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LAST DRIVE〜君と過ごす最後の自由〜
LAST DRIVE〜君と過ごす最後の自由〜
Author: 神木セイユ

0.プロローグ

last update publish date: 2026-08-17 11:04:33

 非常ベルのけたたましい音が鳴り響く。

 暗闇の中、二人の女性が息を切らしながら背後の気配から逃げていた。

「お母さん、早く ! 」

 娘は母の腕を肩に掛け、引き摺るように歩き始める。だがすぐに母親が座り込み、捻挫した足の腫れを見て項垂れた。

「琴音……これを」

「何 ? 」

 母親が懐から取り出した見慣れない封書。何も分からないままポケットへねじ込むと、娘は力任せにグイグイと母親を立たせようとする。

「それね、お母さんの診断書。お母さんね……もう長くないの」

「何 ? なんの話してるの ? お母さん、早く立ってよ ! 」

「聞きなさい ! 

 絶対に見つかっては駄目。町へ出たらすぐに交番に行くの。『日本真理聖母会』から逃げてきたって。「助けて欲しい」って言うのよ」

「お母さんは ? 」

「お母さんはもう無理だから」

 茂みのすぐ向こう側。

 ザザザと音を立てながら懐中電灯の群れが近付いてくる。

「立って ! お母さん ! う、うぅぅぅっ ! 」

 母親は近付く木々を掻き分ける音を聞きながら、唇を強く噛み締め地面に顔を伏せた。

「ろくな人生じゃなかった。こんな場所、来るんじゃなかった」

「お母さん…… ! 」

「あんたさえ産まなければ ! こんな所に頼る必要もなかった ! 」

「お、お母さん ? 」

 信じられない突然の告白。

 冷静に考えれば本意でないことは分かるだろう。だが、あまりにも辛く長い今までの生活で、本気で言っていると思えた。

 深く、心の奥底に鈍い痛みが広がる。

「早く消えてよ ! この最悪の疫病神 ! 」

「お母さん…… ! 」

 縋りつこうとする娘を母は渾身の力で突き飛ばした。

「早く ! 」

 行かなければならない。

 この脱走が無駄にならないために。

 夏の始まったばかりのこの夜。

 深い山々に囲まれて建てられた興宗教施設から逃げ出した。

 このとき、飯塚 琴音は二十歳の誕生日だった。二十年の人生を全て施設で過ごしてきた琴音にとって、今夜が生まれて初めて外界だった。

「はぁ……はぁっ……うぅ……っ ! 」

 月明かりも届かない深い闇。

 初めての外の世界を、あてもなく彷徨い歩くしか無かった。

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     駅前から繁華街を抜け、国道へ出る手前にあるマンションへ車が入る。「ここ」「凄い ! こんなところに住んでるんですか !? 」 たかだか地方の古びた三階建てのマンションだ。 家賃は立地のせいかそれなりだが、お世辞にも今時の煌めいた豪邸とは言い難い。「エレベーター壊れてるんだ。階段行くよ」「はい ! 」 琴音はなんの不満も言わず美紀に付いてくる。 時刻は午前六時。 通勤やゴミ出しの住人等とすれ違う気配は無い。このマンションの大半は空き家だ。「結構、ガタが来てるからさ。部屋は綺麗にしてるけど……エアコン実費だったしシャワーは無いし、そんないい住宅じゃないんだ。 ここだよ」 三階の角部屋。 美紀は鍵を取り出すと部屋の扉を開く。「うわぁ〜うわぁ〜 ! 凄く綺麗ですよ ! ここに住んでるんですか !? いいなぁ〜 !! 」「静かに。 あー……ここのクローゼットに服があるから。好きなの選んで」「本当にいいんですか ? 」 琴音はまるでショッピングに来たような表情で、洋服を手に取り始める。「このスカート可愛い ! スカートは禁止されてたから……あ !! このコートも ! 」「今、夏だよ」「あはは、そうでしたぁ。じゃあこんな帽子は !? 美紀さんセンスいいんですね ! 」 ファッションショーの最中だが、美紀はローテーブルにペットボトルのお茶を二本、冷蔵庫から取り出した。落ち着かない気持ちを顔に出さずに、茶を口に含んでから深呼吸をする。 そして琴音を見上げ、一番聞きたかった質問を投げかけた。「それで ? あんたは何者 ? どっから来たの ? 」 琴音はハッと美紀を見下ろすと、被っていた帽子を外しテーブルの向かいに座った。「美紀さん『日本真理聖母会』って知ってますか ? 」「日本……何 ? 聖母って事は……宗教関係 ? 」「そうです。あの山の中に施設があって、貧困の中にいた母を置いてくださったんです」「……置いてくださった ? 」 琴音の言葉の端々に違和感を感じる。「でもそこから逃げて来たんじゃないの ? 」「はい。母がずっと逃げたがってて、わたしも出てみたいなって」「……よく分からないんだけど。どんな宗教だったの ? 」「簡潔にいえば女性が凄い、と言う教えですよ」「はぁ ? 」 美紀の問いに琴音が不思議そうに話

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