Home / ファンタジー / Lv1・Maxからのまちづくり / 第3話・盗賊と出くわす

Share

第3話・盗賊と出くわす

Author: 新矢識仁
last update publish date: 2026-05-07 14:45:39

 エアヴァクセンからこの森の街道までは徒歩で約四半日。

 野宿するならエアヴァクセンが見えない場所で、と言われているから、森の街道沿いで……と思ってたけど、この可愛いお荷物のせいで大急ぎで回れ右しなければならなくなった。

 昨日までは親切だった警備兵さんたちからすれば、今のぼくは勝手に町に入り込もうとする放浪者でしかない。近付けば追い払われる。その傍に仮住人がいれば保護しようとするはず。場合によっては仮住人を誘拐したと思われるだろうけど、その時は全速力で逃げるしかない。

 そんなぼくの思いも知らず、上機嫌でついてくるアナイナ。

 ……本当に、もう。兄の事情も苦労も知らないで……。

 アナイナは両親にもとっても可愛がられていたので、ちょっとワガママな性格に育ってしまった。あと、世間知らずでもある。一年後、自分がエアヴァクセンに居残れるかどうかなんて、考えたこともないだろう。いつまでも家族四人の生活が続くと、能天気に考えていたんだろうな。

 町が町民に求めるのは、顔でも知恵でも体力でもない、スキルだ。町の役に立つスキル。

 それがない人間は容赦なく切り捨てられる。

 例え親がどれだけ町に貢献していても、だ。

 十五歳未満の子供……仮住人なら、いいランクの町の仮住人であればあるほど、下のランクの町に移転されることを恐れる。仮住人としてそのランクの生活に胡坐あぐらをかいていると、成人式で町に相応しくないと判定され、生活レベルも仕事もぐっと落ちるランクの町へ移転させられる。

 いわゆる、追放。

 ……もっとも、大体の追放はそのスキルに見合ったランクの町を紹介されてそこへ行かされることになるので、生活レベルが変わっても寝食に困ることはあまりない。

 Eランクにも行けなかったぼくが例外なだけだ。

 もちろん逆のパターンもある。ランクの低い町に生まれ育ち、成人式でランクの高い町への移転が決まる人も大勢いる。これは栄転と呼ばれ、その町出身の英雄のような扱いを受けて、子供たちはその後に続くのを望む。

 しかし、いくら努力しても十五歳になるまでスキルが分からず、判明してもスキル上限をあげることができない。運次第だ。

 努力でレベル上限が上がるなら、多分ぼくは残留が決まっていた。「まちづくり」と言うスキルを試してみたことはないけど、多分何かが造れるんだろう。レベルが上がればエアヴァクセンの役に立てたかもしれない。

 Lv1のスキルで何ができるって言うんだろう……。

「おう、移転者か?」

 聞いたことのない声に、ぼくははっと顔をあげ、足を止めた。

 顔をあげて見回せば、粗末な服に粗末な剣で武装した男五人がいつの間にかぼくたちを取り囲んでいる。

「SSランクの町へ行けるなんて、相当な栄転じゃねぇか。その幸せ、ちょっと俺たちにも分けてくれよ。あるいは俺たちと一緒に来るか」

「なあにあなたたち。わたしは栄転なんてしてなムグッ」

 ぼくは慌ててアナイナの口を塞いだ。しかし遅かった。

「栄転してない? その面からして、ガキ……仮住人か?」

「へえ。エアヴァクセンの仮住人なら、いい生活してるだろ」

「SSランクの町のアイテムの一つや二つ、置いてってくれよ」

 盗賊――!

 盗賊は町に属していない。犯罪などで町にいられなくなった人間が、町から遠く街道に近い場所に集まって小屋などを作って住み、街道を通る商人などを襲う。もちろんランクの高い町の品物が目当てなんだけど、当然のことながらランクの高い町ほど運び出す商品は厳重な警護がついていたりするので、そこらの盗賊じゃ手が出せない。

 でも、なんでエアヴァクセンからこんな近い距離に盗賊がいる?

 エアヴァクセンはSSランク、当然町や商品を守る警備兵も大勢いる。

「月頭は稼ぎ時なんでな、足を伸ばすんだよ」

 ぼくの表情から考えを読んだのか、盗賊の一人が嫌らしい笑みを浮かべた。

「追放や栄転、目覚めたばかりのガキが街道を出歩く。スキルの使い方も慣れてないから町から支給された金が手に入れやすいんだよ」

「うわ、最悪」

「そうさぁ。だが、最悪のことをしなければ俺らも生きてけねぇんでな。町に頼らず生きるには金が必要なのさ」

「でも、残念ながらぼくは売り物にはならないよ」

 アナイナが何か言おうとする口を塞いだままぼくは答える。

「ぼくは追放も追放、追放先がないんだから。Eランクの町すら紹介されない人間だよ? 紹介する町がないからお金も支給されなかったんだよ? そんなぼくが何か持っているとでも?」

「追放先がない?」

「そ。何処へでも行け、でも町の恥さらしだからどの町にも行くな。要するに人間のいる場所には行くな。それがぼくの鑑定結果」

「具体的には?」

「レベル上限が1だった」

 うわ、と盗賊たちの顔が歪む。

「相変わらずエアヴァクセンはひどいな」

 盗賊の一人が顔を歪める。

「町長のプライドが高いからなあ」

「ああ、SSランクってことで調子乗ってる」

「町のためじゃなくて自分のためだろが」

 ん? この盗賊たち、ミアスト町長のこと、知ってる?

Continue to read this book for free
Scan code to download App

Latest chapter

  • Lv1・Maxからのまちづくり   第182話・家族に例える

    「そうだな、グランディール家という家があるとしよう。その家で君は父親。家の主だ」 よくわからない話に持っていかれたような気もするけど、とりあえず頷いておく。「町民は子供。父親は子供を養う義務を負う」 うん、それは分かるけど。「他の町は友達だとしよう。友達だったら、時々晩御飯の御裾分けとかが来る。子供が遊びに行っても怒らず相手してくれる。時々家族で遊びに来たりもする。近所の家とも遠くの家とも仲良くしている」 それがどうだっての?「この友達の家の一つの父親を無理やり引っこ抜いて、残った子供を家族にする。するとどうなる?」「そりゃあ、その家の父親抜いちゃったんだから、ぼくが養わないといけないだろうね」「そう。君は急いで稼ぎを増やさなきゃいけない。稼ぎを増やすこと自体はグランディール家にとっては難しくはないかもしれない。だけど、もう一つ問題が起きる」「?」「父親が大好きだった子供たちから、父親を無理やり引っこ抜いて家族にしてしまった。お父さんがいないから今日から自分をお父さんと呼べと言った。今まで友達のお父さんだったのに突然自分のお父さんになってしまった。認められるか?」「無理だよね」 ぼくも父さんが突然いなくなって別の人が父さんだよって言って来たら、父さんを探して家を出るだろうな。 あれ……。 あれ……? あ!「そう。子供が納得しない。納得せず父親を連れ戻しに行ったり家を出たりするだろうね。そして、他の家も、それまで仲が良かったのにいきなり父親を追い出して子供を家族にした家と、いつものように仲良くできるかい? 今まで友達だった子供が兄弟になると言われて納得できるかい?」「うん、無理だね。そりゃあ、無理だ」 二人の言いたいことがやっとわかってきた。「それに、それまで友達だった家も、いつ父親を引っこ抜かれてグランディール家に連れていかれると思ったら、友達付き合い出来なくなる」「そしてみんな離れて行く、あるいは敵に回る。そういうこと?」「ああ」 スピティの町民は水路で喜んでくれたけど、それと引き換えにスピティじゃなくグランディールになれって言ったらどう思ったろう。 周りの町も、町長が来て何か教えると町を併合されるなんて言われたら、歓迎はしなくなるだろうなあ。 そうなると味方がなくなる。 町の人数が少し増えるのと引き換えに、周り

  • Lv1・Maxからのまちづくり   第181話・頑張っているぼく

    「しかし、どれくらいの人数が必要?」 ぼくの問いに、アパルが眉間にしわを寄せる。「それが分かれば苦労はない……だけど、町長の力をフォローするには、かなりな人数が必要になると予測できる」「空を飛ぶだろ? 人間を地上と町へ行き来させるだろ? 家や施設が建つだろ? 土地が広がるだろ? 勝手に家具や服が出来るだろ? 素晴らしい陶土が出るだろ? あとなんだ?」 指折り数えるサージュ。思えば結構無茶な力技をしてるな、この町。「それだけのことを一人のスキルで賄ってるんだから恐ろしい」「伝説になり損ねた町は町長の死後やんわりと滅びて行ったけど、グランディールは町長が弱り出したら一気に行きそうだ」「なんで?」「お前の力技でこの町はもってるんだ、お前の力技が出来なくなったら、それっきりのアウトになるのが目に見えてるだろが」「え、ぼくのせい?」「というか、この町自体がお前に頼りきりなんだ。この町を滅ぼすのは簡単、お前一人をどうにかすればいい。ミアスト辺りがこのことに気付かなければいいが」「じゃあ、ぼくが前に拉致された時は……」「大ピンチだったんだ。お前は町民……俺たちやシエルがいれば何とかなると思っているようだが、実際の所俺たちはいくらでも替えが効く。町にとって替えが効かない才能を持っているのはお前一人なんだ」 ぽかんとしていると、アパルが溜息をついて手を伸ばし、ぼくの髪の毛をくしゃくしゃにした。「自覚を持ってくれ町長。この町も、町民も、お前がいなきゃ砂の城。あっという間に波に削られて消えてしまうんだ」「……ぼく、そんな大げさなことをしたくて町を造ったんじゃないけど」 ただ、ミアストを見返してやりたかっただけで。 ぼくのスキルが無意味ではなかったと思い知らせてやりたかっただけで。「なら、大げさになりそうだから町を捨てるか?」「冗談じゃない!」 サージュの一言に、ぼくは頭に血が一気に上って思わず怒鳴ってしまった。「ぼくだけならそれでいいかもしれないけど、ぼくはここにいる人たちを守る責任がある! 思い通りにならなかったからって捨てることは出来ない! それじゃあ、ミアストと一緒になってしまう! 町の評判を自分の評判と勘違いしているあいつと!」「分かった、言いたいことは分かったから落ち着け」 サージュがぼくを宥める

  • Lv1・Maxからのまちづくり   第180話・伝説になり損ねた町

    「一代で終わった町って言うのは、どんな感じなの?」「うん、多分お前も予想していると思うが……」 サイドデスクに置かれた本をサージュは指差す。「設立した町長のスキルの効果範囲が広い町だ」 一瞬、部屋に静寂が満ちた。 エキャルの羽音すら聞こえない。「……「まちづくり」みたいに、ざっくりした町だね」「ああ」 サージュの指先にある本には、「滅び逝く町」と書かれている。「「富める強国」ディーウェスのスキル研究家プラーグマ・ファクトゥムが研究した、素晴らしいと誰もが言ったのに一代で滅びたいわゆる「伝説になり損ねた町」について書かれた書だ」 ディーウェスは三百五十年前から五十年前まで続いた、身近な伝説、SSSランクの町だ。まだディーウェスの偉大さを覚えている人もいる。畑仕事担当で元エアヴァクセン盗賊団団長、ヒロント長老は、小さい頃にディーウェスの住民と話す機会があったらしい。ディーウェスの知識を教えるためにやってきたその人に、ディーウェスはどんなところ? と聞いたら、「みんなで作った楽園だよ」と答えてくれたらしい。長老は「今はグランディールが儂にとってのディーウェスだよ」と笑って言ってくれたけど。 そんな町に住んで、存分にスキル学を学んだ人が書いた書。「伝説になり損ねた……」 まさしく、このまま放っておいたらグランディールが辿るかも知れない道だ。「フォーゲルは鳥の本しかないと思っていたが、珍しい本もあったもんだ。スキル学を政治に役立てず、更にただ真実を知りたいと志すような物好きが手に取る本だからな」「アッキピテル町長には……」「許可を得てるよ。町長になってからスキル学の本も集めたけど自分しか読まないからどんどん読んでくれとさ」 アパルもサージュも椅子に座って、目線で読めと促す。 「滅び逝く町」にはしおりが二枚挟んである。「ここを読めってこと?」 二人が頷くので、そのページを開いてみる。 幸いなことに、ぼくに読める字で書いてあった。 『夢幻の町トラオム』 聞いたことがない。 続きを読む。 『万能のスキルと謳われたエニュプニオン・ソムニウムが一代にして作り上げた町。夢のように素晴らしい町、SSSランク、全ての町が手本にした町だが、エニュプニオン亡き後、誰もそのスキルの後継になれず、文字通り夢幻と終わってしまった町で

  • Lv1・Maxからのまちづくり   第179話・伝説の町

     アナイナはとりあえず御見舞いに来ない、らしい。 ヴァリエは……どうやら女性陣が説得してくれたらしい。シートスから「弱っている姿を見られたくないという言い訳で大人しくなってくれたので、とりあえず寄ってほしくない時は弱った振りをして追い払ってください」と言う手紙が来た。 なるほど、騎士の主は弱ってる姿を見せてはいけないものなのか。 最近はヴァリエも大人しくなったけど、初対面の時の正体不明ストーカーの戦慄の恐怖はまだ残ってる。逃げ切ったと思ったら町の中から声がした時は、正直、心臓止まるかと思った。 その襲来がないというのだから、安心して本を読みながら考えに浸れる。 アパルが貸してくれた、伝説の町の本。 エキャルをモフりながら読んで、色々考えてみる。 伝説の町が初代で潰れなかったのは、仮住人が目覚めたスキルにあるかも知れない。 例えば空飛ぶ町ペテスタイは、出来てから五・六年後の子供たちには、浮遊や飛行と言ったスキルが多かったという。町長亡き後、彼らが町を飛ばし続けたとか。 そう考えてみると、確かに町によって、発生しやすいスキルはある。 エアヴァクセンは最近はめっきり減ってしまってはいるけれど、その昔は「鑑定」が多かったという。ファヤンスは陶器関連に偏っているし、フォーゲルは鳥に関連しないスキルの持ち主はいないんじゃなかろうかってくらい。 ところが、グランディールにそれがあるか分からない。 ……まだできて一年も経っていない町に判断材料がないってだけのことなんだけど。 一番最初がアナイナで半年後……くらい? その次は五・六年間が空くから、生まれやすいスキルの傾向が全然見えない。十年くらい経たないとはっきりとはしないという。 ……十年後に考えろって話だよな。 でも、今、気になってるんだから仕方ない。 気になったことは気になった時に聞いたほうがいい。後回しにすると聞く機会がなくなっているかも知れないから。 それに、アパルやサージュと町に関する疑問や心配を共有することは、将来のグランディールにとっていいことだと思う。 予想できる不安を早め早めに取り除く。それは町が長く続くのに必要なことだと思うから。     ◇     ◇     ◇「おーう、大人しくしてたか」 サージュとアパルがやってきたのは、相談してから三日後のこと。「

  • Lv1・Maxからのまちづくり   第178話・フォーゲルにとっていい人、悪い人

     エキャルをモフりつつ、アパルが持ち込んでくれた娯楽本を読んだりして時間を潰す。 時々スヴァーラさんに御見舞いの手紙を書いて、それをエキャルに持たせたり。 スヴァーラさんからは、気にかけてくれてありがとう、エキャルが来るとオルニスも喜んでくれるので嬉しい、体は順調に回復しているし、モルやミアストの目がないというのは安心できるけど、時々自分が助かったのを知っているんじゃないかという不安に襲われる、という手紙が戻ってくる。 この不安ばかりはどうしようもないので、フォーゲルのお医者さんにメンタル面も見てあげてくださいと頼んである。 時々、青色の小さな羽根が手紙についてくる時もある。オルニスの羽根で、オルニスも元気ですよ、と書いてくる。 小さい頃、青い小鳥が幸せを運んでくるという話を母さんから聞いたことがある。 幸せを運んでくる青い小鳥と、その子が大好きな飼い主。 これは、揃って幸せになれないとダメだよな。 フォーゲルを選ぶかもしれないし、グランディールに来るかもしれない。どっちに行くとしても、小鳥の健康は保証するとアッキピテル町長は言ってくれた。 鳥の町フォーゲルは、鳥に好かれている人、鳥に愛されている人を無条件に気に入って、手を貸してくれる。スピティへの展示即売会には来ていなかったけど、フォーゲルで伝令・宣伝鳥売買をしているパサレ・ティールから、ぼくたちが鳥を買いに来た時の印象なんかを聞いていたんだろう。最初の手紙の返事から丁寧だったし、アッキピテル町長にグランディールを案内した時、宣伝鳥の面倒を見ていた鳥飼ティーアを認めてくれたのか、エキャルラットのぼくへの懐きっぷりを認めてくれたのか、その両方か。とにかくグランディールと言う町を高く評価してくれて、Cランクの町を対等に扱ってくれている。そして同じようにスヴァーラさんにも親切にしてくれている。 鳥が懐くのはいい人。鳥に嫌われるのが悪い人。そんな分かりやすい判断基準だけど、鳥のことを何より知っているフォーゲルではそれが一番分かりやすい人間評価だ。 ……もちろん食用の鳥もある。 卵だけを取る鳥だけじゃなく、鳥肉になる鳥もある。 それでも、その鳥の命に感謝して食べろ、とフォーゲルは言う。 命をいただくのだから感謝すべきだ、それが出来ない町には売らない、というのがフォーゲルの主張。 フォーゲルか

  • Lv1・Maxからのまちづくり   第177話・未来への警戒

    「五代、もつか?」「何故、そんなことを?」 聞いてくるアパルとサージュに、ぼくは最近思い付いてから頭を離れなくなった疑問を口にした。「この町、空を飛んで、勝手に家が出来て、土地が広がって、家具や服が出来て、お湯が循環して。これ、ぼく一人のスキルだよね」「ああ」「じゃあ、何かの理由でぼくがいなくなったら、この町は立ち行かなくなっちゃうんじゃないかと思って」 はっとサージュとアパルがぼくの顔を見て、それからお互いの顔を見合わせた。「グランディールがSSSランクに行ったとしても、ぼくがいなくなった途端に滅んじゃったら意味がない。町が続かないといけない……それには、ぼくのスキルを肩代わりしてくれる誰かがいないといけないんだ。だけど、「まちづくり」のスキルがそうポンポン生まれるとは思えない。だから、他の町はどうだったのかなって」「…………」 そう。それがぼくの気がかり。 気が早いかもしれない。ぼくはまだ十六にもなっていない。普通に考えれば短くても後四十年は生きられる。 でも、ぼくがいなくなると、町がどうなるのか。 恐らくは町民から切り捨てられたことで町への罰を逃れられたファヤンスとデスポタ、いずれ自滅するだろうけど、今のところはSSランクの町を維持? しているため町長の座にしがみついていられるエアヴァクセンとミアスト。そんなことを考えていたら不安になってきたんだ。 グランディールは完璧だと思う。衣食住に不自由せず、スキルに拘らずに好きなことがやれて、お金がなくても生きていける。夢の理想郷。 でも、このまま放っておけば、夢はぼくが消えた瞬間に終わってしまう。 だから、他の町が気になったんだ。 伝説と呼ばれる町が、最低でも五代、生き残った理由。 それが分かれば、グランディールも生き続けられるかもしれない。ぼくの「まちづくり」なんていう反則級スキルで成り立った町は、ぼくがいなくなっても生き残る方法を考えないと、一代で終わってしまう。 何か、秘訣はあるんだろうか。 スキル学に詳しい二人なら何か知っているんじゃないか、と思ったんで聞いた。「確かに……調べてみるか」「フォーゲルの書物も見せてもらえるかな」 頭脳二人が動き出すので、ぼくはこれ以上動かないほうがいいな。 椅子に座り直して、薬湯をコップに注ぐ。「でも、町長」 アパルが部屋を出

  • Lv1・Maxからのまちづくり   第10話・町長と町名

     門まで行った、その光景。 塀で囲まれた部分と、門のすぐ外。 さっくりと切り取られたようになって、その先に地面がない。(まさか?!) その、まさかだった。 恐る恐る切り取られた先を見下ろすと、下には緑のもこもこ。森だ。 つまり……浮いている!「うっそ、本当に……」 盗賊団の皆さんも、ぼくと同じ思いだったらしい。「本当に空を飛ぶとは……」「嘘だろおい……」「なんで……」 呆然とした声が空に流れていく。 真下の山肌に洞窟が見えることから、今はこの町は真上に浮いているようだ。 それだけでとんでもない話だ。 しかも、それがぼく一人のスキルで。 レベル1、Maxの力で。

  • Lv1・Maxからのまちづくり   第9話・ならこっちから行けばいい

     ほっとしたぼくの耳に届いてきたのは、雄叫び。 なんだ、何があった? 何かあった? 服を着替える暇も惜しく飛び出すと、町はそのままで、並んだ六軒の家の一軒で、ヴァダーさんが雄叫んでいた。「ヴァダーさん?!」「家が……家が消えていない! 町も消えていない!」 ……そうだね、ヴァダーさん、ぼく以上に心配していたからね。目が覚めたら夢だとか消えてたとか。「さて、これからどうしよう」 変な場所に町を造っちゃったなあ……。 森の奥深く、野獣や魔獣が平気で出る場所。エアヴァクセンに気付かれない土地。他の町との交流しようがない僻地。 確かに畑があって獣を捕らえて捌く場所があって水も豊かな

  • Lv1・Maxからのまちづくり   第8話・スキル学

    「えっと。アパル、さん?」 綺麗に焼けた焼き魚の身を歯でむしり取りながら、アパルさんは「ん?」と言う顔をした。「スキル学を、勉強してらっしゃったんですか?」「んん? んん、まあ。「法律」なんてスキルのせいか、色々学ぶことが楽しくてね。盗賊に身を落としても勉学だけは捨てられなかった」 身を噛んで飲み込んでから、アパルさんは頷いた。そう言えば宴会前、洞窟から大量の本を家に移動させていた。どうやってあれだけの本を持って出られたのかちょっと不思議な気がする。 それはさておこう。今欲しい情報はそれじゃない。「スキル学って、どんなことを勉強するんですか? 確か「スキル学におけるレベルか上限1

  • Lv1・Maxからのまちづくり   第7話・炎の舞

     盗賊団の皆さんが感動と号泣と荷運びを終えたところで、ぼくとアナイナがいる家にやってきた。 手に手に、焼けた魚だの炙った干し肉だの多分酒が入った壺だのを持っている。「……えーと?」「飲もう!」「えーと」 シエルさんの端的な言葉に悩んでしまったぼくに、ヒロント団長が笑いかけた。「儂らだけの町を造ってくれたお礼と、儂らのこれからを祝って、宴会をしようと言う話になった。主役は君だ。来てくれるかな?」「そ……」「喜んで!」 ぼくより先にアナイナが返事した。「アナイナ……」「こういう時はね、盛大にお祝いするのがいいの! みんなもそれを願ってるの! 何がどうあってもこの町を造ったお

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status