 なのに、なのに… その彼が、また目の前に現れた。 「えっ! どうして?」 「久しぶり!」と、ニコやかな笑顔を私に向ける彼は…… 塩谷 律樹28歳 大学時代の同級生だ。
last updateLast Updated : 2025-09-18
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第2話 話し合い
※※※※※もうすぐ定時の17時になろうとしている。律樹の方を見た。仕事をしている時は、当然真面目に取り組んでいる律樹。──やっぱり、仕事をしている時の顔、カッコイイなあ〜そう思いながら、事務所の壁に掛けられた時計を見ていると、定時を知らせるチャイムが鳴った。その下から律樹がこちらを見ている。バチッと目が合ってしまった! スッと目線を外し、私は帰り支度を始めた。──今日、話すのかなあ?とりあえず、キリの良い所で今日は早めに帰ろう長岡さんに、「私今日は、定時で帰りますね」と言うと、「うん、みありちゃん、お疲れ様〜」と。律樹の方をチラッと見ると、まだこちらを見ている。すると、長岡さんも気づいて、「塩谷課長、なんだか、みありちゃんのことをジッと見てる?」と言われた。「いや〜あちらの方を見てるんじゃないですか?」と、私を通り越して後ろを見てるのだと、私は後方を指差した。「ん? みありちゃんは、塩谷課長のこと、タイプじゃないの?」と聞かれた。──そりゃあ、タイプかどうかと聞かれたら、めちゃくちゃタイプですよ!4年間もお付き合いしていたのですからね〜とは、言えない……「う〜ん、どうかな〜」と、笑って誤魔化した。すると、長岡さんは、私の額に手を当てて、「熱はないわね? でも、みありちゃん今日は、なんだか少し変よね?」と言われた。長岡さんには、私の態度がおかしい事がバレバレのようだ。だって、いつもなら、『イケメンですね〜!』と長岡さんと一緒に盛り上がるのが常だもの。そりゃあそうだ。「ハハッ、そうですか? ちょっと朝から体調がイマイチだからかな〜」と言うと、「そっか、じゃあ今日は、早めに休んだ方が良いわね」と言ってくださった。「はい! そうしますね」「では、お先に失礼します」と、皆さんにご挨拶してから、部署を出た。「お疲れ様〜」「「お疲れ様でした」」長い廊下を歩いてエレベーターまで行くと、後ろから、「お疲れ!」と言う声がした。──えっ、嘘! 律樹だ! 早っ!「お疲れ様です」と言うと、耳元で、「ちょっと、付き合って!」と言った。「え?」と顔を見ると、「話そう!」と言われた。──やっぱり今日なのね〜その後、続々と帰る人たちがエレベーター前に集まって来たので、「分かりました」とだけ言った。このま
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第3話 探偵?
「なら、一緒になんて住めないよ」と言うと、 「どうして?」 と、聞くので、先程の私の考えを伝えた。 「あ〜そうかもなあ〜」 律樹は自分でも、両親があまりにも静観しているのがおかしいと思っていたようだ。 「なら、こうして、私と会ってることも逐一報告されているのかもね」と言うと、 律樹は、突然そ〜っと立ち上がり、シーっと人差し指を立てて口に当てている。 そして、部屋の入口まで行き、一気に扉を開けた! すると、 「うわっ!」と、声を上げる40代位の男性が居た。 「あっ! やっぱり!」と律樹は言った。 「え?」と私が驚くと…… 律樹は、その男性に、 「島田さん! ココで何してんの?」と、しゃがみこんで聞いた。 「あ、申し訳ありません。奥様のご命令で……」と言った。 律樹は、ずっと後を付けられていたのだろうか…… 「なるほどね〜で、いつから?」と聞く律樹に、 「……4月から」と言う男性。 「ブッ」 ──最初からつけられてんじゃん! と、私は思わず笑ってしまった。 「はあ〜? 俺が家を出てからすぐ?」 「あ、はい……」と言う島田という男性。 ──やっぱり…… そして、律樹は、 「ねぇ〜島田さん! この事が母にバレたら、怒られるよね〜? クビじゃないの〜?」と、島田さんを脅し始めた。 「はあ〜まあ……」 と困ったような顔をしているのが扉からチラッと見えた。 「じゃあ、俺と手を組まない?」と言う律樹。 こんな時の律樹は、悪知恵が働くのだなと思った。 「え? それは、どういう?」と聞かれる島田さん。 「見つかったこと、黙っててあげるから、島田さんも、俺がみありと居たことを黙ってて!」 と取り引きをしたのだ。 「いや〜でも〜」と言う島田さん。 「じゃあ、言う? 間違いなく解雇だな!」と言う律樹に、 「それは! う〜ん……」と困っている様子の島田さん。 「俺はただ転職しただけで、今後も みありの存在は透明人間だと思って言わないでくれたら、きっとそのまま働けると思うし……」と言うと、 島田さんは、とても悩んでいる様子だが、 「お互いの為に、そうしよう!」と、手を出して握手を求めている律樹。 そして、無理矢理、島田さんの手を取って、にこやかに握手をする。 「え〜! うわ〜、はあ〜」と、困った顔
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第4話 再愛
「ホントに?」と驚きながら聞く律樹。 「うん……」と、ようやく頷いた私の顔は、既に涙でいっぱいだった。 これから、また2人には、厳しい試練が待っているのかもしれない。 それでも、律樹と2人なら乗り越えられるような気がする。根拠なんて何もない。 ただ1度離れてみて、2人の絆がより強いものになったと思えるからだ。 再び始まった愛。 ──もう離れたくない ただ、それだけ…… 「あ〜! 泣かなくて良いよ」 と律樹は慌てて涙を指で拭ってくれているが、追いつかないようだ。 以前は、どちらかというと硬派で寡黙で口数が少なかったのに、今日は一生懸命に話してくれる律樹。 久しぶりに会って、いっぱい話してくれていることに、私は驚いているほどだ。 黙って抱きしめてくれる。 ──やっぱり律樹だ! こういうところは、4年もの間付き合っていたのだもの、お互い黙っていても分かりあえる。 以前のように戻った感覚で嬉しい。 今日、こっそり律樹が仕事をしている時の顔を 何度も見ていた。初めて見る仕事中の顔。 仕事の時は、真面目な顔でキリッとしてカッコ良かったのに、2人の時は目尻が下がって甘々だ。 私にしか見せない顔 私だけが知る特別な顔 ──嬉しい そして私は、 「ちょっと待ってね」 と、律樹から離れて、バッグから自分のスマホを取り出した。 そして、また律樹とメッセージでのやり取りを再開すべく、ブロックを外した。 〈よろしくお願いします〉の猫のスタンプを律樹に送った。 その
last updateLast Updated : 2025-09-20
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第5話 会社では…
翌日、いつも通りに出社。 エントランスを通って、1階のエレベーター前に 行くと、後ろから律樹が、 「佐藤さん、おはよう!」と言った。 「あ、課長! おはようございます」と何もなかったかのように自然に挨拶をする。 でも律樹は、ニコニコしている。 周りにも人が続々と出社して来ている。 ──あまりニコニコしちゃダメじゃない! バレちゃうよ! と私は思ってしまったが、気にし過ぎかな…… エレベーターに乗り込む。 エレベーターは、数台あるが、 朝は、いつものことながら大勢の社員さんが乗り込むので、わりと満員になる。 律樹は、私を安全な奥の角へと行かせてくれた。 と、思ったら…… まるでテレビドラマのように、顔色ひとつ変えずに、スッと自然に恋人繋ぎで手を繋いだのだ。 「!!!」 私も顔に出さないようにしなきゃ! と思いながらも、ニヤッと一瞬口角が上がってしまった。 上を向いて、階数を知らせる数字を見ながら誤魔化す。 皆んな前を向いて乗っているのだから、誰も見ていない。 途中の階で、降りられる方もいらっしゃるので、 隙間が出来ると、誰かに見つかってしまいそう。 ドキドキしていたが、律樹は手を離そうとしない。 自分のカラダを斜めにして、見えないように上手く隠しているようだ。 そして、いよいよ私たちが降りる階だ。 ギリギリまで手を離さない律樹。 私は、ドキドキしていると、 今乗っている方々は、皆同じ5階で降りられるようで、私たちが1番最後だった。
last updateLast Updated : 2025-09-21
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第6話 伝える
私は、ついに長岡さんにだけは、本当のことを伝えることにした。 会議室から出ると、長岡さんは、 「大丈夫だった?」と聞いてくださった。 「あ、はい! あのう〜長岡さん! 今日又お昼休み、一緒に食べても良いですか?」と聞くと、 「うん、もちろんよ!」と。 いつも長岡さんは、席で手作りのお弁当を食べていらっしゃる。 私もお弁当の時は、席で食べるが、時々食べに出てしまったり、買いに出たりしている。 仲良くしていた同期の女子は、皆んな結婚して辞めてしまったのだ。 さほど話さない同期なら居るが、一緒に昼食を食べるような間柄ではない。 なので、私が今、 1番仲が良いと思っているのは、長岡さんなのだ。 私が勝手に思っているだけかもしれないが、信頼している先輩女性だ。 だから、早く本当のことを話したい! もしかすると、 『どうして、言ってくれなかったの?』と、怒られるかもしれないと思うと怖い。 しかも、長岡さんは、少なからず律樹に興味があるようだから、 もし、私たちのことを話すと、避けられてしまうかもしれないという思いもあって不安なのだ。 そして、お昼を知らせるチャイムが鳴った。 「じゃあ、お弁当食べよう〜」と、言ってくれる長岡さん。 「はい!」 まずは、給湯室に手を洗いに行く。 律樹は、他の課長たちと食堂へ行くようだ。 出掛けて行く時に、チラッと目が合った。 お互い目配せをしてしまう。 まるで目だけで会話しているようだ。 席に戻ってお弁当箱を開けると、 「みありちゃんのお弁当、いつも可
last updateLast Updated : 2025-09-22
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第8話 ついに…
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第9話 週末
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第10話 律樹のマンション
そして、律樹のマンションへ 1部屋は、私の部屋として自由に使って良いと言ってくれた。 でも、まだ行ったり来たりの生活だから家具は、自分のマンションにあるので、持って来た洋服をクローゼットに掛けさせてもらった。 さっき買った日用品をお風呂と洗面所に置く。 「冷蔵庫開けても良い?」と聞くと、 「もちろん! 聞かなくても自分の家だと思ってくれて良いから」と言う。 冷蔵庫を開けると、あまり食材が入っていない。律樹は、たまにしか料理をしないからだ。 「明日、食材の買い物もしなきゃね」 ──これからも平日は、私の部屋で過ごすなら、明日と明後日の分だけで良いか…… でも、平日用の食材も買って常備菜を作って持って帰らなきゃ……と1人で考える。 「やっぱり、2箇所での生活は大変よね〜」と言うと、 「だろう?」と、嬉しそうに笑っている。 早くココに引っ越して来い! と言う顔だ。 「でも、朝30分早くなるのはちょっと辛いな」 「まだ近い方でしょう? すぐに慣れるよ」 「そうだけど、今までが近過ぎた!」と言うと、 「そりゃあそうだよな〜」と言う。 「あっ! 会社の近くで探し直せばいいんじゃない?」と言うと、 「え〜せっかく角部屋ゲットしたのに……」と悲しそうな顔をしている。 確かに、8階の角部屋で景色は、とても良い! でも、この景色はマンションに居る時にしか見ることが出来ない。 今は、2人とも朝から夕方まで会社で働いている。しかも平日は私の部屋。 ──勿体ない 将来的に私が仕事を辞めて、ずっとこの部屋に居る時は、来るのだろうか? 「う〜ん悩むなあ。律は、どうして、
last updateLast Updated : 2025-09-26
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