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3. 見知らぬ男[※R18]

last update publish date: 2026-09-05 07:59:31

 朝、何だか胸元がすーすーするな、と思って目を開けた。

 カーテンの隙間から入る陽の光が、見慣れた部屋の中に光の筋を作っている。

「んあっ……」

 首筋を何かに舐められて、思わず変な声が出た。

 そう言えば、昨夜、犬を拾ったんだ……と思い出した私の視界に、黒と白の髪の毛が映る。

(………ん? 髪の毛??)

「あ、起きた?

 おはよう、俺の運命の女神ファムファタル……」

 突然、私の視界に見知らぬ男イケメンが現れた。

 そのまま、ごく自然な動作で口付けされる。

 男の唇からは、ほんのりカレーの味がした。

「き、きゃあ~~~!!!」

 私は、男を思いっきり突き飛ばして叫んだ。

 突き飛ばされた男は、ベッドの上で、目を丸くしてこちらを見ている。

 しかも、何故か上半身が裸である。

「だ、だだだだ……誰よ、あんた?!」

 男は、整った顔立ちで優しく笑みを作ると、自分の胸に手を当てて答えた。

「俺の名は、コウヤ。昨夜、あなたに助けてもらった」

「………え? 助けた?」

 昨夜、私が助けたのは、確か大きな犬だった筈。

 こんな大きな男の人を助けた記憶は、まるで無い。

 一瞬、私は、異世界に飛ばされてしまったのだろうかと思った。

 でも、今いる場所は、よく見知った私の部屋だ。

 異世界ではないとなると、残る可能性は1つ。

「………なんだ、夢か」

 ほっとして、下を向いた私の視界に、

 ボタンの外れたパジャマの隙間から露わになった2つの乳房が見えた。

 先程から、胸元がスースーすると思っていた。

「な、な、なななな……」

 あまりに気が動転して、なんで、という簡単な言葉すらうまく出てこない。

 男は、私の手を取ると、甲に口付けを落として、その整った顔で私を熱っぽく見つめた。

「助けてくれて、本当にありがとう。あなたは、俺の運命の女神ファムファタルだ。

 この恩は、俺の身体で返す。俺の一生をかけて、あなたを愛すると誓うよ」

 よく見ると、男は、上半身だけではなく、下半身にも服を着ていない。

 男の中心から逞しくそそり立つ棍棒が私の方に先端を向けているのを見て、私は正気を失った。

「いやあああああーーーーー!!!!」

  ♡  ♡  ♡

 休日の朝。

 普段なら、寝たいだけ寝て、ブランチを食べに出掛ける。

 一週間で一番リラックスできる日。

 それが今は、見知らぬ男イケメンと机を挟んで向かい合い、インスタントコーヒーを飲んでいる。

「つまり、あなたは、昨日私が拾って来た犬で、

 人間に姿を変えることが出来ると言うんですね」

「犬……まぁ、この世界の人は、そう呼んでいるみたいだね。

 俺たちは、<獣人ベスティアン>と呼んでいる」

 男は、腰にバスタオルを巻きつけて、正座している。

 とりあえず、これを腰に巻いてくれ、と私が頼んだのだ。

 そうでも言わなければ、男は、自分が裸であることを全く気にしようとはしなかったからだ。

 もちろん、私もパジャマのボタンはしっかり留めて、上からカーディガンを羽織っている。

「この世界って……あなたは一体、どこから来たって言うの?」

「俺は、<獣人ベスティアン>たちが暮らす異世界からやって来た。

 俺の<運命の女ファムファタル>を捜すために」

 男は、真面目な顔でそう言った。

「異世界……あの、冗談とか、新手の詐欺とかじゃないんですよね……?」

「信じられないかもしれないが、本当なんだ。

 この世界と異なる世界は、確かにある。

 俺も、この目で、この世界を見るまでは、信じられなかった」

 私は、今自分の目の前に居る男をじっと観察した。

 黒と白の髪の毛に、赤茶色の毛が少し混ざっている。

 その色合いは、昨夜私が拾ってきた犬の毛色にそっくりだ。

 男が話す内容は、荒唐無稽な話に聞こえるが、

 先程、男が犬の姿に変身して見せてくれたので、信じないわけにはいかない。

 そして今は、犬の姿のままでは会話が出来ないからという理由で、再び男の姿へと戻っていた。

「とりあえず、出てってください」

「え」

「恩返しとか、結構ですので」

 私がにべも無く言い捨てると、男は、ひどく傷ついた顔をした。

(う、その顔で、その表情をするのは、ずるい……)

 思わず胸がきゅんとする。

 言動はともかく、容姿だけは、この世界でも通用するレベルのイケメンなのだ。

 しかも、先程から見えている、引き締まった上半身は、目のやり場に困ってしまう程の魅力を放っていた。

 男は、まるで捨てられた子犬のような目で私を見つめた。

「運命なんだ……」

 そう言って、男が机の向こう側から身を乗り出し、私の手を掴む。

「ちょ、ちょっと何を……」

 男の力強い目が私を真っ直ぐ射抜く。

 薄緑色のような、黄緑色のような綺麗な瞳に、私は惹き込まれた。

「俺と一生の番つがいになって、たくさん俺の子を産んでくれ」

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