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第9話

last update 최신 업데이트: 2025-05-15 18:31:13

明くる朝、私は曇天のような心持ちを奮い立たせて身支度を整え、それを顔に出さないよう気をつけて朝餐を済ませた。

そしてマストレットとガネーシャを書庫に案内する。二人とも目を輝かせて多種多様な蔵書の棚を見回していた。

「こちらの棚は語学、その隣は経済学ですわ。あちらは古くから伝わるものから流行を捉えたものまで含む物語、それから──」

「ガネーシャ、あの扉は?」

私が書架ごとの説明をして回っていると、マストレットが書庫の奥に目をつけた。

扉の奥には二人に見られたくない書物がある。鍵がかけられているから、マストレットが好奇心でドアノブを捻っても開かない。

「マストレットお兄様、その扉の向こうには希少で特別な書物が収められた書架が並んでおりますの。入室出来るのは公爵家でも限られた者のみですわ」

「ガネーシャは入る事を許されているのか?」

「私は公爵家直系の娘ですので、お父様より鍵を与えられておりますわ」

「ガネーシャが鍵を与えられているのなら、その鍵を持ってきて開けてくれないか?」

ああ、マストレットの執着心が面倒くさい事。

「残念ですが、本日はそちらへの案内をお父様から許されてはおりませんので、致しかねますのよ」

あしらおうとしたら、マストレットは瞳を翳らせて、見るからに不満そうな顔になった。

「そうか、私達は公爵家に迎え入れられても、所詮はよそ者なんだな」

「考えすぎですわ、マストレットお兄様。まだ公爵家に来て日も浅いですもの、単にそれだけの理由でしてよ。それより先ほど紹介致しました語学と経済学の書物をご覧になって下さいませ。長男のマストレットお兄様には必須になりますわ」

内心ではうんざりしながら話題を変えようとしたものの、マストレットは諦めようとしなかった。

「ダリア、お前も同じ思いだろう?」

「ええ、お兄様。私達は公爵家から認められていない存在……招かれざる者なのですわ。今なお使用人さえ私達によそよそしいですし、こんな惨めな思いをさせられるだなんて」

言い募る二人は、すっかり悲劇の主人公気取りだった。本心でも何かを狙っているとしても、お父様から許しを得ていないのは事実だし、こんな事を私に言い募られても迷惑でしかない。

かと言って、冷たく突き放して私への悪意が増幅してしまうのも、後でお父様にどのような告げ口をされるかと思えば都合が悪いから、言葉は選ばないといけない。

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