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第241話

Author: ルーシー
玲奈の頬は、拓海の胸に押しつけられていた。

耳に響くのは低く唸るような声と、どくどくと力強い鼓動。

その言葉はあまりにも情熱的で――既婚者である彼女ですら、一瞬心臓が跳ねた。

だが同時に悟っていた。

拓海は人の心を操る術に長けた男。

女の子が喜ぶ言葉を心得ている。

玲奈は身をよじり、逃れようとした。

だが振りほどけないと知ると、観念して口を開いた。

「救急箱は......テーブルの引き出しに」

その瞬間、拓海は彼女を放し、吐き捨てるように言った。

「おまえのことなんか、犬でも気にしない」

言うなり窓際へ歩み寄る。

そこには、先ほどから垂れているロープ。

掴めばすぐにでも去れるはずだった。

だが、彼は動けなかった。

大きな背中が窓ガラスに映り、目を閉じて必死に何かと戦っているように見えた。

やがて拓海は舌打ちし、再び振り返る。

テーブルへ向かい、救急箱を探り当てると、玲奈に向かって短く命じた。

「来い」

その声は強く、逆らう余地を与えなかった。

玲奈は一瞬ためらったが、結局歩み寄ってソファに腰を下ろした。

腕を差し出し、かすかに呟く。

「...
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