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第2話:魔王を洗ったら部下になった件

Author: fuu
last update Last Updated: 2025-07-02 19:30:13

「やめろ!放せ!」

「落ち着きなさいよ。まだ子供でしょ。大丈夫大丈夫。」

どうも、エリシア・グランフォードです。

現在戦闘後の入浴中。

私5歳。少年推定4、5歳。

問題ないない!

前世では従弟の子とかお風呂に入れてたしね。

「そうじゃなくて……やめろ!放せ!自分で洗える!」

「そう?でも泥だらけだったしな~。お!角だ!へーすべすべ。」

「ほんっとうにやめろって!」

う~ん、どうやら角はセクハラらしい。

今度から気を付けよう。

ほら、上司としてセクハラ問題はちょっとね……。

ということで魔人の少年、カイラム=ゼファル君が私の初めての部下だ。

執事やメイド達は一部は国外に逃がしたけどほとんどの人が付いてきてくれた。

けどあくまでも彼らは父の部下だ。

「私の部下はあなたが初めてってわけ!」

「おう……。」

「無礼な!この方をどなたと心得る!恐れ多くも前魔王様のお孫様にあらせられるぞ!」

「な、なんだってー!?魔王って自然発生するものじゃなかったんだ!」

「なんだその失礼な考えは!?」

「リビア。いい、やめろ。負けたのは俺だ。」

突然飛び出してきた蝙蝠のような鳥のような魔物?はリビアというらしい。

どうやら魔王の律儀な参謀役みたいだ。

というかこの子が魔王なのかな?

前魔王って言ってるし。

「ふ~む、つまり魔王カイラム君を部下にしたってわけか。」

「貴様!失礼であるぞ!」

「リビアは黙っててね~。じゃあそうね。あなたは宰相よ!」

「宰相?」

「そう!国の政策や行政を総括する人!」

「っそれは知っているが……俺は魔王だぞ?」

「だから何?」

「国を乗っ取ったりとか、するかも。」

「そしたらぶっ飛ばすだけよ。」

「うぐ……。」

先ほどの突きを思い出したのか顔色が悪くなるカイラム君!

そんなにトラウマに?

「……わかった。お前の宰相になるよ。」

「そう!よろしくね!カイラム君!」

「……おう。」

手を差し出せば少し照れくさそうに握手に応じてくれるカイラム君。

なんだいい子じゃない!

それに顔立ちも整っているし……輝く銀色の髪……きらめく琥珀色の瞳……は!これは!

「ハーレム要員なのでは!?」

「は?」

「いや、そういえば説明してなかったなって。」

私は今までの経緯と目標をカイラム君に共有した。

カイラム君は心底いやそうな顔をしていた。

「そんな顔しなくても。」

「やろうとしていることが暴君。」

「いや~統治はちゃんとするつもりだよ?」

「動機が不純。」

「いや~純粋だよ?」

「なるべくかかわらないでほしい。」

「そこまで言うことないでしょ!?今の王家だって第二夫人だの第三夫人だのいるんだから!」

私は拗ねた。

それはもう盛大に拗ねた。

ちょっと父と母が心配して「今日はエリシアの好物のパンにしようか」なんて話し合うぐらい拗ねた。

そして立ち直った。

パンはうまい!

「これ……美味しい。」

「うん?カイラム君、こういうの食べるの初めて?」

「うん……基本的にその辺の魔力と草で生きてきたから……。」

「え、可哀そう。私のパン分けてあげる。」

「うん……ありがとう。」

はぐはぐと一生懸命に食べている姿を見ると少し可哀そうになる。

いや、同情なんていらないかもしれないけれど、お腹いっぱい食べさせてあげたくなる。

「……よし!うちの国家はグルメ国家にしよう!」

「は?」

「いいわね!美味しいものが集まる国!」

「食は人間の三大欲求の一つだからねぇ。つかめれば大きな力になるよ。」

「よぉし!頑張って豊かな国にするぞ~!」

「豊かな、国。」

こうして私たち家族、もといグランフォード領の方針は決まった。

人々が豊かに暮らす国家!

それを目指すためにはたくさんの障害があるけれど、まずは少しずつ進んでいこう!

——〈次話〉“討伐命令!王家の刺客が迫る”

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