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Author: 雫石しま
last update Last Updated: 2025-07-29 05:28:22

明穂はナイトテーブルの明かりを消した。部屋は一瞬で静寂に包まれ、かすかな月明かりだけがカーテンの隙間から忍び込む。

「おやすみなさい」と彼女は小さく呟いた。

「おやすみ」と吉高が返し、ベッドに入るなりすぐに寝息を立て始めた。

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  • あなたが囁く不倫には、私は慟哭で復讐を   段ボール①

    翌日、大智は昼飯に素麺をズルズルと思い切り啜《すす》ると、明穂の部屋でドカッと胡座をかいた。長い前髪が目にかかる黒いTシャツにジーンズ姿の大智は、昔付き合ってた頃のやんちゃな笑顔そのままで、明穂の胸が思わずドキッと高鳴った。懐かしい空気が部屋に漂う。「なに、ギャップ萌えだろ」大智がニヤリと笑う。「あー」明穂は目を逸らした。「萌えたな」「否定はしないわ」「あー、おまえのことギュッと抱き締めてぇ」明穂はサッと一歩後ずさった。心臓がバクバクしてるのに、平静を装うのが精一杯だ。「昨夜のあれ、なんなのよ」「親父たちのショックを和らげるためにブチかましたんだよ」「寝込んだらしいじゃない!」「吉高の事知ったら、マジで脳卒中起こすな」「縁起でもないこと言わないで!」大智は新しいSDカードをデジタルカメラにカチッと差し込み、長い前髪をクシャッと掻き上げた。ちょっと真剣な目つきに変わる。「明穂」「なに」「その女に見覚えはないのか」「分からない」「だよなぁ」明穂はハッと気づいた。大事なことを言い忘れてた。「あっ!」「なんだよ、変な声出すなよ!」「紗央里さんに会ったことある!」「はぁ?見覚えねぇって言ったじゃねぇか!」「紗央里さんかどうかは分からないけど、ウチに来た女の人がいたの!」「なんだよそれ」「荷物持ってきたのよ」「荷物ぅ?」「お腹が切られたぬいぐるみが入ってた」「バ、バカじゃねぇのか!そんな大事なこと早く言えよ!」大智の目が一気に鋭くなった。明穂の言葉に動揺しながら、寝込んでいる父親の部屋に突進し、車の鍵をガサッと奪い取った。「行くぞ!」と叫び、明穂を後部座席に押し込むように乗せた。車が急発進する瞬間、明穂は窓の外を見つめながら、胸騒ぎが止まらないのを感じた。「大智、免許証持ってたんだ?」

  • あなたが囁く不倫には、私は慟哭で復讐を   Vサイン

    大智は不倫の証拠となるSDカードをスーツの胸ポケットにしまい、「明日、新しいカードを持って来るから待ってろよ!」と軽快に言い残し、階段を下りて行った。向日葵の弁護士バッジが、階段の明かりにきらりと光った。「ご馳走さんでした!」「また来てね」 母親の声が温かい。「明日も来るわ」「あ、そう。お素麺で良い?」

  • あなたが囁く不倫には、私は慟哭で復讐を   メロン

    「はぁ〜、食った食った! おばさんの飯は美味い!」大智の声が実家のリビングに響き、母親が笑顔で応じた。「そんな褒めてもなにも出ないわよ」「て、メロン持ってんじゃん」

  • あなたが囁く不倫には、私は慟哭で復讐を   バランス

    大智が行方知れずになってしばらくした頃、吉高は深紅の薔薇を手に明穂の家に訪れた。「明穂ちゃん、僕と結婚してくれないかな」吉高のその言葉が、明穂の心に今も刺さっていた。あの時、彼女は吉高を選び、結婚した。だが、実はその間も大智は明穂に手紙を送り続けていた。届くはずの言葉は、吉高の手で物置の段ボールに封印されていた。

  • あなたが囁く不倫には、私は慟哭で復讐を   紙コップ

    =この電話はお繋ぎする事は出来ません、電波の= 大智の携帯電話は繋がらなかった。受話器から流れる無機質なアナウンスが、明穂の胸に小さく刺さった。 「あら、繋がらなかったの」

  • あなたが囁く不倫には、私は慟哭で復讐を   現場写真

    (あぁ)寝室の扉は僅かに開き、薄暗い隙間から熱と音が漏れていた。 (あぁ、やっぱり)

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