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第91話:共治案の骨組み

Auteur: fuu
last update Dernière mise à jour: 2025-12-02 23:00:32

鐘が三つ鳴った。大聖堂の北翼、ひんやりした石の間に羊皮紙の匂いと聖油の香りが重なった。王子は皇子の襟を整え、笑った。

「息、浅い」

「大丈夫だ」

返す声は少し掠れていた。森で出会った夜もそうだった、と王子は思った。雨で濡れた外套、震える肩。それでも前に立とうとした背中。今日、公では彼が前に出る。

書記官が首を竦めて合図を待つ。長机には二つの束。条約婚の契約書と、交互統治の法案草案。王子は指で端を叩いた。節回しは短く、骨組みを見せる。

「半月ごとの名義交代」

「緊急時は共同署名」

皇子が続けた。声はもう通る。

「議題設定権は交番。議決は五印の過半。宗教、地下街、納骨堂、文官、騎士団」

老宰相が眉を跳ねさせた。「五印など、重すぎる」

王子は遮らない。皇子の肩が微かに上がって落ちる。息が整った。皇子は老宰相に向き直った。

「重いからこそ、あなた方の席が残る。文官印は王家の指名ではなく、輪番とします。旧派も新派も回る」

老宰相の目尻が揺れた。損はしないと気づいた顔だ。反対派にも利を渡す。それが骨組みの肝だ。

大司教が首飾りを鳴らした。「大聖堂は儀礼の監督を求めます。婚姻の公開儀礼は、聖油と歌を欠いてはならない」

王子が頷いた。「同意します。ただし、私室に干渉しない条項を付ける」

「私室?」と大司教が目を細める。

皇子は契約書の別紙を示した。書記官が耳まで赤い。

「合意の取り決めだ。可、不可以項。合図。アフターケア。週に一度の立場交替の日」

大司教は咳払いをした。「……公序への配慮は?」

「合図は『灯』。口頭でも、握りでも。不可は痛みの強制と羞恥の誇示。アフターケアは温水、甘味、抱擁、体調の確認。書く」

王子は指で皇子の手背を包んだ。契紋が微かに温度を持つ。甘やかしの手触りを、石の間でも隠さない。官能と政治は同じ文に置ける。約束だから。

地下街の頭目は椅子を揺らした。「私らには何が落ちて来る?」

皇子は答えを持っていた。「地下水脈の維持管理権。市場

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