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人気俳優の裏側/犯人特定

Author: Kaya
last update Last Updated: 2025-07-06 19:02:00
 とにかく二人で良く話し合ってみてくれ。

 そう言って八重樫は、ニヤニヤしながら応接室を後にした。

 明らかな互いの売名行為を、両方の事務所が進めている。

 浅井まりかは、清楚系の人気女優として売っている。

 なのに今日はいつもよりも気合いの入った服を着て、じっくり時間をかけた濃いめのメイクをしている。

 そんなまりかが昴生を見つめる眼差しは、どこか熱い。

 「浅井さんは本当に優しいんだね。

 勇気もあるし。」

 「いえ…!そんなっ、単純に人助けですから!

 綿貫さんは本当に、気にしないで下さいね。」

 この前の冷たい態度が嘘のように、昴生がニコリと笑いかければ、まりかは初心な女のように顔を真っ赤に染めた。

 「あ……そうだ。浅井さん。

 この前SNSで見かけた、あの写真なんだけど。

 あれ、どこで撮ったの?

 すごく綺麗だったから気になってて…良かったら花の名前を教えてくれないかな。」

 「え?どれですか?」

 「あー…えっと。説明し辛いなあ。

 もし良かったら、スマホの写真見せてもらえたら嬉しいんだけど。」

 「あ、いいですよ!」

 誘われるようにスマホを取り出し、まりかは昴生の隣に喜んで座った。

 ふわりと香るマリン系の香水に、少し長めの黒髪が揺れる。

 その昴生の色っぽさに、まりかはまた頬を染めた。

 「あ、これだ。…それと、これも。

 いいね。浅井さんは花が好きなの?

 花の写真が多いね。

 綺麗な心の、浅井さんみたいだね。」

 「そ、そんな……」

 「ねえ。良かったらこれ全部、俺にも送ってくれない?駄目かな?」

 昴生が上目遣いでそう頼めば、まりかはますます顔を真っ赤にして、躊躇いもなく小さく頷いていた。

 まるで、綺麗な花の蜜に吸い寄せられる虫のように。

 侑さんに対して—————

 攻撃的なアカウントがある事はすでに把握していた。

 それも大胆不敵に。さも女優である侑さんの行動が、逐一分かっているかのように。

 撮影現場での侑さんの悪口。

 ロケ先での侑さんの悪口。

 番組内での侑さんの悪口。

 こんなの……どう考えても一般人が知り得ない情報だ。

 彼女を傷つける奴は許さない。

 昴生は少しずつ犯人を絞り出す事にした。

 彼女と同じドラマや映画に出演した人物
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