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第27話:防衛戦

Author: 渡瀬藍兵
last update Last Updated: 2025-06-07 19:01:40

シオンさんの鍛え上げられた拳が、鉄槌のようにスケルトンの群れを薙ぎ払い、骨が砕ける乾いた音が連続して響き渡る。一体のスケルトンがその隙を突いて背後から襲いかかるが、それよりも早く、風を切り裂き回転しながら飛来した一対のトンファーが、その頭蓋を正確に砕いた。

そして、街の門に近い正面では、グレンさんとミストさんが、決壊した濁流のように押し寄せる魔物の大軍と対峙していた。腐臭を漂わせるグール、骨を鳴らすスケルトン、粘液を撒き散らすスライム、重い足音を響かせるゴーレムまで混じっている。

「ミスト! いきなりの初共闘だが……こいつらまとめて薙ぎ払うぞ!」

グレンさんが炎を宿した剣を強く握りしめ、隣のミストさんに向かって叫ぶ。

「もちろんですとも!!! こういう派手なのは大好物ですからね!」

ミストさんは不敵な笑みをニヤリと浮かべ、ふわりと両手を広げた。彼の周囲の空間から、無数の宝石みたいにきらめく水滴が生まれ、意思を持っているかのようにうねりながら集まり始める。

「行くぜ、ミスト! タイミング合わせろよ!」

グレンさんが地面を強く蹴り、燃え盛る剣を天高く振りかぶる。次の瞬間、彼の剣先から灼熱の赤い炎が、龍のように一直線に魔物の群れへと走った。

ミストさんはその炎の軌道を冷静に見据え、静かに息を深く吸い込み、そして吐き出す。

「炎と水……真逆の属性がぶつかる時、そこに何が生まれるのか。さて、壮大な実験の始まりですよぉぉ!!」

彼女がパチンと指を鳴らすと、宙に浮かんでいた無数の水滴が一斉に集束し、巨大な津波となって、炎の龍を追うように魔物の群れへと牙を剥いた。

「俺の全力の炎、その目に焼き付けやがれぇぇ!!!」

扇状に広がった紅蓮の炎と、ミストさんの操る巨大な水の波が、魔物の群れの中心で激しく衝突した。

そして――

目を眩ませるほどの閃光と、鼓膜を突き破るかのような轟音が戦場を支配した。

炎と水が互いを喰らい合い、莫大なエネルギーへと変換され、超高温の水蒸気爆発が魔物の大群を根こそぎ巻き込む。衝撃波が嵐のように地を走り、周囲の建物を揺るがし、魔物たちはなすすべもなく木の葉のように吹き飛ばされていく。熱風と蒸気が敵の群れを瞬時に焼き払い、断末魔の悲鳴が次々と夜空に木霊した。

爆心地には濃い土煙と白い霧がもうもうと立ちこめ、一瞬にして視界が完全に奪われる。

「あっはははは!! 見たか、これが俺とミストの合体技だぜ!」

「ふふふふ…!!予想以上の威力ですねぇ! これは素晴らしいデータが取れましたとも!」

土煙の中から、高らかに笑う二人の声が響いてくる――。

「き、規模がすごいし、二人とも何だか楽しそうだし……どこからツッコめばいいのかもうわからない……」

私は、そのあまりの破壊力と、二人の底抜けの明るさに、ただ呆然と立ち尽くすしかなかった。

(……なにをやってるんだ、こいつらは…。いや、結果的に敵を一掃したのは見事だが…)

エレンも、その規格外の連携に、呆れ返っているような、それでいてどこか感心しているような複雑な気配を漂わせている…。

「お前ら……遊んでないで、周囲の警戒を怠るなよ…」

シイナさんが土煙の晴れ間から姿を現し、やれやれといった表情でぽつりと呟いた。

(……私だって、ただ見ているだけじゃないっ!!)

私は再び両手に聖なる光を集め、まだ立ちこめる蒸気に紛れてこちらへ迫ろうとしていた魔物の残党に、光の弓を引き絞り矢を放つ。一点の曇りもない光の矢が正確に魔物の眉間を捉え、魔物は断末魔を上げる間もなく、陽光に晒された闇のように溶けて崩れ落ちた。

その横では、シイナさんが街の奥へ一体たりとも近づかせまいと冷静に立ち回り、迫りくる魔物の頭部だけを、黄金色に輝くガントレットの一撃で的確に粉砕していた。

***

──その後、どれほどの時間が経っただろうか。

私たちの奮闘の甲斐あって、街に溢れていた魔物の群れは、ようやくその勢いを失い、掃討戦も終結へと向かいつつあった。

夜の街の人々と、その中から進み出た代表と思しき方が、静かに私たちのもとへ現れる。その姿は陽炎のように揺らぎ――けれど、その佇まいからは、確かに優しい温もりと、深い感謝の念が伝わってきた。

『街を救っていただき……本当に、本当にありがとうございました…。この御恩は、決して忘れません…』

彼は、そして彼の後ろに続く街の人々も、静かに、そして深く私たちに頭を下げる。その真摯な姿に、私たちはかけるべき言葉を失った。

「……いえ。当然のことをしたまでです。でも……私たちの力が及ばず、何名かの方が、あの最初の魔物に……」

シイナさんが、伏せていた目を上げることなく、悔しさを滲ませた声で絞り出すように言った。

あの謎の魔物――霊となった彼らでさえ、その魂ごと呑み込み、消滅させてしまう邪悪な存在。その光景を思い出すだけで、私の胸も、ぎゅうっと強く締めつけられるような痛みが走る。

『……ええ、辛いことです。ですが、あなた方が文字通り命を懸けて戦ってくれたから……この街全体が、そして多くの同胞が救われたのです』

そう語る代表の方の表情は、深い哀しみを湛えながらも、どこか吹っ切れたような――そして、限りなく穏やかな光を宿していた。

『だからこそ、私たちは心からの感謝を……ありがとうございました…。』

その言葉に、私は思わず、一歩前へ駆け寄っていた。

「……どうか、頭を上げてください」

私の声は、少し震えていたかもしれない。

(私は――聖女見習いとして、こんな時こそ、ちゃんと応えなきゃ。悲しみに寄り添い、そして希望を繋ぐのが、私の役目のはずだから)

そう心の中で強く決意して、私は代表の方の、少しだけ冷たいけれど、確かにそこにある彼の手をそっと両手で握る。

「犠牲になった方々の魂には、私が……この身に宿る全ての力をもって、せめてその魂が安らかに光の中へ導かれるように、しっかりと祈りを捧げます。だから……どうか、安心してください」

私の言葉に、代表の方はゆっくりと顔を上げ、その瞳に微かな光を灯した。

祈りは、きっと届く。

たとえそれが、この夜の街に静かに生きる者たちの――声にならない、けれど切実な願いであっても。

そして、その祈りを力に変えて、私はもっと強くならなきゃいけない。この手で、もっと多くのものを守れるように。

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