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334話

Author: 籘裏美馬
last update publish date: 2026-04-03 19:23:29

「茉莉花……!」

「藤堂さん、苓は……!」

バタバタ、と廊下を駆けて来るお父様と、苓さんのお兄様、圭吾さん。

ここは、病院。

手術室の前。

私は、苓さんと同じ病院に救急車で運ばれ治療を受けた。

その間に私と苓さんの事故の報告が入ったのだろう。

お父様と苓さんのお兄様が真っ青な顔で私に駆け寄ってきたのだ。

「お父様に、圭吾さん──」

「茉莉花、大丈夫なのか!?現場視察中に鉄骨の下敷きになった、と……!」

「私は大丈夫、です。苓さんが庇ってくれて──……っ」

「まさか、それで苓くんが鉄骨の下敷きに……?」

お父様は真っ青な顔のまま、手術室を見やる。

私は力なく頷く事しか出来なかった。

「はい、申し訳ございません……私のせいで、苓さんが大怪我を……」

私が項垂れつつそう告げると、お兄様の圭吾さんが私に一歩近付いた。

「茉莉花さん、あなたのせいじゃないよ。これは不幸な事故だ。それに、苓は頑丈なやつだからきっと大丈夫だ」

「圭吾さん……すみません、本当にすみません……」

私が顔を覆っていると、パタパタと廊下を急ぎ足でやって来る音が聞こえる。

私のす
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    病室に移動し、私たちはベッドに横たわる苓さんの近くに座った。 苓さんは目を閉じ、眠ったままで。 頭部には痛々しい包帯がぐるぐると巻かれていて、腕にはいくつもの管が繋がれていた。 倒れてくる鉄骨から頭部を守るためだろうか。 苓さんの腕にはいくつもの痣が出来ていて。 「──苓さん」 「茉莉花さん、良かったら苓の手を握ってあげてください。茉莉花さんが傍にいれば、苓もすぐ目を覚ましてくれますよ」 「圭吾さん……ありがとうございます」 にこり、と笑みを浮かべてそう言ってくれる圭吾さん。 私はそっと苓さんの手に腕を伸ばし、苓さんの手を両手で包み込むように握った。 (暖かい──……) 苓さんの手は、暖かくて生きているのだ、とほっとする。 あの時。 鉄骨の崩壊に巻き込まれた苓さんを見た時。 鉄骨の間から広がる血溜まりを見た時。 最悪な結末を一瞬想像してしまった。 だけど、今こうして苓さんは生きている。 生きててくれているのだ。 (本当に、良かった──……) 目の前が涙でじわじわと滲んで来る。 そんな私に、谷島さんが近付き、話しかけた。 「藤堂さん、少し事故の時の事を聞いてもいいですか?」 「谷島さん」 「藤堂さんと小鳥遊が視察中、最初は鉄骨がちゃんと固定されていた、と聞いています。……それが、いつの間にか固定が外れていた、と」 「──ええ、そうです」 私は苓さんの手を握りつつ、谷島さんの問いにしっかりと頷いた。 そんな私の返答を聞き、谷島さんも。お父様も。そして圭吾さんの表情も険しくなる。 「──なら、もしかしたら……事件性があるかもしれませんね。周囲の防犯カメラを確認します。俺は仕事に戻ります。小鳥遊が目を覚ましたら、連絡をください」 「分かりました……!よろしくお願いします……!」 仕事に戻る谷島さんを見送り、お父様も私に無理はしないように、と残してから会社に戻った。 病室には私と圭吾さんだけが残ったけど、それからその日の内に苓さんが目を覚ます事はなくて。 私も、圭吾さんもその日は後ろ髪を引かれる思いで病院を後にした。 ◇ それから、翌日、翌々日、と苓さんの入院している病院にお見舞いに行ったけど、苓さんが目を覚ます事は無かった。 主治医の先生も、手術は成功しているから目を覚ますはずだ、と首を捻っていて。

  • あなたの「愛してる」なんてもういらない   334話

    ◇ 「茉莉花……!」 「藤堂さん、苓は……!」 バタバタ、と廊下を駆けて来るお父様と、苓さんのお兄様、圭吾さん。 ここは、病院。 手術室の前。 私は、苓さんと同じ病院に救急車で運ばれ治療を受けた。 その間に私と苓さんの事故の報告が入ったのだろう。 お父様と苓さんのお兄様が真っ青な顔で私に駆け寄ってきたのだ。 「お父様に、圭吾さん──」 「茉莉花、大丈夫なのか!?現場視察中に鉄骨の下敷きになった、と……!」 「私は大丈夫、です。苓さんが庇ってくれて──……っ」 「まさか、それで苓くんが鉄骨の下敷きに……?」 お父様は真っ青な顔のまま、手術室を見やる。 私は力なく頷く事しか出来なかった。 「はい、申し訳ございません……私のせいで、苓さんが大怪我を……」 私が項垂れつつそう告げると、お兄様の圭吾さんが私に一歩近付いた。 「茉莉花さん、あなたのせいじゃないよ。これは不幸な事故だ。それに、苓は頑丈なやつだからきっと大丈夫だ」 「圭吾さん……すみません、本当にすみません……」 私が顔を覆っていると、パタパタと廊下を急ぎ足でやって来る音が聞こえる。 私のすぐ近くに居たお父様が、その足音の主の名前を口にした。 「谷島さん、来て下さったんですか」 「──ええ、小鳥遊は無事ですか?」 谷島さんは額に汗を滲ませ、ハンカチで軽く汗を拭う。 私は谷島さんと圭吾さんに伝えるように口を開いた。 「頭部の出血が酷く……今は手術中、です……」 「頭部外傷か……」 谷島さんがぽつり、と呟き私たちは重い空気の中、押し黙る。 時間が経つのが凄く長く感じて。 私の隣に座ったお父様が、私を励ますようにずっと手を握ってくれていた──。 ◇ 何時間、経っただろうか。 唐突に手術室の扉が開き、執刀医が姿を見せた。 廊下で待っていた私たちに気がついた執刀医は「ご家族は?」と問うと、圭吾さんがさっと椅子から立ち上がった。 「兄です」 「では、ご説明するのでどうぞこちらへ──」 場所を移動するのだろう。 執刀医の言葉に、圭吾さんが首を横に振った。 「いえ、この場で大丈夫です。こちらにいらっしゃるのは本人の婚約者の女性と、女性のお父上。もう人かたは警視庁刑事課の方ですから」 圭吾さんは、私に気を使ってくれたのだろう。 確かに、苓さんの手術は

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