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恋のマッチアップ8

Author: 相沢蒼依
last update publish date: 2025-12-13 06:07:45

 情けなさを晒したくはなかったが、震える躰を両手で抱きしめながら、その場にしゃがみ込んだ。

「笹良の気持ちを考えずに、怖がらせて悪かった。答えが見つからないせいで、どうしていいかわからなくて焦っちゃって」

「必死になるのも分かるけど、その……。加賀谷が導き出したそれを俺がしたら、勃つモノが勃たなくなるのか?」

 たどたどしさを表す俺の問いかけに、突っ立ったままでいる加賀谷の表情がみるみるうちに曇った。

「加賀谷、おまえその顔」

「可能性の問題だ。実際にやってみないとわからない」

「やるって、何をするんだ?」

「それをするのに原因が知りたい。いつからシュートを外しはじめた?」

 心の奥底に封印している思い出――そのことを考えたら躰の震えは止まったが、代わりに違う感情がメンタルをじわじわと支配する。

「笹良、俺さ、おまえに教えられたことがあるんだ」

 なかなか口を割らない様子を見て、加賀谷が先に話しかけてきた。

「俺が教えたこと?」

「ああ。スタメン入りできない選手について、まったく考えてなかった」

 不意に背中を向けて歩き出し、ゴール下に転がったままのボールを取りに行く。

「バスケの上
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    「江藤さんの場合、女ばかりの行列に並んだとしても、違和感があまりないと思うんだよね。そこにいるだけで、絵になるからさ。きっとお客さんのために買うのかしらなんて思われて、自然とスルーされるんじゃないかな」 のろけまくる弟の話を聞いて、宮本の口角が自然と上がっていった。「だよね……。江藤ちんは俺と違って格好いいから、たとえ下着売り場にいたとしても、彼女のものを買うと思われて、自然とスルーされそうだ」「兄貴の例え話、なんだか極端だなぁ。だけど俺たち兄弟が江藤さんが平気なところに顔を出しても、女性客にスルーされないことくらいは分かる」「佑輝、すっごく美味しかったって言ってたよね。江藤ちんから貰ったチョコレート」 昨年わざわざ電話を寄越すなり、ここぞとばかりに自慢されていたせいで、強く印象に残っていた。「うめぇってもんじゃなかった。もんのすごく美味って感じ! チョコレートの味が濃くてさ、それが口の中で溶けていく感じがまろやかで甘すぎなくて、躰が震えちゃうくらいに美味しかった」「へぇ、そんなに美味しかったのか」「うん! 江藤さんに言わせると「芳醇なカカオの香りが……」って、テレビに出てくる美食家みたいなことを言ってたっけ。忘れちゃったけど」 一番聞きたいことを忘れた弟に、宮本はできの悪さをひしひしと感じた。「今年は、どうするんだろうな」「マメな江藤さんのことだから、二年連続で同じ店のものを贈るなんてことを、絶対にしないと思うんだよね。決算期で仕事が忙しいのに休日を使って、きっとどこかのお店に並んでるような気がする」「そっか。ふたりは相変わらず、うまくいってるんだな」「……実は、そうでもなくて」「喧嘩するほど仲がいいっていうだろ?」(そういえば最近、江藤ちんからの愚痴メッセや電話が着ていないな――)「喧嘩というか、そういうんじゃなくてさ。この間、江藤さんの実家に顔を出したんだ。ものすごい勇気を出しまくった」 一度は逃げてしまった挨拶の場に顔を出したことを、心の中で賞賛しまくった。口に出すとすぐにつけ上がるので、あえて言葉にしない。兄として、弟のコントロールはバッチリなのである。

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    「ったく……。雅輝のせいだっていうのに」 橋本がチラシを真剣に眺めて検討していると、隣にいる宮本の太い二の腕が腰に回される。『何か掘り出し物でもありましたか?』 顔を寄せてきたと思ったら、頬にキスを落とす。「真面目に探せって。この物件良さげなんだけどさ、青空駐車場が歩いて30分くらいかかる場所なんだ」『俺は別にかまいませんよ』「駄目だ。疲れた躰を引きずって、30分も歩かせるわけにはいかない。絶対に次の日に響いちまうだろ」 トラック運転手の仕事のつらさを知っているからこそ、宮本の躰を考えて探していた。それなのに――。『俺ってば陽さんに超愛されてますね、嬉しいなぁ』 橋本が持っているチラシを奪取し、がばっと抱きついて頬擦りしてくる。「ぉ、おい!」『陽さんに愛を返したいです。いいでしょ?』 反論を防ぐような笑みや、行為を断れないような潤んだまなざしに、橋本は簡単に押し倒されてしまったのだった。(縋ってくる感じの捨てられた子犬みたいな目は、絶対に反則だろ) しかもそれを無意識に発動させて、抵抗する橋本の動きを止めるあたり、天才的だと思わずにはいられない。 年上で腕力を伴うことなら橋本が絶対的に上なのに、それを易々と無力化する宮本の能力の恐ろしさを、改めて思い知った。「大好きな雅輝に殴る蹴るなんてことは、俺にはありえないしな。参った……」 参ったついでに、引越しのことを第三者に相談してみようと考えた。 一番手っ取り早い人物、それは――。

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  • BL小説短編集   両片思い3

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